・サイドを機能不全にするIntensidad(強度)
比較的高い位置、ハーフラインくらいでサイドの選手からインターセプトする勢いでプレスをかける。ビルバオサイドMFはボールを下げざるを得ない。
→サイドを機能不全にする効果
・ムニアインを完全シャットアウト
ビルバオの攻撃陣を司るのは弱冠18歳の攻撃的MFイケル・ムニアイン。ここ数試合は閃きのプレーで得点シーンをいくつも演出していた。
そこでマジョルカはそこをポイントに徹底的に潰すことを敢行。これによりビルバオの攻撃力を半減させようと試みた。そして、これがズバリ的中。ムニアインに入ったボールに対し、ボランチとサイドMFとサイドバックの3枚がケア。少なくとも2枚、状況によっては3枚一気にムニアインサイドを圧縮し、ボールを奪う。
こういった戦術を採る場合、キーになるのはサイドハーフをどれだけ下げるか、ということである。特にスペインサッカーではサイドアタックは攻撃の命綱。「サイドを制すものがゲームを制す」と言っても過言でないくらいサイド制圧の良し悪しがゲームに大きく影響する。そしてマジョルカもその例に漏れず、サイドアタックは攻撃時の大きな鍵となっている。しかし、サイドハーフを下げすぎてしまった場合、このサイドの攻撃は鳴りを潜めることとなる。
さてこの日のマジョルカ。お構いなしにサイドは下がる。ムニアインを潰すことを優先順位とし、サイド攻撃は二の次に。
しかしラウドルップ監督。リーガ屈指の戦術家でもあります。このサイドのスペースにトップ下を流す動きを仕込んでいた。これによりサイドを活かしたスムーズなカウンターが機能。効果は抜群だった。
・前線の「カルテット」
マジョルカ前線の4人衆は、リーガでもハイレベルにある戦術理解力と個の能力を兼ね備えているように見えた。1トップのウェボ(カメルーン代表)、トップ下ヌスエ(スペインU-21代表)、右サイドMFペレイラ、左サイドMFチョリ・カストロ。この4人が自在にポジションを変えながら、流暢な攻撃を具現化する。
誰かが引けば、誰かが出るし、いっこワン・ツーにもらいに来て、出なければ消えるし、そこにまた誰か入ってくるし・・・というのが大部分においてできていた。
家長には厳しいかもしれないが、彼ら4人に割って入るには家長自身も特徴を最大限に示さないと難しいように思えた。「俺にはこれがあるよ」という武器を。
カウンター時などに、4人揃わなくても3人ないし時には2人でフィニッシュまで持ち込んでしまう。アレは後ろは楽ですよ。
・ジョレンテとトケーロ
ビルバオの「ザ・パワープレー」な2トップ。ジョレンテのフィジカルの強さはスペイン代表でも証明済みですが、トケーロと言う選手も伏兵に持って来いのフィジカルの強さと得点能力を兼ね備えている。どのチームもジョレンテにマークを引き付けられ、そのこぼれ球を常に狙っているトケーロに持っていかれて失点するパターンが多かった。
マジョルカがその対策をどうするのか。
マジョルカはラインを下げた。そして、ボランチとの挟み込みでとにかくバイタルエリアのスペースを潰した。バイタルに常に4人いる形。そのスクエアーボックスにジョレンテとトケーロを閉じ込め、ボールが入っても何もさせない。
良いクロスがピンポイントで入ってきたらやられてしまう戦術ですが、そこはムニアイン封じとサイドの機能不全化が効いていましたので、ビルバオは早めのクロスを2人のターゲットマンに預ける攻撃に終始。マジョルカのしてやったりの展開に。
「早めのクロスに効果はない」とスペインのゴールTVの解説は呻ったが、そのクロスを挙げざるを得ない状況を作っていたのはマジョルカの戦術がそれだけ嵌っていたから。その意図は、早めのクロスに対してはラインを下げることで、ボールウォッチャーになることを制御することにあった。これも的中。
試合を見ていて、W杯の日本対カメルーンを彷彿とさせた。カウンターの質はマジョルカの方が洗練されていたように映ったけど。クラブの性かな。
家長選手が出なかったのは残念でしたが見所ありで勉強になった試合でした。