今回紹介する作品は
1958年(昭和33年)新東宝
「女王蜂」
田口哲監督



あらすじ
昔気質の侠客・湊一家は老齢の親分(横山運平)に代わって、娘のお竜(久保菜穂子)が組の切り盛りをするが、新興ヤクザ真崎組の介入に押されっ放しになる。

佐川滉プロデューサーが牧源太郎名で書いた小説の映画化で、日本初の女侠客作品です。



主人公のお竜(久保菜穂子)
奇しくも「緋牡丹のお竜」と同じ名前ですが、こちらが初代お竜です。

写真は子分達を引き連れてシマのマーケットを見回りするシーン。
一部のマーケットの人から「女王蜂」と揶揄されて今一つ信頼関係がありません。
前半のお竜さんは、まだ跳ねっ返りのお嬢様でした。



その後マーケットの人々の為に借金をしてしまい、返済の為に賭場で勝負します。
片肌脱いで勝負するお竜姐さん
この映画最大の見せ場です。



湊一家の鉄太郎親分(横山運平)
真崎組の策略で焼死してしまいます。
落ち目の親分とか、貧乏臭い役をやらしたら、この人の右に出る者はいません。
でも、どうしてこの親からスタイル抜群の美人である久保さんが生まれるんだ(笑)



湊一家幹部・康次(大谷友彦)
何時もお竜さんの傍にいてサポートします。
新東宝随一の厳つい顔の大谷さんが、珍しく善役で出演。



大谷さんの娘・由美(大空真弓)
お竜さんを慕う娘ですが、任侠映画には珍しく教会に通い、教会のシーンも多いです。
というか全体的に任侠映画としてはまだ確立されていませんね。
この時代はまだ、任侠映画もほとんど撮られていなかったと思います。



お竜さんの相手役・由利俊介(中山昭二)
女王蜂シリーズの相手役は、身体を張って姐さんを助けますが、中山さんは金銭的な手助けしかしませんでした。
久保さん中山さん、二人のシーンは普通にメロドラマですね。



真崎組組長(天知茂)
「斬った張ったばかりがヤクザの能じゃねぇ!」が口癖のインテリ新興ヤクザの組長
知能的な手法で、湊一家のシマを奪います。
そして、お竜に金を貸した業者を丸め込み、借金返済を迫ります。
お竜が中山さんの手助けで借金返済すると、利子が未だだ!と言って、お竜の身体を利子代わりにします。

久保さんと天知さんは同期生ですが、何時も仇役の関係でした。
新東宝時代は久保さんが善で天知さんが悪。
それ以後は立場が逆になります。



天知さんの情婦でダンサーのマキ(三原葉子)
天知さんがお竜の身体を奪ったのを知ると、ヒステリックになって湊一家の味方をします。
三原さんの出番は少ないですが、後には二代目女王蜂として登場します。



最後はお竜と天知さんがサシの勝負をして、共倒れで終わります。
天知さんは別に受けなくても良い有利な立場だったのにね。


あとがき
日本初の女侠客作品になった「女王蜂」ですが、白黒スタンダード版ですし、主人公のお竜も亡くなる設定なので、シリーズ化など考えていなかったと思われますが、どうやらヒットした様で、その後シリーズ化が決定し、新東宝では珍しく次作から全作品カラーで撮られました。