EURO2008、EURO2012と連覇を達成したスペイン代表ですが、そのサッカーの質はまったくと言って違うものでした。

今回は、その辺の分析をしてみたいと思います。


【ワンボランチに近かった08】
EURO2008を見ていると、少し驚くことがある。

それは、ブスケッツ&X・アロンソがいないこと。

ボランチには、マルコス・セナが陣取り、その横にシャビ、トップ下にシルバ。
前線にイニエスタ、トーレス、ビジャがいる。(イニエスタとシルバは、ポジションを変えたり)


つまり、12で議論を呼んだダブルボランチの2選手が、ともにレギュラーではなかったということ。

08のスペインを見ていて感じるのは、ルーズさ。細かいパスにもミスがあるし、イニエスタでさえボールを失う場面が多々ある。

全体のポジショニングも、選手間の等距離感覚はなく、間延びに近いほどスペースが空いている。

人間ぽいサッカー


雑に表現すると、そんな感じ。12と比較すると、人間ぽいサッカーだと思う。


ビジャ&トーレスという得点源がいた分、中盤の構成やリスクマネジメントなど組織的な完成度は低い印象を受ける。

12では、得点源不在だったため、中盤のライフラインを整備したというのもあっただろうが。


【サイドアタックからポゼッションへの過渡期】

08でスペインを率いたルイス・アラゴネス監督のサッカーは、後の黄金期を作り上げるうえで、欠かせないベースとなった。これはシャビ、カシージャスなど主力選手が皆認めている事実だ。

スペインと言えば、サイドアタックで有名なチームだった。ホアキン、セルジなど積極的に仕掛けるサイドアタッカーを多く輩出している。今では、ヘスス・ナバスがその系譜を継ぐ。

スペインは06年ワールドカップ、カマーチョ監督に率いられて、ラウールを中心に臨んだがベスト8で敗退している。不運なジャッジに涙を呑ん格好だったが、サイドアタックとラウールの決定力を頼りに挑んだW杯で、無敵艦隊はインパクトを残せずまたしても無冠で大会を去っている。


そして、そこからの2年。アラゴネスは、このサイドアタックからのスタイル変換を敢行する。

4-2-3-1の布陣で、サイドに配置されたのはビジャ、イニエスタ、シルバなど縦に仕掛けるスピード型の選手ではなくキープ力とインテリジェンスに優れた選手たちだ。

中盤の舵取り役は、28歳とキャリアの円熟を迎えつつあったシャビに託し、舵取り役の守備の負担を軽くするために、セナを底に据えた。


【羅針盤 シャビ】

2年間、スペインの舵取り役を担ったシャビのゲームオーガナイズは、EURO08で際立っていた。

シャビは「羅針盤」として、スペインの攻撃方向をコントロール。ときに左、または右、あるいは中央とクルクル回りながら敵守備陣を翻弄して、まったく的を絞らせずに攻撃を展開していた。

シャビを自由にするための、周囲の選手のサポートも見逃せない。左サイドバックを務めたカプデビラは、「壁役」としてシャビとのワン・ツーを常に意識したポジショニングをとる。また、センターバックを努めたマルチェナ、ボランチのセナも、シャビをいかにフリーにするかを考えたプレーに専心しており、目立たない選手たちの隠れた貢献が、勝利につながっていた。