むちゃくちゃハイテンションで良いゲームでした。すごく勉強になった試合でした。


ゲーム分析からフットボール観の広がりまで。行かせていただきます。


書きたいことが多くあるので、いくつかに分けて。



≪プレースピード≠ゲームスピード≫


「日本のサッカーを観ていると、すごく慌しい印象を受ける。プレースピードを高めようと努力しているのだろうが、何か不自然だ」


これは、以前イギリスに留学したことのある僕の高校時代の日本人の友人が、現地でサッカーに携わっているある日本人指導者の方に言われた言葉だそうです。


彼は、この言葉にとても違和感を感じたそうです。しかし同時に、何かすごく納得したそうです。


今の僕にも、同じことが起きています。



それを、スペインで多くの試合を観て、経験した今、このように仮定することができます。




プレースピード≠ゲームスピードの状況下では、正しいスピードの発揮もなければ、ゲームにおいて有効なスピード発揮もない。


これは、とりわけ日本人に当てはまる類のことかもしれません。


僕自身、昔監督に「お前は試合中にガチャガチャし過ぎだ」と言われた事があります。


「速くプレーする」「プレースピードを上げる」意識が、ゲームのスピードやリズムと合っていなかったら、その“スピード”はゲームにおいて有効性がなく、ただただミスを引き起こしやすい状況を自ら招くだけのような気がします。


そういった意味で、このビルバオ-バルサ戦は、非常に“ゲームスピード=プレースピード”が高いレベルで波長を合わせていたので、見ていても激しくエキサイティングで見所があり、やっている側にとっては息の抜けない非常にハイレベルな試合だったと思います。


ゲームスピードとプレースピードの関係性。


今後も試合を観る上で参考にしたい「観るポイント」です。




≪「深み」の獲得≫


スペインでよく言われるのは、「『深み』を奪え(獲得しろ)!」ということです。


「『深み』を獲得する」ということは、「相手のDFラインの背後にボールを入れる」ということです。


もっと単純に言えば、「いかに相手ゴールラインの近くでマイボールを保持するか」ということです。


ボールポゼッションの位置を上げる。



例えそれがその局面ではミスパスになったとしても、「『深み』を獲得する」上での正しいチャレンジだった場合、それは必ず試合に影響を与えます。ジワジワとボディブローのように、相手DFラインをズルズルと下げる効果があります。


「正しいチャレンジ」とは、「正しいタイミングで」という意味になります。


また、このチャレンジが「どこ」から行われるかも非常に重要です。


この試合のバルサの場合、例えばピケから出た「『深み』獲得」のためのロングフィードと、シャビが出すスルーパスの「『深み』獲得」は別の効果を生みます。


当然、ピケからのチャレンジの方がミスするリスクは高いです。実際、ミスパスになってラインを割ることがあります。このチャレンジのミスによって、ボールを失います。


しかし、終わってみればバルサのボールポゼッション率は70%ほど。



この30%の“ボールの失い方”がとても重要になってきます。



この30%のうち、上記のような「『深み』獲得」のためのチャレンジのパスが多ければ多いほど、ボディブローのように相手DFを翻弄し、“効く”ミスになります。


例えばボールを3分間キープして、中盤でボール回しした後でピケがこのチャレンジのロングフィードをして失っても、バルサとしては「OKライン」な訳です。極端な例ですが、「正しいタイミング」の一例です。


ピケから「『深み』獲得」のためのロングフィードが出た場合、相手DFは“眼”をバルサDF陣に向けながら自分のマーカーを見なければなりません。



これが続くと、相手DFもうんざりしてきます。



“眼”が離れる距離が遠ければ遠いほど、DFにとっては嫌なものです。


これが、例えばシャビが出すスルーパスとの違いです。




この「『深み』獲得」は、間違いなくバルサの得点を解剖する際のゲームの流れにおいて重要キーであり、フットボール的な観点でも、攻撃を効果的に行ううえでのキーファクターだと思います。