人類学的思考で視るビジネスと世界

 

データを分析するだけでは人の行動は理解できない ―― 。必要なのは、広い視野で物事を捉え、相手の身になって考えること。その助けとなる「人類学的思考」を、豊富な事例を交え説く。 

 

● 経済予測や選挙の世論調査などのツールは、近年、うまく機能していない。それは、文化やコンテクスト(文脈、背景) を無視して使われるためだ。世界を理解する上で必要なのは広い視野であり、それは人類学が与えてくれるものだ。これを「アンソロ・ビジョン(人類学的視点)」と呼ぶ。 

 

● 人類学では、「参与観察(エスノグラフィー)」という方法論を用いる。これは、好奇心をもって、オープンマインドで対象を観察するものだ。重要なのは、解釈とセンスメイキング (意味づけ)によって、大きな結論を導き出すことである。

 

 ● 文化的差異を調べれば、それぞれの文化の考え方が浮き彫り になる。例えばある研究によると、中国とアメリカでは顔認 識技術に対する認識に大きな違いがあった。アメリカではプライバシーや自由を脅かすと捉えられているのに対し、中国 ではアメリカほど問題視されていない。これは、中国では長年、監視が公然と行われてきたためだ。 

 

● 人は、自分が「普通」で他者は「変」だと思い込みがちだ。 だが、他者の視点で世界を見ると、自分を客観的に見ることができ、そこに潜むリスクやチャンスに気づくことができる。

 

 ● 西洋人は個人主義的かつ論理的であり、西洋の消費者は自らの意思決定が合理的で自律的なものだと考える。しかし実際には、消費者は社会的関係に支えられ、周囲から学んだことを通して自分のアイデンティティを形成していく。あらゆる問題は論理的に解決できるという西洋的な思考だけでは、今日の消費者文化を理解することはできない。