MS-09  ドム
登場作品『機動戦士ガンダム』

ザクやグフといったMSは、重力下における展開には大きな問題を抱えていた。これらの移動は歩行によるか、車両による運搬でおこなわれるが、展開速度が遅すぎたのである。このため、MSの自力での単独飛行を目指したグフ飛行試験型が開発されるも失敗に終わり、同計画はグフのサブフライトシステムとしてド・ダイYSを連携運用することで昇華されている。この問題を抜本的に解決するため、ホバークラフトを応用したMSの開発がツィマット社で開始される。

当初は純粋なホバークラフトによるものが考案されるが、兵器搭載量の問題から却下され、最終的にはより推力の高い熱核ジェット・エンジンにホバークラフトの技術を応用したものに落ち着いている。

計画時のデザインは高機動型ザクII(R-2型)程度のボリュームであったが、試作機を手直ししていく中でプロポーションが修正されている。大型のシールドなどのかたよった装備は高速移動の際に余剰なモーメントを発生させることから、機体の装甲そのものを左右対称にバランスさせたうえで強化する方向で設計されている。また、各種スラスターなど高速移動用装備の内装にともなう構造強化などのため、フレーム自体に既存の機体を上回る堅牢さが求められる。これらのことから、自重の増大は設計段階で判明している。ツィマット社によって導入された技術やコンセプトにはユニークなものも多く、加えて整備性の高さなども、のちの空間戦用MSとしての採用を後押ししたといわれる。

コンパクトな熱核ジェット・エンジンの開発は困難を極め、開戦から半年以上経過してプロトタイプが完成する。その後、各部スラスターや動力パイプが内装され、装甲形状も空力的な見直しを受けたあと、数週間後には制式採用されてグラナダとキャリフォルニアベースで生産が進められている。本機は限定された作戦域での運用を前提とした「局地戦用MS」として設計されているが、その性能の高さからグフに替わる主力機としても多く扱われているという。

標準塗装は黒と薄紫を基調に、胸部がグレー、モノアイ周縁や装甲の内側が赤で塗り分けられている。これは本機を初めて受領した「黒い三連星」のカラーリングを踏襲しているともいわれるが、実際には以前から配色は決定しており、事情を知らない当時のメディアによる憶測がいつのまにか定説となったとも言われている。