気がついたら、振られていた。
たまには、そんなこともあると思う。
でも私には、少し傷が深かったのだ。

気がついたら、ベッドの隣には彼がいた。
そのおかしな事実に、私はずっと目をそむけてきた。
現実を知るのが怖かった。
独りになりたくなかった。
彼のことが好きだった。
手放したくなかったのだ。
幸せを。
彼のぬくもりを。
私はやさしく彼の頬を撫でると、その子どものような寝顔に微笑んで、そっとベッドを抜け出した。
本当は、ずっとそうしなくてはいけないと思っていた。
でも怖くて、出来なかった。
「ありがとう」
耳元で呟いて、私は家を後にした。
もうここには戻ってこない。
私は、本当の「私の家」に帰るのだ。
偽物のやわらかい世界を切り離して、「現実」に戻るのだ。
彼とのあるはずのない時間は、私を充分満たしてくれた。
だから、大丈夫。
もう大丈夫。
私は、私の人生を生きる。
そう決めたのだ。

大好きだった彼は、私より年下の、かわいい男の子だった。



お題配布元:中途半端な言葉

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