2月12日に日本洋酒酒造組合より、『ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準』が公表され、ジャパニーズウイスキーの定義が明確化されました。
従来日本では酒税法によるウイスキーの定義しかなかったため、様々な作り方の商品がジャパニーズウイスキーとして販売されていました。
そんな中でも、約100年前に竹鶴政孝氏がスコットランドからウイスキーの作り方を持ち帰った歴史的背景から、その精神を重んじ多くのメーカー・蒸溜所が慣例的にスコッチウイスキーの規定にならい真摯にウイスキーを造ってこられた結果、今日のジャパニーズウイスキーへの高い評価を得る事となりました。
ただ、一部ではスコッチ原酒のみをブレンドした製品や未熟成のスピリッツをブレンドした物、焼酎を樽熟成した物をジャパニーズウイスキーとして海外へ輸出するなど、ジャパニーズウイスキーのブランドイメージを毀損する物も少なからずありました。
今後は明確な規定の元で造られた物だけがジャパニーズウイスキーとして世に出る為、上記の様なウイスキーと呼び難い物は淘汰されていく筈です。
今回の定義はこれまでの慣例であるスコッチウイスキーの規定をベースに、一部で更に厳しい規定を盛り込んだ内容となっております。
詳しい規定は日本洋酒酒造組合のリリースをご覧願います。 →リンク
規定を要約すると以下の通りとなります。
●適用範囲
本基準は、事業者が日本国内において販売するウイスキー及び日本から国外向けに販売するウイスキーについて適用する。
→本規定は日本洋酒酒造組合に加盟する全事業者が国内外問わず販売する製品に適用されます。
●原料
原材料は、麦芽、穀類、日本国内で採水された水に限ること。
なお、麦芽は必ず使用しなければならない。
→他地域の規定では「自国内で採水された水」との規定は無いので、ジャパニーズウイスキーの定義はより厳しい規定となっております。
麦芽を必ず使用しなければならないというのは、糖化を麦芽由来の酵素により行い酵母発酵が必須という事であり、焼酎で用いられる麴による発酵は認められません。
●製法
糖化、発酵、蒸留は、日本国内の蒸留所で行うこと。
蒸留の際の留出時のアルコール分は 95 度未満とする。
内容量 700 リットル以下の木製樽に詰め、当該詰めた日の翌日から起算して 3 年以上日本国内において貯蔵すること。
日本国内において容器詰めし、充填時のアルコール分は 40 度以上であること。
色調の微調整のためのカラメルの使用を認める。
→おおむねスコッチウイスキーの定義に準じておりますが、「詰めた日の翌日から起算して3年以上」と細かく規定しているのは日本人らしいところです。
●表示について
事業者は、上記に定める製法品質の要件に該当しないウイスキーについて、次の各号に定める表示をしてはならない。ただし、上記に定める製法品質の要件に該当しないことを明らかにする措置をしたときは、この限りでない。
一 日本を想起させる人名
二 日本国内の都市名、地域名、名勝地名、山岳名、河川名などの地名
三 日本国の国旗及び元号
四 前各号に定めるほか不当に第 5 条に定める製法品質の要件に該当するかのように誤認させるおそれのある表示
→ジャパニーズウイスキーを連想させる名称は上記の製法を守った製品にのみ許されるが、例外規定として上記の製法品質の要件に該当しない旨を明らかにする場合はその限りではない。(ただしジャパニーズウイスキーとの表記はNG)
今回の規定は2021年4月1日より施行されますが、それまでに販売しており規定を外れる製品に関しては3年間の猶予期間があり、2024年3月31日までは販売可能となります。
国内各メーカー・蒸溜所の製品が一部この規定から外れるのですが、今後どのように対応するのか推移を見守りたいと思います。
例:度数40%未満の物、スコッチ等の外国産原酒を混合している物、等
今回の規定では外国産の原酒の混合が認められないので、クラフト蒸溜所が輸入したグレーン原酒を混合してリリースしているブレンデッドウイスキーはジャパニーズウイスキーと名乗れなくなります。
現状国内では大手メーカー(サントリー・ニッカ・キリン・本坊酒造)と、ごく一部のクラフト蒸溜所でのみグレーンウイスキーを製造しており、その他のクラフト蒸溜所はグレーンウイスキー(原酒)を主にスコットランドからの輸入に頼らざるを得ない状況です。
これらのクラフト蒸溜所が今後もグレーンウイスキーを用いたブレンデッドウイスキーをリリースする場合、どの様にグレーンウイスキーを調達するのか、または自社製造を行うのか、注視していきたいと思います。
※通常グレーンウイスキーは大規模な連続式蒸留器を用いて大量生産する事が多いので、設備投資や24時間稼働の運用など、クラフト蒸溜所には非常にハードルが高い状況です。
ただ、アイリッシュウイスキーのポットスチルウイスキーは単式蒸留器(ポットスチル)を用いたグレーンウイスキーであり、ジンなども作れるコンパクトなハイブリッド式蒸留器を製造しているスチルメーカーもあります。
今回の規定が最終となるのか、今後更に改定されるのかは判りませんが、まずは世界五大ウイスキーの名に恥じないジャパニーズウイスキーがそのブランドをより強固にする(まがい物を排除する)第一歩となるのは間違いありません。
今後の各社の対応も含め、ジャパニーズウイスキーの今後に期待していきたいと思います。
Whisky Bar 髙森
住所:北海道釧路市末広町三丁目8-1 末広クリスタルビル6階
電話:0154-65-9958
ホームページURL: https://bar-takamori.amebaownd.com/
営業時間:19:00~2:00(1:30ラストオーダー)
定休日:日曜日・年末年始
