※ピンクの字はバービーの心の声
梱包を終え、配送…じゃなくて送迎用の車に乗り込む私。
日本のどこかで私を待ってる人に会う瞬間が刻々と迫っている。
配送伝票の宛名には、女の人の名前が書いてあった。
私にオファーしたのは女の人なんだ。
お母さんが自分の子供の為にオファーしたのかなぁ。
子供は好きだけど、遊ばれるとなると覚悟がいる。
1日中プロレスしてるようなもの。体力勝負だわ。
そのときはエナジードリンクやプロテイン、絆創膏や湿布も会社にお願いしよう。
あれこれ考えながら、車窓からの景色を眺める。
これから私の人形人生の第2章が始まるんだ。
なんてカッコつけて言ってみた。
日本人は優しいって聞いてるから、なんとかなるわね
しばらくして車が止まった。
ドライバーさんが降りてきて、私を車から降ろした。
このお家に私を待ってる人がいるんだ。
ドライバーさんが、「ええっと。あー、〇〇さんかぁ。また何か買ったんだ。」ってつぶやいてる。
私が「どんな人?」って聞いたら、フツーと言ってた。
日本語のフツーってどういう意味かしら?
フツーはわからないけど、どうやらしょっちゅうネット通販してる人のようだ。
インターホンで呼び出し、「私を待ってる人」が住んでいる部屋に向かう。
いよいよご対面かー。ドキドキしてくる。
フロアに到着すると、既にエレベーターの前で「私を待ってる人」は、私を待っていた。
ドライバーさんもいきなりのフェイントに驚いた様子。
チラッと箱の中からのぞいたら、大人の女の人が立っていた。
この女の人が私にオファーした人なんだ。
この寒い中、薄着でつっかけを履いて、わざわざエレベーター前まで来ていた。
噂でお迎えがない場合は、「宅配ボックス」という名の暗闇にしばらく閉じ込められることもあると聞いていた。
閉所恐怖症の子には、どれだけ精神的なダメージを受けることか…。
閉所恐怖症じゃない私だって嫌よ。
忙しい人が多いから仕方のないことだけど、人形界を代表して言わせてもらいたい。
なるべく在宅時の時間を配達時間に指定して、宅配ボックスは使わないでー。お願いします!
だから、この女性がエレベーターの前までお迎えに来てくれて、とても嬉しかった。
私の到着を今か今かと待ってくれていたのかわかる。
私を待っていた人。
やっと会えた。
これからよろしくね