本当は、ずっと前から気付いてた。
君が、もうあたしを見ていないってことに。
君の瞳には、彼女が映ってるってことに。
でもね、認めたくなかったんだ。
だってあたしは、君を失いたくなかったから。
君と一緒に過ごした日々を、まだ想い出にはしたくないんだ。
ふたりで撮った写真を見ながら、あたしはベッドに横になっていた。
そのとき、君からの着信。
君だけの、着メロ。
「もしもし」
ちょっとだけ、出たくない気がした。
でも、君からの電話を、拒否できなかった。
そんなことをしてしまったら、これっきりになってしまうんじゃないかって、そんな気がしたから。
『知世に、話があるんだ』
君は静かに呟いた。
「・・・うん」
君が何を言いたいのか、あたしにはずっと前から分かっていた。
いつそれを告げられるのかって、君からの着信があるたびに、君の顔を見るたびに、ずっとずっと思ってた。
「うん、何?」
携帯電話を、握り締めた。
手にはじっとり汗をかいて、まるで試験を受けに行く前みたいだ。
でも、それは間違っている。
君からの電話に、希望はないのだから。
あたしからの挑戦は、受け入れてもらえないのだから。
君が『あのさ』と言った。
それは、君の口癖。
『あのさ、実は俺』
「ね、別れよ?」
思わず、言葉が飛び出した。
あたしは、焦って口を押さて息を飲んだ。
『・・・え?』
電話から、君が戸惑ってるって空気が流れてきた。
あたしも、戸惑ってる。
まさか自分から、こんなことを言っちゃうなんて。
「あたし、ほかに好きな人できちゃった。だから、別れたいの」
ただ、君から別れを告げられるのが、嫌だった。
そう思っただけだった。
そしたら勝手に、口がしゃべった。しゃべり続けた。
まるで、あたしじゃないみたいに、上手に器用に嘘をついた。
別れたくない。
本当は、そう言いたかったのに。
君は少し安心したように、ほっと息をついた。
『そっか。実は俺もね、好きなヤツ、できたんだ』
「そう。良かった。じゃぁ、あたしたち、綺麗にお別れできるね」
こんなこと、言いたいわけじゃないのに。
「お互いに、次は素敵な恋が出来るように、頑張ろうね」
君との恋だって、充分すぎるくらい素敵だった。
「もう、連絡しないから。だから君も、連絡してこないで」
嫌だよ、友達でもいいから、もう少しだけ君と一緒にいたいのに。
せめて心の傷が癒えるまで。
『うん、ありがとう。知世のこと、好きだったよ。じゃぁ、これで。さよなら』
「さよなら」
やめて、お願い、切らないで。
「待って」
本当の気持ちを口に出来たとき、すでに電話は切れていた。
「嫌だよ、別れたくないよ」
そんなことを言ったって、全ては終わった後だった。
自分から、別れ話を切り出したんだもの。
心の中では思ってた。
自分から別れた方が、悲しみが少ないんじゃないかって。
「まだ、こんなに好きだよ」
悲しみが少ないなんて、嘘ばっかり。
君に嘘をつくことがこんなに苦しいことなんて、誰も教えてくれなかった。
目からいっぱい涙が出た。
どうしようもない想い。
どうしようもない自分。
臆病な嘘は、あたしの心を傷つけた。
自分で自分に傷つけた。
ツーツーと呟く電話の音だけが、君との距離を物語っていた。
「まだ、こんなに好きなんだよ」
臆病者の戯言は、小さな部屋の天井にぶつかり、散り散りになってどこかに消えた。
お題配布元:中途半端な言葉
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君が、もうあたしを見ていないってことに。
君の瞳には、彼女が映ってるってことに。
でもね、認めたくなかったんだ。
だってあたしは、君を失いたくなかったから。
君と一緒に過ごした日々を、まだ想い出にはしたくないんだ。
ふたりで撮った写真を見ながら、あたしはベッドに横になっていた。
そのとき、君からの着信。
君だけの、着メロ。
「もしもし」
ちょっとだけ、出たくない気がした。
でも、君からの電話を、拒否できなかった。
そんなことをしてしまったら、これっきりになってしまうんじゃないかって、そんな気がしたから。
『知世に、話があるんだ』
君は静かに呟いた。
「・・・うん」
君が何を言いたいのか、あたしにはずっと前から分かっていた。
いつそれを告げられるのかって、君からの着信があるたびに、君の顔を見るたびに、ずっとずっと思ってた。
「うん、何?」
携帯電話を、握り締めた。
手にはじっとり汗をかいて、まるで試験を受けに行く前みたいだ。
でも、それは間違っている。
君からの電話に、希望はないのだから。
あたしからの挑戦は、受け入れてもらえないのだから。
君が『あのさ』と言った。
それは、君の口癖。
『あのさ、実は俺』
「ね、別れよ?」
思わず、言葉が飛び出した。
あたしは、焦って口を押さて息を飲んだ。
『・・・え?』
電話から、君が戸惑ってるって空気が流れてきた。
あたしも、戸惑ってる。
まさか自分から、こんなことを言っちゃうなんて。
「あたし、ほかに好きな人できちゃった。だから、別れたいの」
ただ、君から別れを告げられるのが、嫌だった。
そう思っただけだった。
そしたら勝手に、口がしゃべった。しゃべり続けた。
まるで、あたしじゃないみたいに、上手に器用に嘘をついた。
別れたくない。
本当は、そう言いたかったのに。
君は少し安心したように、ほっと息をついた。
『そっか。実は俺もね、好きなヤツ、できたんだ』
「そう。良かった。じゃぁ、あたしたち、綺麗にお別れできるね」
こんなこと、言いたいわけじゃないのに。
「お互いに、次は素敵な恋が出来るように、頑張ろうね」
君との恋だって、充分すぎるくらい素敵だった。
「もう、連絡しないから。だから君も、連絡してこないで」
嫌だよ、友達でもいいから、もう少しだけ君と一緒にいたいのに。
せめて心の傷が癒えるまで。
『うん、ありがとう。知世のこと、好きだったよ。じゃぁ、これで。さよなら』
「さよなら」
やめて、お願い、切らないで。
「待って」
本当の気持ちを口に出来たとき、すでに電話は切れていた。
「嫌だよ、別れたくないよ」
そんなことを言ったって、全ては終わった後だった。
自分から、別れ話を切り出したんだもの。
心の中では思ってた。
自分から別れた方が、悲しみが少ないんじゃないかって。
「まだ、こんなに好きだよ」
悲しみが少ないなんて、嘘ばっかり。
君に嘘をつくことがこんなに苦しいことなんて、誰も教えてくれなかった。
目からいっぱい涙が出た。
どうしようもない想い。
どうしようもない自分。
臆病な嘘は、あたしの心を傷つけた。
自分で自分に傷つけた。
ツーツーと呟く電話の音だけが、君との距離を物語っていた。
「まだ、こんなに好きなんだよ」
臆病者の戯言は、小さな部屋の天井にぶつかり、散り散りになってどこかに消えた。
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