blues【blúːz】 Be My Baby 17-5「若人じゃあるまいし、40過ぎた中年が、みっとも良くありませんね」森高が、松本をからかう。先程から、ズボンの尻ポケットのスマホを、しきりに気にしているからだ。「悪い。もう大丈夫だから」「ウッチー?」言われて、松本は、何でわかるのかと、嫌なものでも見るように森高を見る。「家に送ってったんだけど、その後、“家は無事か”ってメールしたら、ずっと返事がなくてさ。今、“大丈夫”って返事来たけど、もしや、空き巣とかに入られてたのかと思ったりして、ちょっと気になってた」「そりゃ、心配だったな」森高は言った。松本の言葉に、盛大につっこみたいが。まず、内田が帰国したのは昨日だ。で、今日の段階で“家は無事か”と訊くということは、昨日は家に帰っていないということで。そして、今日、松本が送っていったのだから、2人は昨日から一緒にいたということだ。(野暮なことは訊かないでおいてやるか)森高は、自然と浮かんでくる微笑みを押し殺す。短くないつきあいで、概ね人格は把握しているつもりだったが、松本にマメさは感じたことがなかった。あと、心配症と感じるところも、初めて見た気がする。いつもどこか少し投げ遣りで、そんなところが、結構カッコ良かったのだが。「いいねぇ…幸せそうで」森高は呟いて、フロアに戻る。窓の下、夜の高速は静かに流れ。最後の客を送り出して、閉店の時間になる。「ウッチー来るのって、明後日だよな?」片付けながら、森高が言う。「そうだよ。マスターが決めたんだろ。呆けか?」「なんかなぁ~最近、何日とか何曜日とか結構曖昧。それでも、全然支障ないのが怖いけど」同じ毎日などないと言うけれど、あまりに代わり映えしなさ過ぎて、ともすると、生きているのかどうかも怪しく思える。「ま、いいや、ちゃっちゃと片付けて帰ろうぜ。俺等にとっちゃ週始めだからな」曜日を、しっかり把握して森高が言った。
松本内田妄想劇場
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