今回紹介する作品は
1967年(昭和42年)東宝 渡辺プロ
「日本一の男の中の男」
古澤憲吾監督



あらすじ
丸菱造船の有能営業マンだった小野子等(植木等)は、造船所の視察に来ていた会長(東野英治郎)に、ため口をきいた為に、内定していた係長昇進を取り消された上に、畑違いの世界ストッキングに出向を命じられてしまう。

植木等さん主演の「日本一シリーズ」第5弾作品です。
私は、クレージーキャッツ全員が出演する「クレージーシリーズ」よりも、植木さんがより活躍する「日本一シリーズ」の方が好きで、その中でも「日本一の男の中の男」が一番好きです。
一番の理由は、全編の中で余分なシーンが一切無い事です。
1時間30分を超える作品は、多少なりとも要らないと思うシーンがあるものですがね。

そして、テンポの良さなら日本一の古澤憲吾監督作品の中でも、一二を争う作品と思います。
ツッコミ所は多々ありますが、そんな事よりもテンポの良さの方が重要ですからね(笑)



小野子等(植木等)
自称マッハ2の頭脳の回転の持主
他の作品の植木さんとの決定的な違いは、当初から優秀なサラリーマンだったこと。
しかし、その手法は、いつもの口八丁手八丁ですが。



牧野未知子(浅丘ルリ子)
世界ストッキング秘書課長だが、祖父(東野英治郎)がコンツェルンの会長で、実質的に会社を牛耳っています。
アメリカ留学した時に学んだ、アメリカ流合理主義や信賞必罰主義で会社を変革しようとしたが、逆にお高く止まる殿様商売になってしまい業績が低迷してしまいます。

クレージー映画も、そろそろマンネリ化してきたので、今回は浜美枝さんに代わって日活から浅丘ルリ子さんを迎え入れます。
浅丘ルリ子さんの演技が良くないという声も一部でありますが、私はルリ子さんで良かったと思います。
いつものツンデレキャラなら浜美枝さんの方が合ってますが、こういう仕事人間キャラはルリ子さんですね。



ルリ子さんは、小野子等の亡くなった母親役も演じます。
ルリ子さんも、この若さで老け役を演じるとは思わなかったでしょうね。

小野子等は亡くなった母親を崇拝し、毎日遺影に手を合わせます。
初めてこの映画を観たときは、ちょっと大仰な!と思いましたが、実際に親が亡くなってしまうと、 その気持ち分からなくもありません。



大神田剛之助(東野英治郎)
丸菱造船や世界ストッキング等グループ企業の会長
小野子等を世界ストッキングに出向させたのは、嫌がらせではなく、低迷する会社を建て直すと思ったからです。
しかし、低迷の理由が孫娘のせいだとは分かりませんでした。

何となく「水戸黄門」を彷彿させるキャラで、写真の笑い方も黄門様そっくりです。
もしかしてこの映画を観たTBSのスタッフが、東野さんを黄門様に起用しようと思ったのかも。



高野宣伝部長(藤岡琢也)
小野子等が「女の靴下を売る会社」に行くのは嫌だと言いましたが、世界ストッキングは、一般従業員こそ女子社員ばっかりですが、よく見ると管理職は会長の孫娘の未知子以外は男性だけなんですよね。
他には、出店の店長(水谷良重)しか女性はいません。

そんな中で、女子社員に徹底的に嫌われていた藤岡琢也さんの演技が凄く良かったです。



世界ストッキング岡本社長(十朱久雄)と、その息子でデュパン東京支社長の岡本敏夫(岡田眞澄)
「言いなり社長」役の十朱さんは、まさしく適材適所。
岡田眞澄さんはルリ子さんと同じく日活出身。他にも藤村有弘さんや北竜二さんも出ていて、この時期の東宝映画に日活関係者が4人も出演するのは珍しいです。

岡田眞澄さんはルリ子さんの恋人役ですが、最後うやむやになってしまうツッコミ所もあります(笑)



「松越デパート」手塚仕入部長(谷啓)
今回クレージーメンバーは谷啓さんだけでした。

植木さんは毎度おなじみの接待攻勢で販路開拓しますが、今回はルリ子さんの「取引にコーヒーも出さない」アメリカ流合理主義の弊害がありましたので、説得力あるシーンになりました。



「丸菱造船」営業部長(人見明)
クレージーメンバーは出なくてもいいですが、人見明さんの「バカ」は絶対に必要です(笑)



古澤監督はヘリコプターからの空撮映像を必ず盛り込みます。
空撮映像があるとスカッとしますね。
この建物は毎日新聞社が入居していた、完成したばかりのパレスサイドビルです。

この作品最大の見所「パラランショー」


当初は11AMのカバーガールを出演させる予定が、担当マネージャーがライバル会社の「さくら肌着」と天秤にかけた為、小野子はキャンセルして、自社の女子社員を選定して出演させます。
実際はナベプロのタレントが出演しますが。

ミュージカル風の非常に楽しいショーです。



木の実ナナさん



伊東きよ子さん



奥村チヨさん

この3人はナベプロ3人娘(中尾ミエ 園まり 伊東ゆかり)に次ぐ3人娘にする予定だったそうですね。
因みにこの3人も、世界ストッキングの社員ですが、ちょっと出来過ぎです(笑)


「日本一の男の中の男」の予告編動画と


主題歌「そうだそうですその通り」の動画を貼り付けました。

あとがき
主題歌「そうだそうですその通り」の歌詞や、植木さんの台詞「女は黙る」「女の浅知恵」から、女性蔑視の映画ととらわれがちですが、植木さんの台詞はルリ子さんと役職の地位が逆転したときで、それまでは上司として立てていましたから、そんなに気にすることはないと思います。
その後二人は結婚し、仲睦まじくして終了しますし。

それよりも、植木さんの台詞「潰れたらまた新しく建て直すんだね、アメリカさんに乗っ取られるよりマシだよ」
こちらの方が意味ありげですが…

ともあれ、非常にテンポが良く、私の大好きな映画です。