②アンリの投入

前半のバルサの前線には、スペイン語で言うところの“desborde”が欠けていた。日本語に直訳すると、「爆発力、勢い」という意味になる。

何度かこのブログでも書いていますが、スペインで重要とされることの1つは、サイドがいかに深い位置にボールを運べるか。

アンリは、この能力をペップに高く評価されている。スペイン語で言えば、“profundidad”を創造できる選手。これは日本語で「深さ」という直訳になる。

アンリの長所は、ボールを持っていないときに、オフ・ザ・ボールの動きでこの「深さ」を作れるところだ。ここに、アンリと言う選手のインテリジェンスが凝縮される。他の選手との距離感と相手DFラインの高さを考え、スペースにボールを呼び込むことで、次第に相手DFラインが下がってくる。

これによって、バルサのリズムは格段に上がる。攻撃は活性化する。相手の3ラインの間が広がれば、その分スペースは広がる。つまり、一人一人の確保できるスペースも広がる。バルサの個々の選手の能力で一人一人の確保するスペースが広がれば、プレーの選択肢は無論多くなり、コンビネーションも容易になる。

これが、“アンリ効果”である。

イブラもこれと同様に深みを作るプレーをすることができる。だから、僕はここからのCLの大事な試合では、やはりこの2人が必要になってくると思う。だから、理想の先発3トップはアンリ、イブラ、メッシではないかと。


③4-2-3-1

アンリが入ったことで、フォーメーションも変更となった。

今季バルサが1つのオプションとして使っている、「4-2-3-1」である。

アンリを「1」に、「3」は左からペドロ、イニエスタ、メッシ。「2」はチャビ、ブスケッツ。「4」は前半と変わらず左からマクスウェル、ミリート、ピケ、ダニ・アウベス。

この布陣の効果は、メッシが中央に入った時にポジションチェンジが行いやすいことか。それと、ボランチが2人いることで安定しているため、SBが高い位置を取りやすい。よって、メッシが中に行ってもサイドのバランスが崩れにくい。

この布陣が特別な効果を発揮したとは見て取れなかったと思う。少なくとも、僕はそう思った。

ただ、今後も試合が膠着状態に陥った時に使われるであろうこのオプションに、どんな効果が生まれるのか、これからも注目していきたい。僕自身、もっと試合を見て学ばなければ。

敢えて挙げなかったけれど、結果的にはこの試合はメッシと言う“Crack”が一人で試合を「壊した」試合となりました。個のタレントの重要性と怖さを、またしても見せつけられた結果となりました。

やはり、「個の力」に目を伏せてフットボールは成立しません。組織と戦術のみに頼るのは、限界があります。僕は、そう確信します。