「壁になりたい」 「壁活」についての一考察 民俗学・文学・心理学の知見から

 

 

50周年NHKで「オスカルになりたかった~」番組が報道した。

わたしはそのタイトルをみて違う!「壁になりたいびっくりマークだと思った。


 だが、「壁になる」とは具体的にどいうことだろう?改めて問うと自分のことなのによく分からない。

誰か説明してないかしらん、とググってみたが先行研究はない。口伝か秘密儀礼の類に属するからかだろうか?オタク文化は秘密が多いからね。

 


しかし、このままではベルばらおたくの「壁になりたい」主張は、歴史の闇に葬られてしまうのではないか?

50周年の報道企画をみてもオタクに寄り添う記事は皆無だった。そこで、世間様にも知ってもらいたい。オタクの声を残そうというのがこのレポの試みである


そこで、改めて問い直してみようと思う。

壁になる=壁活とはなにか?推しの幸せを見守るとは?

壁になることの意義を以下の3つの分野から考察し、推し活の豊潤さを世間様に伝えられたらと考える。

イエローハート

1民俗学の見地から:壁になるとはどのような意味をもつのか。文化的なポジション・心境について。

2文学の見地から:壁になるとはどのような心持ちで臨むべきか。オタク起源川端康成から学ぶ

3心理学の見地から:楽しく壁ライフを楽しむ心掛け マインドワンダリングを楽しむ方法について

イエローハート




1 民俗学の見地から

 

「壁になる」ということはどういうことか?民俗学から考えてみる。

ちょうど動画を聞いていたらゆる民俗学ラジオ『忌み言葉は「壁になりたいオタクの心理」』という番組を見つけましたので紹介するね。

① 壁になりたいオタクの心理=それは禁忌であるキラキラ


禁忌とは
禁忌には神聖なものをけがしてはならないという「畏れ」邪悪なものにけがされてはならないという「恐れ」がある。つまり、能動的積極的な「おそれ」と受動的消極的な「おそれ」とがある。(『日本の忌み言葉』楳垣実←図書館になく未読)


これをオタクの心理「壁」に当てはめてみると・・・

神聖な目の前の神聖な絡みを汚したくない「畏れ」とこの素敵な空間から現実に戻されたくない「恐れ」が同居した状態。

オタクは神聖な場所=推しの尊い行為をいつまでも眺めていたい。しかし現実に戻らなければならないジレンマがせめぎ合っている。イラストでイメージしてみるね。オタクの緊張した心理状態が分かってもらえるかな?
参考 ゆる民俗学ラジオ『忌み言葉は「壁になりたいオタクの心理」』https://m.voutube.com
猫しっぽ猫からだ猫あたま


壁になったオタクは妖怪であるUMAくん

イラストを描いていて気付いたんだけど。。。。壁とは現実と聖なる空間との「境界」なのでは?
境界とは?

それは、空間と空間をつなぐ接点であり、どちらにも属するあいまいな場所のこと。つまり、「両義性」を備えてた所で、例えば「橋」「トンネル」「坂」「峠」「井戸」「水辺」等があげられるかな。
境界は「この世」と「異界」が重なる場と考えられていたから、ここでヒト(この世の住人)と霊や妖怪(異界の住人)が出会うんだよ。(幽霊→トンネル 河童→水辺等)
村お地蔵さんや道祖神が境(里と異界の境界)にあるじゃん。あれって、異界からの侵入者を防ぐための装置なの。さあ、図をみてみて。壁とはまさに聖なる空間と現実との境界であり、 そして境界に現れるのは妖怪。

つまり・・・「壁になる」オタクは妖怪の一種なんだね。

 

 

                          おばけくん宇宙人くんバイキンくんUMAくん恐竜くん

 

 

2 文学の見地から

 

ノーベル文学賞者にしてオタクの祖である川端康成

その壁作品『むすめこころ』から壁の心について学んでいこうと思う

 1936年(昭和11年)、雑誌『雄弁』8月号(第27巻第8号)に掲載。1937年(昭和12年)7月20日に竹村書房より単行本刊行。

 

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内容(ネタバレ含む)ラブラブ
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少女・咲子には大好きな推しが二人いた。

甘えたような愛情がほのぼのと湧いてくる親友静子。咲子と親しく付き合っている親戚の男友達・時田武。

ただね、この武と咲子は、周囲からは恋人と思われいるの。武も咲子をすごく気にいって、卒業したら武は咲子と結婚たいと思っている。

なのにね~咲子さん自分の恋愛より推しの恋愛を優先しようと奮闘するんだよ。
推しの二人(静子と武)を、「ふと私の心の世界に置いてみる。二人はビックリするほどよく似合う。その日から私の願いはあなたと武さんに近づけたい」

「あなたを幸せにしてあげたいという想いだけが私を幸せにする。」

「親心。本当に親心である。」
ああ、これってオタク(腐女子)の推し活マインドだよね~

静子と武の共通の知り合いが自分以外にいるとしると激しい嫉妬をする。二人を繋げるストーリーが自分以外でも成立してしまう。それが許せない!

これってもう、同担拒否じゃん。びっくり

川端先生、どこまで腐女子の性癖を御存知なの?ルンルン

武の卒業が近づいたとき、咲子は武にプロポーズされる。が咲子は拒絶する。

だって、咲子は、自分の幸せより推しの幸せをも守りたいのだ。咲子は、武が静子と結婚することを強く望む。

武は二人の事を同じくらい好きだったらしく、やがて咲子の思惑通り静子と結婚する。

夢がかなった咲子。結婚式のお客は私だけにしてほしいのに、こんな遠くの席・・・。

推し活に邪魔者が入るのをとことん嫌う咲子だった。

結婚して、いったんは推しと離れ離れになったけど、神様のおかげかな。武の仕事の都合で推しは咲子のいる東京へやってきた。そして三人は再開。咲子は二人の幸せを自らの幸せと思いつつ、寂しさを感じる。

そんな咲子に静子は言う。

「咲子さんも私の家へいらっしゃいよ。来てほしいのよ、二人とも。三人で暮らしたいわ」

咲子は推しに壁になることを公認されたのである。スター
(これが戦前の少女小説!? タイトルは「むすめこころ」「おしのこころ」ライトノベルにあってもおかしくない。迷作!)
 

猫しっぽ猫からだ猫あたま



咲子さんの言葉らから壁になるとは、その心とは・・。

「親心」キラキラキラキラ

「母親の愛情がどんなにしあわせであるか」ハートハート
そうか~壁になるってことは親心・母性なんだね音符音符

 

 

 

 

3 心理学の見地から


人ってね。案外真剣に生きていないんだね。一日の50パーセントはボーとしてるんだて。その状態をマインドワンダリングというそうな。
壁になるということはマインドワンダリングするということ

目の前の現実ではなく妄想にふけっている。そう、意識が異世界に行っているのね。

 

でもね、人によってはマインドワンダリング中に変えられない過去未来他人のことについてあれやこれやと考えを巡らせて脳が疲れてしまって鬱になることもあるの。(マインドワンダリングと鬱の関係には研究結果もでています。)

壁になる行為(マインドワンダリング)が幸せモードを下げるってデータがあるのって、ちょっと怖いね。

 

それにマインドワンダリング=目の前の事に集中していないわけだから、ミスや事故の原因にもなりかねないし、マインドワンダリングの没頭は危険よねえ。

 

そのせいかな、心の健康のためにマインドワンダリングしないよう「今」に意識を向けようというマインドフルネスが注目を集めてる。 


壁活動してだいじょうぶかなあ。びっくり

マインドワンダリングやばいじゃん。ガーン

でも推しの幸せは見守りたいなあ。ショボーン

ちょっと心配になるよね~


そこで、楽しく壁ライフ(マインドワンダリング)を充足させるにはどのような心掛けが必要なのか検討してみることにしました。



①壁になって見守っている内容(妄想)を現実とは紐づけしない。批判的な視線で壁になった自分の体験を評価しない。

「こんなバカなことをして」などと考えてはいけません。

どう思われてるとか周囲の目も無視。

→自分と妄想を結び付けると幸せマインドは下げるんです。

聖なる存在の幸せを堪能するんだから、自分は傍観者に徹しましょう。

妄想の中に自分は存在しないも同然。尊い推しの絡みに集中!集中!

バカな自分の行為は、優しく肯定?してあげてね

 


②オタク情報の収集を余念なく行う事!

マインドワンダリングは頭の中タスクが開いた状態。多様な情報が交差しているので、グッとなアイデアが浮かんでくる可能性大 だから、新しいシチュエーションを推しを絡めて
ネタが同じでは飽きてしまうので、萌を充足させるためには情報が必要となってくる。

ベルオタクの例を挙げるなら、妄想を充足させるため歴史を学ぶとか ファッションを調べるとか・・・

おそらく他のジャンルの腐女子も推しのためハードル高めの勉強しているでしょう。

推しのリアル生活を妄想するには質の良い情報が必要ですからね。

ネタがあってこそ、マインドワンダリングでクリエイティブ?な妄想(推しの幸せ物語)が生れてくる。

妄想って努力とか蓄積が大切なの。

 


さあ、うまくマインドワンダリングを活用して壁活を楽しみよう。

 

 

 

まとめ


カベになるとは、民俗学で「聖なる世界」「現実」境界に立つこと。

「畏れ」と「恐れ」禁忌にふれる場所であり、そこに行き来するオタクは妖怪と捉えられる。
川端康成の壁になった女学生の言動から、壁活は「親の心」「母の気持ち」無償の愛であることが分かった。
心理学から、壁活で自己の存在を消し、推しの絡みに集中していたことで、幸せ観を下げるマインドワンダリングでも心を病むことなく安心して壁活を楽しんでいたことが分かった。
マインドワンダリングはクリエイティブな発想が生まれやすいという環境であることから、壁活ではマンネリ化することなく様々な妄想が生れている可能性をみた。

以上のことから「壁になりたい」マインドは、異世界と現実の間で推し活を行う。

現実世界で奮闘する「オスカルになりたい」マインドとは大きく異なっているといえよう。


とはいえ、今回のレポで、謀らすしも民俗学の見地からオタクが妖怪であることが判明してしまった。

世間様にオタクマインドを知ってもらいたいという目的でレポしたけど、今はもう・・

スルーしてもらいたい気持ち。

ほっといてちょうだい。

はい、無視でいいっす。






次回は少女小説とベルばらの読者投稿欄からみるSの世界についてレポしたいと思います。

また、資料が集まれば、ベルばらとコラボから考える昭和・平成・令和をレポしたいです。

ニッチなレポですいません。

 

 



(心理学については、理解不足が否めないので、心理療法士の義妹に会った時に質問をしてみるつもり。関連する論文等を探して読んだけど結論に差異があるし、実験のデータは素人には読み切れませんでした。わかったことがあったら、この記事は訂正しておきます。)