マジシャン・新子景視さんを初めて見たのはテレビのマジックショーです。

 

・新子景視氏が背を向け、観客がダイス(サイコロ)を振ってその目を当てる。手で隠しても当てる。絶対にサイコロを見ないで、観客のほうも向かずに(観客さえも知らない目でも)当てます。

 

・インビジブルタッチ(観客Aさんの顔を新子景視さんがトランプで触ります。目を閉じていたBさんに「どこを触られました?」と訊くとAさんが触られた箇所を指差します。Bさんが当てるというより、Bさんも「触られた」という感覚があるという現象です。新子景視さんはBさんに一切触れていません。)

 

・初恋の人の名前をノーヒントで当てます。

 

この他にも素晴らしいカードマジックを見せてくださって、1つは自分のレパートリーにさせていただきました。

 

新子景視さんの素晴らしいところは

古典の名作の長所を残しつつ

現代に似合った優れた演出を交え

オリジナリティがあるところです

 

例えばカード当てでは「ハートの9ですね」と当てたらそこで演技終了です。これを古典としましょう。

「12枚めにハートの9があります」と当てると演出としても優れ、「普通のカード当てじゃないな」感(特別感が生まれます。

さらに「ところで今日は何日ですか」と訊いて「9月12日・・・」と答えるとそれが今日の日付だったとここで判明します。(12枚めに数字9のカードがあることが日付を表している)

 

ここまでは新子景視さん以外の方でも、プロマジシャンなら出来ます(既にかなり以前からやっています)。アマチュアでも出来るでしょう。

新子景視さんの違うところは、その日付が観客にしか知らない記念日であることです(誕生日や結婚記念日など)。

 

演者・新子景視氏は絶対に知る由もない、観客の記憶・情報を使うことで「通常のマジックとは一線を画する」と絶賛されています。まさにブレインダイブ(脳や思考に潜り込む)。

 

 

トリック、タネに関して言えばここに挙げたマジックは全てマジシャンなら知っているものです。ただし、それを新子景視さんが使っているかどうかは定かではありません。また、現在の私は全てトリックが(多分こうだろうな程度に)わかりますが、わかったからと言って出来るものではありません。ダイスの目を当てること、インビジブルタッチは出来ません。

 

 

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新子景視さんのYouTubeチャンネルを見ていて、ストリートマジックですか、街に出かけ、一般の人にブレインダイブを演ってらっしゃる動画を拝見しました。スタジオゲスト(タレントさん)とは違って街行く人ですからリアクションがリアルです。タレントさんはどうしても番組成立のため共演者に恥をかかせまいとしますからややオーバーリアクションになってしまい、リアリティに欠けます。マジシャンがつつかれると困る質問もタレントさんはしません。

 

私が見た新子景視さんのブレインダイブ動画はサイコロの目を見ないで背を向けたまま当てることと、初恋の人の名前を当てる現象です。皆さん飛び上がるように驚き、「怖い・・・!」とおっしゃっていました。そりゃそーだ。

 

サイコロはマジシャンならなんとでもなります。もう既に新子景視さんと同じことが出来るアマチュアの方もおられるでしょう。(新子景視さんと同じことが出来るように見せるだけであるなら、私にも出来ます。)

 

一番不思議なのは相手の初恋の人の名前を当てる現象ですね。そして多数派が最もタネを知りたがっているブレインダイブ現象です。「あれが出来るんだったら自分も演ってみたい!」と思う、夢の現象です。「タネがわからない」を通り越して「ありえないでしょ!」になっちゃっています。

 

ここで疑問が1つ。

 

あのストリートマジックでは、今日初めて会った人に声をかけ、その方の初恋の人の名前を当てています。

あの動画の通り、仮にですが、私に対しても当てられるなら、ちょっと「?」なのです。

 

まず、私には初恋の人が何人かいます。1人ではないので迷います。本人が迷っているのに何故当てられますか?(ここはほんの少しの「?」ですが重要です。)

 

療育センターの時代(保育園、幼稚園時代が殆どありませんでした)にも初恋の子がいたでしょうし、小学校1年生から6年生まで、8人いたと思います。中学1年生のときに1人、それ以降は19歳、20歳ぐらいまで好きな女性はいません。明確に名前を覚えているのは中学1年のときの子で、小学校時代の6年間を初恋と呼ぶのであれば・・・そうだな、「絶対当てられない」と言い切ってもいいと思います。

何故なら全員、日本人ではなかったから。しかも名字しか覚えていないコもいます。この状況で新子景視さんが「7文字ですね。アレキセイエフ」「4文字。メシコフ。」と当てたら本当のブレインダイブです。(現在の私の容姿を見てハーフだと分かる人はそうそういないと思います。日本人っぽくないのはたぶん多少異なる瞳の色ぐらいでしょうか。10人いたら9人が私を日本人として見るはずです。)

 

新子景視さんのマジックは相手のイメージを読み取ります。そのわりに「珍しい名前ではないですよね」などと一切質問しません。私が「アレキセイエフ(姓)・・・」「メシコフ(姓)・・・」「アナスタシア(名)・・・」(のどれか)をイメージして、当てられるとは思えません。当てたなら、それは答えは1つ、新子景視さんが幼馴染みのように私をよく知っていたのです。(または私をよく知っている人のことを新子景視さんが知っていた)というか・・・当てたら不自然です。

 

もちろん私が空気を読んで唯一の日本人名である中学時代の初恋の相手をイメージしたとしても、それを新子景視さんが当ててもあまり不思議ではありません。詳細は言えませんがそれを知っている人が多すぎるからです。

 

といった上記のパーソナルデータを提供したうえで新子景視さんに私の初恋の相手を当てて欲しいですね。より難しくなるかも知れません。

日本人かも知れませんし、日本人じゃないかも知れない。私が学校の先生や寮母さんを好きになったかも知れない。

新子景視さんは「初恋の相手の名前を思い浮かべてください」と言いますが、『名前』という日本語は怖いですよ。うかつに使えない単語です。私は「初恋の人の・・・姓名のどちらですか?フルネームですか?」とは一切訊きません。『名前』という日本語はフルネームも名前、名字も名前、下の名も名前です。特に小中高生の時は両方で呼ぶものであり、両方で記憶しているものです。なぜ新子景視さんは「必ず下の名を相手はイメージする」と知っているのでしょうか。

 

つまり、初恋の相手の名前当てはアクシデントが多いものなのです。カード・マインドリーディングとは違って。

ということはアクシデントを防ぐために新子景視さんは何か策を講じなければなりません。はっきり言ってしまえば私が「初恋は新子景視くん」とか、ふざけたイメージをしても新子景視さんはそれを知るすべを持っているべきです。(持っているのです。)

 

私が「アナスタシアが初恋」と決めかけて「あ。日本名じゃないと当てられないか。じゃあ・・・」と変えたらそこでお終いです。ブレインにダイブ出来ません。特に6歳から13歳ぐらいまでなら、いつが初恋なのか自分のことでも曖昧です。

新子景視さんは「それは何歳ごろですか」と訊くこともあれば訊かない事もあります。それでも確実に当てる。不思議ですがメンタルマジックにしては完璧過ぎて不自然です。

 

アルファベット1文字当てるだけでも大変な奇跡なのに、名前を当てる。

アルファベットは26文字、トランプはその倍で52種類。

心に思っただけで当てるにはトランプのほうが確率的に難しいですが、アルファベットを当てたほうが「ブレインダイブ」っぽいと思います。人名って何種類あるんでしょうか。当てたら不思議というより出来すぎ感がありすぎて不自然で、「タネがわからない」「ありえない」を通り越して「万に1つも無理。不可能」です。悪い言い方をすると胡散臭いのです。誰がこれを信じるんだ、と。

 

私は新子景視さんを責める気持ちは微塵もありません。

「マジックです」と言ってやっておられるのですから、不可能であっても責めません。不自然さはちょっとあれですが・・・。

「超能力です」と言ってやっていたら・・・めっちゃ考えますけど。

 

ただ、新子景視さんの「人名当てブレインダイブ」に関してはマジックの考え方として問いたい点はあります。

 

○○○、入れていませんか。

 

○○○を入れずにあのままストリートマジックで人名当てが出来るなら、4つ言えます。

 

1,サクラです

2,偶然です

3.当たるまで根気よく撮影し続けたのです

4,相手が無意識に名前をつぶやいてしまったのです

5.統計を使ったのです

 

1~4でなければ、5です。あるクラスに「あすか(明日香、明日佳、飛鳥など)」という女子生徒が6名いた時期(世代)がありました。「だいすけ・大輔」「翔」という名前も流行りました。統計は意外に使えます。5と3でブレインダイブは成立します。ヤマを張って、流行りの名を調べ、その年代の人に近づき、当たるまで撮る。

 

1,2,3,4,5でもなく、○○○を入れないなら、絶対に私の初恋相手は当てられません。最もリアルなのは「この人からは何故だろう?全く読めない」と新子景視さんが私を見てつぶやいたなら、「すごいな」と思います。マジシャンは確実に当てようとしますがメンタルマジックに属するブレインダイブなら「わかりません」でもいいでしょうし、「えり」と「えりこ」と「えりか」または「りえ」のように惜しいハズレで1文字ぐらいなら間違えたほうがリアルです。

 

「私(被験者)の初恋相手の名前を当てる」ことと、私に初恋相手の名前を言わせることは全然違います。これが6番め。

 

 

 

私はトランプを使わずに『相手が心の中で思ったカード』を当てるマジックをやりますが(奇術原理による方法があります。)、「ハートの5だなあ・・・」と確信していても「ダイヤの5」と言って故意に外したりします。「ああ、数字しか当たりませんでした。すみません。失敗です」と言って別の奇術に移りますが、観客は「色もあってたんじゃない?」とザワザワします。不可能に見えるカード当ては確実に当てないほうが超魔術・超能力・マインドリーディング・ブレインダイブっぽいのです。

「ダイヤの5ですね?」と言って色も数字も外し「クラブのキングです」と言われても屁でもありません。「これを当てられるのは超能力者だけですね。では手品師のカード当てをやりましょう」といえば、単なるデモンストレーションにしか感じませんから。ゲームのデモ画面のようなものです。

 

「メンタルフォースはプロバビリティフォースに過ぎない」という意見があります。確かに頷けます。

メンタルフォースとは上記で述べたように相手が心に思うであろうカードを予測し、そのなかから1枚選んで強制的ですが無意識のうちにそれを選びたくなるように潜在意識に残し、その1枚を気にかけさせ、誘導して言わせてしまう方法です。

「メンタルフォースはプロバビリティフォースに過ぎない」論者・派閥は、「潜在意識に呼びかけること自体が不確実で具体化された方法がない。」とか「非科学的である」という人もいます。ですから、その意見に頷ける私は「メンタルフォースをやっています」とは言いません。「メンタルフォース現象を知っている人が見たら『メンタルフォースに見える』方法」を使っているだけです。結果的にたまたまメンタルフォースになってしまうこともあれば、プロバビリティフォースに頼った方法になることもあり、ケース・バイ・ケースでマルチプルアウトも使います。また失敗を認めてしまうこともあります。何故なら「心の中で思ったカードを当てるなんて不可能」とみんなが思っているから。

 

※ プロバビリティとは確率です。プロバビリティフォースとは「確率的に好まれやすく選ばれやすいカードを予測しておく」ことを指します。小学生の男の子に「好きな昆虫は?」と訊いて「カブトムシ」という返答はプロバビリティとして高い率です。これを予言とかマインドリーディングとは言いませんが当たるときは当たり、外しても特に気に留めません。

 

「不可能に挑戦する」+「失敗を認める」=大きな武器。

 

例えば

ペットボトルを宙に浮かせようとするが失敗する。

2度、3度落として、ギミックのあるペットボトルとすり替え、4回目も失敗する。

5回めで「出来ません」と言って次に移ろうとした時、ギミックのあるペットボトルを浮かせる。

これを演られると、観ている人たちは「最初からこういうマジックだったんだなあ」と思うものです。

ギミックのあるペットボトルとすり替えが出来ない場合は、「無理です」と潔く失敗を認めて別の奇術を行います。

 

自分は「絶対に成功させよう」なんて思わないです。条件が難しければ難しいほど。

「どうせ不可能なこと。」「うまくいったらもうけもん」ぐらいで丁度いい。

 

 

 

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マジックショーをテレビでオンエアすると(YouTubeでもそうでしょうが)どうしてもやむを得ず○○○を入れてしまいます。

 

ただ、企画の趣旨として○○○を入れては成立しないマジックを披露するのであれば、○○○を入れられるとファンとしては悲しくなります。

 

 

 

新子景視さん:「あなたの初恋の相手の名前は・・・マイさんですね?」
観客:「いえ、マイさんは高校のときに片思いだったコで、初恋は中学時代のモモコさんです」

というパターンを見たことがありません。
ハズレたにせよ、ものすごく恐ろしい外し方です。
何故『マイさん』を新子景視さんは知っていたのでしょうか。
正解の『モモコさん』を当てるよりもすごいことなのに彼はこれを演りません。

演らないのではなく、出来ないのだと思います。
今のルーティンでは。