今回紹介する作品は

1952年(昭和27年)東映京都
「暴力」
吉村公三郎監督 新藤兼人脚本



あらすじ
大阪・新世界の曖昧宿に住む孝子(日高澄子)は因業な義父の居るこの街から親子三人で脱出しようとするが。

1952年当時の新世界付近の様子が映されています。



ジャンジャン横丁(劇中では日の出横丁と呼ばれている)
まだ屋根がありませんね。

ビックリマーク劇中では女流作家(夏川静江)を案内する泉田行夫さんが、此処に住む人や集まる人を侮蔑的に語ります。




びっくりコーヒー
びっくりコーヒーは聞いたことがありませんが、劇中で50円あれば一日食べられると言っているので、一杯40円はこの辺りでは高いんでしょうね。

他に青空散髪屋や、映画・女剣劇・ストリップ三本立ての珍妙な劇場などが紹介されます。

しかし、ランドマークの通天閣は映りません。
初代通天閣は戦時中に解体され、現在の通天閣は未だ建設前でした。



関西本線の天王寺ー新今宮間を走るC57形蒸気機関車牽引の客車と


C51形蒸気機関車牽引の客車
大阪環状線が未だ開通していませんので、関西本線のみの線路です。




南海難波駅付近
ミナミの一等地も夜はたむろする娼婦で溢れかえっているだって。
事実なのかもしれませんが、新藤兼人さんは大阪に恨みでもあったのでしょうか。



道頓堀
現在と違い簡素ですが、当時から名物のネオンはありましたね。



道頓堀で客引きをするのが主人公の孝子(日高澄子)
彼女は義父の経営する曖昧宿に住み、ポン引きをしています。

あばずれなんですが、妹想いで別離した実父(殿山泰司)にも優しい一面も持っています。

それにしても道頓堀から客をさそって新世界まで歩いて行くには遠すぎると思うのですが(笑)



盲目の妹・静子(若山セツ子)
盲目だけでも悲しい設定ですが、その後義父に買春を強要された挙句、拒否した後二階から転落して大怪我をする悲惨な役柄です。

若山セツ子さんは当時のアイドル的女優さんでしたが、実生活も悲惨な末路でした。




義父の山田秀次(菅井一郎)
曖昧宿(連れ込み宿)ことぶき旅館の主人
因業な性格で義理の長女(日高澄子)をポン引きで働かせた上に、遂には盲目の義理の次女(若山セツ子)を買春婦として働かせてしまう。




義父の非道さにキレた日高さんは包丁で刺し殺してしまう。

全く救いようのない悲惨な終わり方です。



ラストシーンで貧民街を歌いながら徘徊する狂った詩人
大泉滉さんです

このキャラクターは後に石井輝男監督の新東宝「黄線地帯」1960年に出てきますね。
石井監督はこの作品を観ましたね。



暴力 DVD発売の動画がありました。

ジャンジャン横丁の映像や案内人役の泉田行夫さんの侮蔑的な語りに注目を