なかなか引かない鎖骨の腫れ


既に精密検査も済ませてあって

傷病名は「胸鎖関節炎」


おじいちゃんおばあちゃんの膝に水が溜まるのと同じ現象と説明され


ついに 

おばちゃんから

おばあちゃんの域に達したらしいと


少しがっかりしたような気分で

そのうち治るだろうと思っていた


なかなか引かない腫れ


根本的な原因の追求と治療法を見つけるために

不思議な力を持つドクターの診察を受けるため

朝から電車に乗り 

都会の小さな医院に行きました


町の外れの図書館のような待合室


4列ある長椅子は

順番を待つ人たちでとうに埋め尽くされ

座る場所もなくなっていて


診察券を渡したあと

書棚の前にしゃがみ込んで

背表紙を指でなぞりながら

懐かしい本を見つけました

夏の庭

夏の雨上がり
むせかえるような草いきれ

小さな待合室で夢中になって読みました

最初に出会ったのは
テレビの画面越しに観た映画

それから本を買い
やっぱり今日と同じく夢中になって読んだ

読みながら
わたしが男の子ではなかったことを恨めしく思った
男の子だけが味わう夏の庭を
わたしも経験したかったと
地団駄踏むような気持ちになったこと

待合室の片隅で
そんなことを思い出しました







どうしてだか、わたしは幼い頃から裸足が大好きだった

石ころ一つにも温度があって
硬さも違っていた

太陽にジリジリと灼かれて
いまにも弾けんばかりの熱い石ころを
足の指で転がして遊んだ

土それぞれも柔らかさが違っていた

肌に纏わりつく土
一切を拒むかのようにサラサラと皮膚の表面を滑り落ちる砂

足の指で土を掻いて穴を掘り
足を埋めて遊んだ
水を含むと表情が変わる地面

わたしの足は大地に抱かれて育まれた

どの土も石も愛おしくて
何かしら懐かしい匂いがしていた

土に生える木はその葉を揺らし
風の唄を聴かせてくれた

いま
アスファルトに覆われた
その下に
わたしの愛した地面が眠る






クリエイターズの友人が描いてくれました。
これ、実は、まだ未完成です。

薔薇の園で寝る猫。

パリのアパルトマンか病院か?のように真っ白けな部屋が、一気に動きのある部屋となりました。


1箇所に集めた小さな観葉植物たちがこんもりとささやかな森を作ってくれてます。

穏やかな空気の中で、ヨガをしたりお料理をしたり。
仕事の合間の、やさしいひと時でした。