バンコクからたったの47バーツ(約170円)でカンボジアに行くことを思いつく。


 自宅から歩いて、タイ国鉄の駅へと向かう。


 エカマイ地区からほど近いところにある、クローンタン(คลองตัน)駅から列車番号275の列車に乗車する。



 バンコクの中央駅であるフアランポーン(หัวลำโพง)駅を午前5時55分に出発する電車ではあるのだが、バンコク市内ではあまりにも速度が遅いため、わざわざ始発駅から乗車する必要はないと思う。


 東本線は3等車のみの運行で、インターネットで事前に予約はできないから切符は当日、駅で購入する。
 約5時間をかけて国境の町、アランヤプラテート(อรัญญาประเทศ)へと向かう。
 たったの47バーツ(約170円)である。


 乾季のタイの農村風景を眺めつつ、日本語の文庫本を読みつつ、車内に乗り合わせてくる行商からタイ語でコミニケーションをとりながら飲み物を買い求めお茶を飲みつつ、時には居眠りをしつつ。


 アランヤプラテート駅に到着する。


 しかし、タイとカンボジアの国境の駅はアランヤプラテート駅のさらに1つ先の駅である。
 この駅で降りてはいけない。


 バーンクローンルク(บ้านคลองลึก)駅が国境の駅である。
 さきほど購入した切符はバンコクからアランヤプラテート駅までの47バーツのものだった。本来ならこの駅までの48バーツのものを購入する必要があったが、切符を買う時にこの駅の名前が思いつかず、とっさにアランヤプラテートと言ってしまったのだった。1駅分、1バーツ分の無賃乗車となってしまった。


 案外、たくさんの人が利用していた。カンボジア人が多かったと思う。バンコクやその周辺の出稼ぎ労働者が多そうだ。
 この駅のすぐ裏手が、国境となっている。


 市場のすぐ裏が国境になっている、不思議なところだ。
 歩いて国境を越えていく。
 とにかく、バンコクからたった47バーツでカンボジアへとやってくることができた。東京の地下鉄の初乗運賃で、バンコクからはカンボジアに行けてしまうのだ。