大切な事を教えてくれた黒猫 | BAR white L(ホワイトエル)のブログ

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天神橋最南端のBARです。
「身近で温かいオーセンティック」
をコンセプトに下町のbar文化を発信していく所存です。
心地良く背筋を伸ばし、限りなく心に寄り添う。
white Lはそんなお店でありたい。

BAR white L
ほぼ無休 18時〜4時
大阪市北区天神橋1-10-9 2F

皆様こんばんは   お疲れ様です




手足の先がマグネットになっていて

壁に張り付く黒猫のぬいぐるみ

小学生の頃

神戸の某ショッピングモール

その中にある「ド○グリ共和国」で出会い

即買いしてもらった


20年の付き合い

今でも私の大事な話し相手

家族で唯一の猫派   カズアキです




昔から猫が大好きでした

特に黒猫

人の言葉を話せると尚良し




5年前、

ひょんな事からお世話になる事になった居酒屋さん

初めてお店にお邪魔すると

そこには一匹の猫がいた

「なんやコイツ。この店に何か用か?」と

今にも噛み付かんばかりの表情で

じっと此方を見つめている

とても美人な黒猫

そこの看板娘「ムギ」

尻尾は不恰好に短く

決して懐くことのない、

良い香りのする綺麗好き


人に抱えられる事が何より嫌いで

ニ゛ャ ーーー

と爪をたてて椅子にしがみつくほど

主人であるママさんでさえ、この硬直様


猫好きな私は真っ先に近づいたが

勿論、触れる事すら出来ない




やっと触らせてくれるようになったのは

ひと月ほど通い詰めた頃のこと


相変わらず警戒心を感じる表情


私からは近づかない

彼女から来てくれるのを静かに待つ


ママさんとの会話が盛り上がり

私の意識が離れた事を確認したのか

お尻を此方に向けた状態で

気づけば スッ と隣に来ていた

顔はあっち向き


ママさん曰く、

ぽんぽんとリズム良く

お尻を叩かれるのが好きなのだとか



「ごめんねえ、お尻なんか向けて」



誠意を感じられないママさんの謝罪の言葉に

「いえ」

とだけ答えてそっと手を触れてみる


軽く撫でた後

おそるおそる ぽん、、ぽん、、

と叩いてみた


嫌なのか?嫌じゃないのか?

特に反応は無い

「ムギちゃん、せっかく来てくれたんやから。あんた背中向けんと顔見せなさい。」



確かに

無礼なやつやな

愛想もくそもあらへんがな



でも不思議と嫌な気はしない

初めて見る彼女の背中

その気になれば抱きかかえられる程に無防備な後ろ姿がどこか満足気で嬉しかった



それから暫く通い

漸く認めてくれたのか、

入店時はそっぽ向いたまま

それが嬉しかった

私から近づいても逃げなくなっていた




一年も顔を合わせれば

お互いルーティンのようなものができあがる


隣に来た彼女の背中に触れると

早速お尻を向けてくる

私はそれを無視し

奥に向く喉と眉間を優しく撫でる


すると一度此方を向き

不満そうな顔を見せてくれる

相変わらずの美人面


それから顔を くしゃくしゃ とするのが

さあ、お尻叩くぞの合図

お尻を叩かれながら顔を擦りつけるのが

彼女の至福のひとときなのだそう


それを見るのが私の至福





猫はキツい香りが苦手なんよ〜

なんて聞いた事があるが、

喫煙者の私にも寄ってきてくれる「ムギ」


決して懐いている訳では無く

彼女にとっては都合の良いお客さん

欲しいときにだけ隣に座り

要らないときは寄りもしない


ただお尻を叩き、叩かれる関係

お手本のような「猫対応」

私には充分な癒し




目的の無い酒は飲まないが

その日の終着点でもあるこのお店では

そんな酒を飲みに行くことも多々ある


もう飲まれへん

でもまだ帰りたくない

「時間」のために「酒」を使う


酒の減らないグラスを片手に

その傍らで彼女のお尻を

ぽん、ぽん と叩く


そこには「ムギに会いに行く」

という明確な目的があった

ママさんがいて、

いつもの常連さんがいて、

彼女がいる







享年20歳


長い間この店と、ママさんと、常連さんと

私の心を遠くから支えてくれた「ムギ」の存在


アホな話でバカ騒ぎしたときも

ちょっと真面目な仕事の話をしたときも

ベロベロになってたどり着き、

カウンターに覆い被さり爆睡したときも


いつ何時も「ムギ」はそっと見守ってくれていた



今ある事は永遠じゃない

当たり前な事なんてない

でもそれに触れている間は

そんな簡単な事を忘れてしまう


今になり、改めてその事に気づけた

彼女との出会いと別れが「大事なもの」を教えてくれた

そんな気がする







出会えた事に感謝


そしてこの別れに感謝


彼女の全てに感謝します























とてつもなく美人な猫に捧ぐ


ムギ

出会えて良かった

触れられて良かった

キミの背中に顔をうずめたとき

お日様のような香りがして

とても幸せな気持ちになれました


虹の橋でちゃんと美穂ちゃんを待つんやぞ

それまでのびのびしとき〜


長い間お疲れ様

ありがとう