バルサ5-0レアル・マドリード


まさかまさかのバルサの圧勝劇。


どうしてこんなに大差がついてしまったのか。


速報レビュー&ゲーム分析。


いざ、解剖。



≪モウリーニョのゲームプラン≫

4-2-3-1、腰痛を抱えたイグアインの不在を除けば、最も自信を持つメンバーで挑んできたモウ・マドリー。このメンバーは6-1(対デポル)、5-1(対ビルバオ)とリーガでも2試合の大勝を飾っており、ここまでも7勝2分とまさにR・マドリーの現時点での“A”チームと見られた。現地報道や新聞はこぞって『ファンタスティック11』ともてはやし、クラシコにもこのメンツで挑むことが濃厚だと伝えていた。


僕の予想もそれに外れずメンツとシステムはこれで来るだろうと思っていた。モウはおそらくこのメンツで培った「勝ち癖」をディテールに加えたかったような気もしていた。


このシステムとメンツで行く場合、テーマは「いかに戦うか」。もっと言うと、「バルサ相手にいかに守るか」が焦点だと思った。


そこで、僕の予想は


ラインを上げて、全体をコンパクトにし、前線からのプレスと引いてブロックを作っての守備を使い分けて守備での仕掛け、駆け引きをする。


というものだった。


・実際の現象


モウリーニョの戦い方で試合開始直後から何より明確だったもの。


それは、


  ボールの奪い所


そして、それはどこか?


     サイド


以前、バルサを倒す方法(http://ameblo.jp/barcelonanosyasou/entry-10714465686.html )として僕は「サイドを捨てる」ことを一つの方法論として提唱した。


しかし、モウリーニョは、あえてこの「捨て所」を争点とし、「奪い所」にしてきた。


これは同記事の中にある、“逆転の発想”として、非常に興味深いやり方だったと思う。


そして、それは確かに、ある局面と側面において、バルサを戸惑わせていた。


しかし、このゲームプランは10分たたないうちに一人のCrackによってぶち壊しにされてしまう。




≪モウのゲームプランを壊したイニエスタの「読む力」≫


イニエスタは開始直後から左サイドに流れ、張って、前を向いてボールを受けようとするシーンが多かった。


しかし、そこでボールを受けようとするだけで、トップ、ウィング、サイドバックの3枚がゾーンを圧縮してくる。さすがのイニエスタもファウルをもらうのが精一杯。プレーに息苦しさが伝わってくる。


バルサはこの日2CB(プジョル、ピケ)+左SB(アビダル)の3枚ビルドアップを敢行。


右SBのダニ・アウベスはほぼサイドハーフのように右サイド張りっぱなし。


そしてシャビ、イニエスタ、引いてくるメッシにボールを入れようとSalida de balon(CBの球出し)を模索する。


ボールは入るものの、中盤ラインではなかなか前を向かせてくれないマドリーの守備。それにたまらずサイドに展開すれば、「待ってました」とばかりに圧縮、ボール奪取が行われる。


イニエスタは、苦しいながらボールを受け続ける中で、自身の「読む力」をフル活用し、ある仮説を立てた。


「-このサイドのゾーンを剥がせば、中が空く-」


つまりマドリーのサイドにおける守備の圧縮は主にマドリー自陣に入ったあたりでそのシビアさが増す。そこを掻い潜った瞬間、中央が空くはずだ、と。


イニエスタはCBからボールをもらうポジショニングを捨て、1つ先のプレー、つまりシャビ・ブスケッツ・アビダルが中盤ラインを剥がしたパスに対する準備を試みる。


9分。イニエスタが中盤ラインを剥がしたところのHueco(間)でボールを受けた。


左サイドにはビジャがフリーで張っている。


しかし、マドリーはそのゾーンを突破された後のProfundida(深み)をとられたサイド、つまりコーナーとペナ角付近のサイドの深い位置への侵入は許している。その時間に、センタリングに対応するDF陣の準備が整う手筈でゲームプランは進行している。


一瞬。


「中が空く」


PA角あたりから、アーリークロスというよりスルーパスに近い形で中に鋭いパスが送られる。


マドリーDF陣は、その早さに対応するゲームプランを用意してはいない。


抜け出したシャビが、カバーに来たマルセロのスライディングをかわし、ゴール。バルサ先制。


この得点はイニエスタの「読む力」「インテリジェンス」がモウリーニョのゲームプランを一瞬にして壊してしまったことを意味した。



戸惑うマドリー。サイドでの「奪い所」に確信を持てなくなった守備体型は、中盤の真ん中の「人に行く」チェックをあまりにも曖昧にしてしまった。シャビ、イニエスタ、メッシが躍動し、おもしろいようにパスをつなぎ、プレスをかわし、サイドを変えていく。


その中で、ビジャのサイドでの突破からペドロの得点。


カシージャスのミスでもあったが(あのレベルではあのスピードのクロスは論理的には最低でも前に弾かなければならない)、DFが戻りきれていないからあの狭いところでもGKとDFの間が空いてしまうわけで、そこにクロスが通ってしまうわけで。


あの速さの崩しに、戸惑ったままのマドリーはついていけなかった。修正する暇を与えず、バルサが追加点。



≪勝負は1点目に集約される≫


1点目で勝負あり。


というと、「結果論」になってしまうので、それはなぜか、ということを解明したい。


実はこのバルサの1点目にこの日のバルサのゲームプランがほぼすべて集約されていたからだ。


得点者は誰ですか?


シャビ・エルナンデス


ですよね。


ということは、シャビが中盤2列目から飛び出したということ。


現在のバルサ、普段なら飛び出し担当はペドロかケイタです。それを、あえてシャビがやった。


それを可能にしたのは誰でしょう?


セルヒオ・ブスケッツ



この日のブスケッツのポジショニング。これは去年のクラシコにおける「潰し役」とはまったく逆の役割。ブスケッツの位置によって、バルサの攻める位置が決まる。指針としての、先導的な役割を担っていた。


攻撃時のポジショニングを託された


ここがポイントだったと思う。


ブスケッツがバルサにおいて「壁役」を担っているとこの前説いた。(http://ameblo.jp/barcelonanosyasou/entry-10715373407.html


しかし、この日ブスケッツは更なる進化を見せてくれた。


シャビが飛び出しても良いように、ブスケッツがバルサ中盤のライン・ゾーンをコントロールするポジションを常にとっていた。とりわけ両チームがナーバスになる試合開始直後はそれが顕著だった。


ブスケッツの立つ位置で、バルサが「どこまで攻めるか」を決める。


ある程度深みまで行って、ボールを戻してやり直すのか。それともフィニッシュにスピードアップするのか。


一旦戻すORブスケッツがダイレクトパスでマドリー中盤を剥がした瞬間、シャビの飛び出す“間”が生まれる。


これをコントロールしていたのは、ブスケッツのポジショニングだった。


試合が壊れてからはこれも不要になったし、果たしてこれを90分間やり続けられたか、というとそれは違うテーマになるのだが、この試合はこのペップの方法論が「ハマッた」。


その集約がバルサの1点目に表れた。


シャビがあそこに飛び出せるのは、中盤のゾーンを捨てているわけで、まぁもう少し詳しく見たらアウベスかペドロあたりがきっちり」カバーしている可能性もあるけど、ブスケッツのポジショニングの方が何倍もシャビに中盤のゾーンを捨てる勇気に貢献していると思う。


と、僕はひとまず初見でクラシコがここまで壊れてしまった根本の要因をこのように分析しました。


新聞や報道をはじめ、他の人の意見と分析を待ちたいです。