先日お休みをいただいて道内の様々なクラフト蒸溜所を訪問して参りましたので、そのご報告として先ずは【馬追蒸溜所】の訪問レポートです。

 

馬追蒸溜所(MAOI株式会社)は、株式会社AZEを持ち株会社とするグループの一員で札幌の紅櫻蒸溜所とは兄弟蒸溜所となります。

北海道の長沼町で元々は「北海道マオイ自由の丘ワイナリー」の名称でワイナリーとして稼働していた施設でしたが、蒸留設備を導入しブランデーの他に本年よりモルトウイスキーも作り始め、名称も馬追蒸溜所へ改められました。

先日最初のニューメイクが限定で発売されたばかりの、ウイスキー蒸溜所としては出来立てホヤホヤの施設です。

設備は連続式蒸留器と単式蒸留器(コラム付きハイブリッド式/フォーサイス製)各一基があり、モルトウイスキーは単式蒸留器にて製造されています。

単式蒸留器が一基なので、初留・再留どちらも同じスチルを使用しています。

↓単式蒸留器(左側の円筒がコラム、奥の短い円筒が冷却器)

↓連続式蒸留器(真中より左側の奥にある2棟、右側は単式のコラム)

発酵槽(マッシュタン)は現代的な撹拌機が付いておらず、手作業で麦汁を攪拌する方式となっていましたが、将来的には安定した麦汁を得る為セミロイタータンなどの機械式を導入したいとも話されていました。(秩父の第一蒸溜所も手作業で攪拌していましたね)

周りに断熱材を巻いているのは麦汁の温度低下を抑えるためでしょうか?

発酵槽(ウオッシュバック)は二基で、最近の傾向なのか泡切りは付いていませんでした。

原料の大麦麦芽は北海道産(りょうふう品種)に加え一部輸入品を使用していますが、将来的にはオール北海道産も視野に入れており蒸溜所近隣に大麦用の農地も確保済との事です。

道産大麦の製麦を委託している業者がピーテッド麦芽を造れないため現在はノンピート麦芽のみ使用していますが、将来的にはピーテッド麦芽も仕込みたい様です。

1バッチ仕込は200kgと非常に小さいサイズで、酵母は輸入品です。

モルトウイスキーを造るのは初めてな上、設備も充実している訳ではないので現在は試行錯誤しながら作り方を模索している段階の様で、グリストの挽き分け比率調整が難しかったり、マッシュの糖度やウォッシュのアルコール度数を上げるのもまだまだ改良の余地があるとおっしゃってました。

 

熟成は、元々ワイナリーなのでワイン樽も考えているようですが、個人的に酒質の基本を見極める意味で先ずは新樽やバーボン樽をお勧めしてきました。

今回蒸溜所のご厚意により特別にファーストリリースのニューメイクを試飲させていただきましたが、試行錯誤されている状況の割に雑味が無く綺麗な味の印象でした。

ただ、スッキリしている訳でもなく味のコンテンツはしっかり持っており、モルティな味が思ったより少ない代わりにフルーティな味を既に持っていました。

ミーティや溶剤系の飲みづらさは無く、オフフレーバーも感じませんでした。

製造担当者はもっと改良の余地があるとおっしゃってましたので、ここからスタートで更に改良されると考えると将来が楽しみでなりません。

素人の戯言になりますが、長期熟成を考えるともう少しカットの幅を広げても良いのではないかと感じたくらいです。

 

現在コーン主体のグレーンウイスキー製造プロジェクトが進んでおり、馬追蒸溜所も参加していますが今のところはまだ製造に至っていない状況で、ハンマーミルやクッカーなどのグレーン(コーン)用の設備もまだ導入されていませんでした。

当蒸溜所は連続式蒸留器を持っていますが、そちらはブランデー用として使用しグレーンウイスキーも単式蒸留器で作る方向で考えている様です。

(アイリッシュのポットスチルウイスキーの考え方ですね)

AZEグループでは将来、千歳に蒸溜所を建設する事も公表されていますが、その際は千歳でモルトウイスキー、馬追でグレーンウイスキーを作る事も検討している様です。

 

ニューメイクの味や作り手の想いをうかがい、将来がすごく楽しみな蒸溜所だと感じました。

また、同グループではワイナリー・ジン蒸溜所・ウイスキー蒸溜所・ビール醸造所を持つ為、ベルモットの製造も始めたりとグループ内のシナジー効果を活用し様々な製品をリリースされており、そちらの方も楽しみです。(これに関しては別記事・紅櫻蒸溜所編で触れます)

 

※2022/11/13追記

お店にはブログに載せきれなかった写真をアルバムにしてありますので、そちらの方もご覧下さい

 

Whisky Bar 髙森
住所:北海道釧路市末広町三丁目8-1 末広クリスタルビル6階

電話:0154-65-9958

ホームページURL: https://bar-takamori.amebaownd.com/
営業時間:18:00~2:00(ラストオーダー 1:30)
定休日:日曜日・年末年始