マークドデックとは『裏模様などからオモテの情報(数字やマーク)がマジシャンにのみ、分かるトランプ』のことです。ドンキホーテさんや玩具屋さんでも見かけますが、高価になりますけれどマジックグッズ専門店のマークドデックは読み取りやすくバレにくく出来ています。

 

昔のテンヨーさんとは違い、専門店でマークドデックを買っても説明書といいますか、どうやって手品に使ったら効果的かという解説書は付属されません。手順は自分で考えなさい、甘えてんじゃねえよ、ということでしょうか。(ESPカードはたいてい、手順解説が載っている冊子、ファイルが付属します)

それでも奇術専門店には別途、マークドデックの解説書が販売されています。全くと言っていいほど参考になりませんでした。何故なら、マークドデックを使わずとも起こせる現象ばかりが掲載されており、ある程度テクニックがある人じゃないと不可能なマジック解説が多かったからです。それってマークドデックを購入した人が本当に望んでいる解説書でしょうか。(解説書の半分は「マークドデックの種類の説明」と「マークドデック使用上の注意」に頁を割いています。重要といえば重要。)

 

勿論、『マークドデックを使わずとも起こせる現象』をマークドデック使用で演じるメリットはあります。

 

1,ひとつでも手間が省ける。楽になる。

2,より不思議に見える。

 

この2つが主なメリットです。

 

ピークしなくても良いのは大きなメリットです。ピークとは人知れず覗き見るということです。

よく混ぜられたデックのトップカードをピークしなくても演者は知っているわけですから、フォースに使うとより不思議なマジックに見えます。でもこれって、手品を永くやっていれば大抵の人が知っていることです。初心者のための解説書であれば、本末転倒と言いますか、奇術を始めたての人ほどマークドデックに不向きな手品師はいません。よって、解説書は役立たずという説が成り立ちます。(カード1枚当てるのにマークドデックとブレイクとキーカード使ってんじゃねえよ)

 

自分が「ちょっといいな」と感じるのは2つです。

一切、手元やカードを観ないで観客が覚えたカードをトップコントロールし、デックをテーブル上に置いてマーキングを読み取りながら「念の為、あなたも混ぜてください」と指示し、再び目線をそむけます。この後はマインドリーディングの演技をして読心術としてカード当てをしてしまうものです。印象の上では演者は全くトランプに目を落とすことなく当てたように見えます。直接的な使い方になりますが、マークドデックじゃなきゃ出来ない現象と言っていいでしょう。

 

同じようなマークドデック専用のカード当てとしてノー・コントロールでもOKのものがあります。

観客にデックを混ぜてもらったらテーブルに置いてもらいます。

好きなところで2つに分けてもらい、観客の目を観ながら演者は分けたところのカードを左手に置いて右手で挟みます。「このように両手で蓋をしてください」と手本を示し、そのまま観客にカードを渡し、横を向きます。透視の演技をして当ててしまいます。ポイントは「ずっと演者は私を見ていた。もしくは背を向けていた。」と観客が感じるようにすることです。人はモノを渡される瞬間はそれを見ます。カードを渡されたらカードを見ます。その瞬間のみ、演者の目線がどこへ行っているかはわからないのです。マーキングを読み取るならこの瞬間がいいでしょう。

※ ひと工夫として「両手で挟んでください」とだけ口頭で指示し、相手がカードを挟もうとしたら「ああ、左手じゃなくて右手に置いて左手で覆うようにします」と否定演技をします。「ああそうじゃなくて」と否定している最中は演者が教えているわけですから、カード裏に目を落としても自然なわけです。「ああそうじゃなくて」は偶発的に起きた観客の誤った行動による否定です(本当はそうじゃなくても。)。偶然そうなったわけですから、そこにトリックがあるとは絶対に思いません。

 

前記事でテンヨーさんのテレパシーボックスについて触れました。

 

テレパシーボックスを使うと次のようなカードマジックが可能です。

 

観客に1枚、自由に選んでもらって『誰も知らないカード』としてボックスに入れます。「あとで使います」と言っても構いません。

もう1枚、自由に選んでもらってこれは数字とマークを覚えてもらいます。デックにカードを戻し、シャフルして。「ちょっと見失いました」という演技をします。これは本当に見失ったような混ぜ方があります。カードコントロールしているのですがそのハンドリングがどう見ても「手品とはいってもこれは・・・本当に行方不明になっちゃったんじゃない?」と思わせる技法があるのです。文章説明は不可能ですので割愛します。

デックをテーブルに置いて「覚えたカードはなんでしたか?」と直接訊きます。相手が答えたらテレパシーボックスを開けて「同じ人が引いたカードですので何かしらの共通項、影響を与えているはずです」と述べます。テレパシーボックスに入っていたカードはダイヤの6でした。6枚目を見ると観客のカードが出てきます。

 

テレパシーボックスじゃなくても、スイッチ(すり替え)が出来る用具があれば可能です。

観客が覚えたカードをトップから6枚めにコントロールし、テレパシーボックスですり替えたダイヤの6で位置を示しているという現象です。上手い人はこれをノーギミック、ミスコールで演じます。(最初のカードをスイッチせず、ダイヤの6であろうとなかろうと、どんなカードであろうと「6枚めを見てください」と言う。)

 

テレパシーボックスもヒンバーワレット(自然にスイッチできる奇術用の財布。パスケース。)もない場合はポケットスイッチで充分です。他にもダイヤの6をフォースしてしまうとか、演者が無作為に選んだカードとしてダイヤの6を使うとか、様々なバリエーションがあります。

 

マークドデックを使うとテレパシーボックスもミスコールも不要です。マーキングを読み取り、スペードのクイーンだったなら、観客が覚えたカードを12枚めにコントロールします。間接的な使い方ですのでカード当てといえどもなかなか不思議に見えるものです。

 

ピークしなくてもマインドリーディングに使えるということと、数字を使って枚数目から観客が覚えたカードを出現させること、この2つはマークドデック演技でかなりいなと思います。

 

「どうやってピークしようか」と悩むマジックがあった場合はマークドデックを使うんだと決めてしまって問題ありません。ノーセットアップで『観客が引いたカードと同数字の3枚を出現させる』傑作のマジックがありますが(観客が引いたカードがクラブの4ならハートの4,スペードの4,ダイヤの4を出してみせる)ピーク技法を使います。技術的に自信がなければマークドデックを使うべきです。

 

 

 

最後に4つお話をします。

 

マークドデックは高価ですが、大抵、紙質が良く、かなり長持ちします。損をするとは思えません。

 

マークドデックは思ったほど賢い使い方がありません。自分でこれがベストと思える使い方があればそれこそ最高の使用法だと思います。自分もそれだけはどんな場でも公開していません。

 

マークドデックは自作できます。PlayFair deckでは難しいですが、バイスクルであれば問題なく作成できます。作成方法を知ったらもうマークドデックを購入しなくても良いと思っています。

 

マークドデックを使った手順を考えるときは、レギュラーデックを表向きで持って考えるようにします。インデックスが見えるデックこそマークドデックです。