アルメリア対バルセロナ


勝負になんなかったので、気付いた点を。


どちらかというと、「このバルサに勝つために」という視点で途中から考えながら見ていました。


①「人につく」OR「ゾーンを守る」


バルサ相手には、「人につく」時と「ゾーンを守る」時を使い分けないときつい。


バルサはめまぐるしくポジションチェンジする。その時、フリーにさせることを恐れてはいけない。「フリーにさせる場所」を作るべき。その方が現実的。



今までの試合を見ていると、まずサイドは捨てないとダメ。


あそこは数的優位を作られようが、メッシと1対1になろうが、深みをとられようが、「捨て」。その時、重要なのは中を固めること。「ゾーンで守る」。この時肝要なのが「ポジショニング」。正しい時に、正しい場所に立っていなければならない。


「ゾーンで守る」ということは、そのゾーンに2人侵入してきて2対1を作られたとしても、守らなければならないことを意味する。


“2対1でも、守るべき角度は同じ”-トルシエ


まさにこの概念。


また、PAアーク~センターサークル自陣側先端くらいの場所は「人につく」ことをしないとダメ。あの場所で特にシャビ、イニエスタに自由に前を向いてボールを持たせてはならない。それをやるなら、90分間徹してゴール前で亀のように我慢して跳ね返し続けるしかない。



②「捨て所」と「奪い所」をつくる


重複するようだけど、「捨て所」を作らないといけない。例えば、サイドは捨てる。


メッシは誰がどう見たって「1対1」の局面を作りたくないけど、それを捨てる。場所を限定するなり、メッシの1対1を容認する。


「奪い所」はわかりやすいと思うけど、中途半端は通用しない。“どこか”というところを徹底すべき。前節のビジャレアルは中盤で圧縮して「奪い所」と決めていたけど、そこを突破させるくらいならファウルしてでも止めなきゃダメ。でないと、調子に乗ってバルサはそこを突いて来る。


なぜなら、「奪い所」は圧縮・集中をかけている分、突破されたらがら空きになっているケースが多いから。それはリスクな訳で、そのリスクを負わなかったらバルサからボールは奪えない。



③守備での駆け引きのため、プレスのかける位置を2~3つ持つ


具体的に言えば、「前からのプレス」と「ブロックを作っての自陣からのプレス」を最低限ハイレベルで機能させる。


バルサのSalida de balon(CBの球出し)を封じるためには、やはり「前からのプレス」が必要。でも、90分前からのプレスをやり続けるなんてあり得ない。


だから、「守備での駆け引き」のために「ブロックを作っての自陣からのプレス」も使用する。


“試合をコントロールするのは、ボールを持っていても可能だ。しかし、ボールを持っていなくても可能だ”-クライフ


これは昨季CLインテル-バルサが最も良い例。インテルはボール保持率30%だったが、明らかに試合を支配していた。


この「ボールを持っていない中での試合支配」はバルサに勝つための1つのキーワードであり、そのためには「守備での駆け引き」が必要不可欠。


バルサは、ピッチを縦横最大限に広く使うことであのポゼッションサッカーを成立させている。


だから、バルサに「縦横最大限に、さらに広く使わせる」ことを意識させる。ボール回しに腐心させることで、フィニッシュ時のエネルギーを削ぐ。


ボールに汗をかかすことに奔走させ、人も無駄に走らせ、思考回路もそこに集中させることでゴールへの意識を少しでも外へそらさせる。



④逆転の発想



ここからは、ビジャレアル対バレンシアを例に出してこの逆転の発想のヒントを探ってみる。


「バレンシア、エメリ監督の5-2-3」


エメリの奇策。5-2-3。


しかし、「奪い所」は“前線”。



DFが5枚いるということは、普通後ろで跳ね返す守備を想像する。しかし、エメリはこの日明らかに「前からのプレス」を戦術として徹底していた。


奪ったら、前の空いているスペースに蹴る。


そこに、WGのホアキンやパブロが走る。


ここで後ろ向きにボールを追うビジャレアルDFは、良い態勢でボールを保持できない。苦し紛れに出したパスはカット。下げたパスに対し、バレンシアはラインを上げてその他のパスコースを完全シャットアウト。


どういうことかというと、バレンシアは前線にフィードして、そこにスピードのある選手を走らせている間に、ラインを上げてコンパクトに圧縮することによって、“押し込む”形でボールを相手陣内で奪う作戦。


これが大ハマリ。


なまじボールポゼッションに自信を持つサッカースタイルのビジャレアルは簡単にこのトラップから抜け出せない。いつもと同じポジショニング、角度でサポートをしているのに、「詰まって」いるため尽くボールを奪われる。



これが「逆転の発想」の一例。



3年前のCL、マンU対バルサ。


この時も、あえてメッシを「浮かす」ことでバルサの弱点を暴きだした。メッシが多少フリーになっても、その近辺で奪った後にメッシが守備をしないゾーンで数的優位を作って一気にスピードアップしてカウンターを仕掛け続けたマンUは1-0で勝利を収めた。



昨々季のCL、チェルシー対バルサ。


これも、絶好調のメッシの1対1をサイドでのみ容認、という非常にリスキーな戦術の施行が大当たり。A・コールは試合を通じてメッシを“殺す”ことに成功。メッシが死ねば、バルサの攻撃力は半減。ゴール前でのお得意のワン・ツーも鳴りを潜め、イニエスタの90分のスーパーゴールさえなければ、完全にバルサの負け試合。試合自体1-1だったから。負けていない訳です。



昨季のCL、インテル対バルサ。


メッシに対しサイドで1対1を容認する戦術は同じ。さらに、サイドでの深みを獲得させることも容認した。サイドで2対1を作られて突破されても、仕方ない、と。バルサのペドロの1点はそれから生まれた。左サイドマクスウェルがオーバーナンバーで追い越すサポートで突破、低いクロスをペドロがゴール。しかし、「計算内での失点」だったインテルはその後3得点を奪い3-1で勝利。



バルサの一番の強みを、弱みに見せる。


一番やられたくないところを、あえて空けてしまう。捨ててしまう。


強烈な個人に、数的優位で潰す策を使わない。


フットボールの常識を壊す「逆転の発想」。これが+αでないと、バルサを倒すことは難しい。それだけ今のバルサのフットボールは質が高い。



今季試合を見ていく中で、少しでもこの「逆転の発想」の答えを、自分なりにつかめたら、と思う。




期限はCLベスト4までで(笑)