配車サービスの米Uber Technologiesは現在58カ国、311都市で事業を展開しており、1日の走行回 数は100万回以上にのぼります。
顧客がUberのほか米リフト、中国の滴滴、東南アジアのグラブタクシーなどの競合サービスを好むのは、これらが従来のタクシーよりも安く、清潔で、信頼性が高いから。
Uberは多くの安全基準を満たした最新の車にこだわることで、車両基準を主に自主規制しています。
また料金について、Uberのアプリでは、目的地を入力すればユーザーに推定料金を表示するという非常に便利な形式になっています。
フリーランスの立場をとるUberの運転手たち(通常、獲得した乗車料金の約2割をUberに支払っている)は融通の利く勤務体制を謳歌しています。
通常のタクシー運転手が必要とする資格を得るための手続きを踏む必要もありません。
Uberの強みは、運転手が自身で所有する車両を使って業務を行う為、車両を維持するコストを負担する必要がないことです。
Uberは、路上に送り出す車両とサービス提供地域を増やすにつれて、物流会社への追随が可能になるほど豊富なデータを収集していくでしょう。
そうして物流会社してきた様に、効率的な輸送ルートを決めるのに使うアルゴリズムの開発に、多額の資金を注ぐ必要もなくなります。
また、Uberは豊富な資金力を誇ります。
車両を所有せず、運転手を雇用しているわけでもなく、ただ毎回の運賃の一部を受け取る形態を取っているからです。
さらにUberは、インドTata Capital傘下のプライベートエクイティファンドTata Opportunities Fundから最大で1億ドルの資金を調達した模様。
Uberインド事業のAmit Jainプレジデントは金額については明らかにしませんでしたが、Tata Opportunities Fundと戦略的提携を結んだことを認めました。
インドにおけるサービス対象都市を拡大し、現地に合わせたより多くのサービスを提供したいと述べています。
インドはUberにとって米国以外で最大の市場であり、インド事業の拡大に10億ドルを投じ、今後6~9カ月でインドにおける1日あたりの乗車回数を100万回にすることを目指す計画を明らかにしています。
サービスの範囲も拡大しつづけています。
Uberと中国スマートフォンスメーカーのXiaomi(小米科技)は、Xiaomiのフラッグシップ機(スマートフォン)「Mi Note」の販売に関して提携を結びました。
マレーシアのクアラルンプールとシンガポールで、Uberアプリケーションからタクシーを手配するのと同様にMi Noteを買うことができる。
Xioamiによれば「注文から数分以内で端末が届く」という。
この5月には、カナダのトロントでランチを配達するサービス、Uber Eatsを開始しました。
同社がこのサービスを提供する都市はトロントが、シカゴ・ロサンゼルス・ニューヨーク・バルセロナに次ぐ5つ目。
ニューヨークに住む人は、Uberのアプリを使って自転車による配送サービスを呼ぶことができます。
ワシントンDCでは、Uberのアプリで家庭用品の速達を注文できます。
さらに、Uberは現在、米国の様々な小売業者と、即日配送サービスの立ち上げに向けて交渉中であると報じられています。
また地図情報サービス、米デカルタを買収しました。
Uberは米グーグルなど他社の地図に依存しますが、デカルタの情報も加えて到着時間、待ち時間などの予測精度を高める狙い。
輸送の総合仲介サービスとしての基盤は整いつつあります。
この様にFacebookをも凌ぐ目覚ましい成長を遂げているUberですが、その一方で様々な問題にも直面しています。
まず、乗り入れ可能なUber車の台数に上限がないことが、大都市の中心部でのひどい渋滞につながっています。
例えば、サンフランシスコでは従来のタクシー業界は「メダリオン」と呼ばれる営業許可証の発行枚数を1900台分に抑えているが、Uberの運転手は2万 2000人に上る可能性もあります。
元々サンフランシスコにもっとタクシーが必要なのは明らかでしたが、フェリーの乗客に認める車の乗り入れ台数を適度に制限するのではなく、タクシーの台数をあえて不足させておくことで、メダリオン制度は既存のタクシー会社のオーナーを豊かにしていました。
近い将来、各都市は規制で義務付けられている認可の一環として、Uberとリフトの運転手の数に上限を設けることになりそうです。
また、Uberの運転手は違法な転回や、簡単に路肩に寄せられる状況でも勝手に二重駐車することで、今やタクシーと同じくらい悪名高いです。
加えて、Uberの運転手が活動の対象から特定地域を外すというモデル(レッドライニングと呼ぶ)は、多くの運転手にとって当たり前になりつつあります。
その為、貧しく、稼働車台数の少ない地域でUberに乗ることができれば幸運。
タクシー会社は認可を受ける条件として、地域でサービス拒否をしないよう定められていました。
Uberはこの問題に対処するため、おそらく運転手に料金の全額を与えることで、市場原理に基づいたインセンティブをつくらなくてはならないでしょう。
他にも、Uberは米国障害者法(ADA)を守る必要があるとは思っていません。
タクシー会社は車いすを乗せられる特別車を備えて身体障害者に対応する義務があります。
従来のタクシー会社を重要な地域から追い出したため、ADAに準拠している特別車を持つ運転手を加えるよう求める規制が策定される可能性が高いです。
Uberは運転手の個人保険で乗客のケガは補償されると主張していますが、保険会社の見解は異なっており、運転手が加入しなくてはならない特別な商品を開発しています。
これはあってはならないグレーゾーン。
Uberは補完的な運転手の保険を積極的に提供しなくてはなりません。
法規制の問題も多く抱えています。
Uberは現地時間2015年7月3日、フランスで展開しているサービスの1つ「Uberpop」を一時中止すると発表しました。
Uberpopは、タクシーやバスの運転手のようなプロ資格を持たない素人ドライバーを利用した低価格の配車サービス。
フランスでは2015年6月、Uberのサービスに反発するタクシー運転手が激しい抗議デモやストライキを行いました。この抗議活動では65人のUberドライバーが襲われ、10人が病院に運ばれたそうです。
また数日前には、Uberの幹部2人が違法タクシーサービスの疑いで警察に身柄を拘束されました。
Uberは、9月後半に裁判所が判決を下すまでUberpopを停止するが、資格を有するプロドライバーを利用した他のサービスは継続するとしています。
他にもUberはフランスのほか、ドイツ、イタリア、スペインなどでも違法性が指摘されるなどしてサービスの制限や禁止を言い渡されている。
今年営業を始めていたインドネシアの都市バンドンで同社の事業が違法と判断されました。
さらに、カリフォルニア州の労働委員会は、米Uberについて検討し、同社はタクシーサービス会社であるという結論を出しました。
そして、サンフランシスコのUberの元ドライバーが自分は従業員として扱われるべきであり、それゆえ走行距離分の費用を受け取る権利があると主張を認めました。
Uberはドライバーの審査や支払いの管理を含む「業務のあらゆる面に関わっていた」として同社に4152ドルを支払わなければなりません。
この判断は1つの州の1人に関わるものにすぎず、同社は上訴していますが、今後はより大きな争いが起きそうです。
また、Uberのドライバーのグループは、すべてのチップの全額を受け取る権利などを含む従業員としての権利を求めて訴訟を起こしています。
その重要性を最初は理解しにくいことは、偉大な革新であることの証し。
確かに、Uberの事業モデルが機能している背景のひとつが、失業と不完全雇用がいつまでも続き、副収入を求める人々が大勢いることなのも事実。
しかし、強く求められている収入の機会を同社は創出しています。
本来、このような曖昧な事例では法の均衡は革新、競争、顧客サービス、富の創造に有利に働くべきだと考えます。
Uberの望みは、いつか多くの顧客を獲得し、至るところでサービスを提供することで、都市生活者の多くに自家用車を手放させること。
車両の維持コストのほか、駐車の煩わしさ、メンテナンス、保険などを人々に放棄させることにあります。
「この5年間で達成できたことを思えば、次の5年間でいったいどれだけのことができるか」
そう語るトラビス・カラニック共同創業者兼最高経営責任者は、
「何千もの都市がUberという選択肢を人々に提供し、交通渋滞や大気汚染の少ない未来」
を作り出すことができるのでしょうか。