いや~。スペイン。バカつえぇっす。
と、率直な感想から入りましたが、試合分析を少し。
―スペインの一番の強み―
・ボールポゼッション
スペインというのは、非常にボールの保持率が高いチームだということは周知の事実ですが、そのボールポゼッションの「位置」というのに今回は注目して噛み砕いてみたいと思います。
例えば日本代表は、世界で見ても「ボールをつなぐチーム」だと、僕は思います。ヨーロッパなどを見れば、中堅国でももっと荒っぽいサッカーをする国もあるくらいだと思います。
ボールをつなぐチームと言えば、南米にそういうサッカーをする国が多い傾向がありますね。アルゼンチンとブラジルはちょっと別次元なので、メキシコやチリといった国を筆頭に挙げたいと思います。
では、スペインとそういった国の何が一番違うといえば、前述した「ボールポゼッションの位置」です。
DFラインのボール回し、中盤での細かい横パスのつなぎは、スペインも日本も大差ないと思います。ですが、いわゆる「アタッキングサード」と言われる位置でのボール保持率は、スペインの方が圧倒的に高いでしょう。彼らのボールポゼッションは、常に「タテ」へのパスを変化として伺いながらボールをポゼッションする。つまり、「ゴール」という目的が明確なボールポゼッションなのです。
もう少しわかりやすく説明したいと思います。
スペインのカギは何と言っても中盤。昨日はシステムが4-4-2で、中盤の4枚を担ったのがチャビ、ブスケッツ、チャビ・アロンソ、シウバの4人。
この4人の個々の技術がまず高い。本当に高い。個人個人でボールを失いません。2,3人に囲まれても、自分のプレーエリアをしっかり把握したうえでターンとスクリーンを駆使して相手を翻弄し、空いたスペースへとボールを運びます。その技術がその中で卓越しているのがチャビです。「絶対に」個人でボールを失わないのです。
そして、アタッキングサードにボールが入ったとき、脅威になるのがシウバです。
彼は「神の子」F・トーレスにマークが集中した瞬間、その隙間を狙ってスペースに走りこんできます。そしてまた得点力を持っている。
スペインは、この中盤の構成力を優位に、サイドを広く使ってピッチをワイドにゲーム展開します。そして、何といっても「クロスの位置」と「クロスの入り方」。これを徹底しています。スペインのサッカーでは、基本的にアーリークロスは必要とされません。いかに「深い位置」からマイナスへのクロスを入れられるか、がポイントです。
そして、必ず一人がニアにつぶれて、ペナルティ・スポットに二人目がタイミングよく入ってくる。日本では、ニアにつぶれてファー、というのが主流ですが、スペインではよりシンプルに、近くにマイナスのパス(クロス)を入れようとする狙いがあります。
サイドに展開しても、相手のDFが整っているとき。スペインはボールをポゼッションしながらやり直すのですが、そこが彼らの真骨頂です。ボールを後ろに下げ、中につないで、逆サイドに展開する、というのが一般的なサッカーのセオリーですが、スペインは一瞬でも「タテ」が空いたら絶対にそこを逃しません。
だから、リズムとしては、「ショート、ショート、ロング」で展開というよりは、「ショート、ショート、ショート」なんだけど、「後ろ、横、タテ」と角度(方向)でサッカーに変化をつけていくイメージなんです。
その「タテ」のパスが随所に的確に入るから、アタッキングサードでのポゼッションが上がります。あの「タテ」のパスを入れられることがどれだけ相手にとって嫌なことか。相手の中盤はGAPを閉めるべく横にスライド、タテに入ったら挟み込むためにプレス・バック、DFラインはインターセプトを狙うか前を振り向かせないためにラインを上げてチャレンジ・・・
その動きを強いることで、相手をいやらしいほどに疲弊させていくのです。
そう、それはまるで闘牛士が闘牛を赤いマントで走らせて、翻弄して疲弊させて最後にトドメを刺す。そんな画を思い起こさせます。
結果を見ても、前半は1-0。後半に一挙4得点を叩き込み、終わってみれば5-0という圧勝。
スペイン、強し。
このエル・マタドール(闘牛士)に死角はあるのか。それとも、ジュール・リメ杯は陥落するのか。
1年後に控えたW杯が楽しみです。