アリの考え方は少々極端である。

眠っている時間に意識はない。生産性がないため人生における実や花になる時間としてカウントしないあたりは・・・。

 

「昼間は、30年間もないんだ。」

 

これはたしかにそうだ。強烈な1文。

なにかの分野で頂点を極めた人物は、モハメド・アリのように実にシンプルな考え方をする。複雑な考え方はしない。あれこれと無駄な尾鰭(おひれ)を付けて会話を長くしない。

 

体重を減らしたいなら摂取カロリーよりも消費カロリーを増やせ、としか言わない。強くなりたいならトレーニングだ。相手よりも自分のほうがより多く練習していなければ勝てない。裏を返せばそれをやったら必ず道は開ける、と。

6歳の子供にもわかるように、易しい論理で話す。これが天才の天才たるゆえん。

 

強烈なスピーチだが、驚かない。

愕然としたりもしない。

何故なら私はアリよりも人生設定を短く考えていたからだ。

 

百歳まで生きた人はあっぱれだと思う。誇らしい。

それはそれとして。

健康だった時間は何日あったのか。

多幸感を覚えた日は何回あったのか。

心底、愛した人はいたのか。

本当の涙は何度流したか。

本当の笑い声、抱腹絶倒した時間はあったのか。

あれば、百年もいらん。5年でいい。

 

60秒の幸せのために、8年を費やした経験者がアリの言葉で驚愕したりはしない。