1962年の作品、制作国はイギリス、監督は「戦場に架ける橋」のデヴィッド・リーン
本作はアカデミー賞七冠を取った名作中の名作であり、デヴィッド・リーンの中でも代表作である。コンラッド*の傑作「ノストローモ*1」を完成させていればこれも代表作となったであろうが・・・
個人的に人生で衝撃を受けた映画を5つ上げるなら確実に入ってくるだろう。
しかし、一方で「3回見て2回は半分寝た*2」と言わしめるほど、退屈の代名詞として使われる映画でもある。
無理もない、映画は前半後半とわかれており、完全版ならば合わせて3時間40分の長尺である。しかも暗黒の中で音楽だけ流れる舞台芸術のような演出、永遠と砂丘で砂が流れていく動きに乏しいシーンなど、眠気を誘うには十分である。
しかしそれでも、この映画はやはり今でも名作だと断言できる。
長さも「Uボート完全版」の5時間より短いし、眠気もタルコフスキーの芸術映画「惑星ソラリス」ほどにはもよおさない(擁護にもなっていないが)
スピルバーグも制作に入る前には、今でも必ずこの映画を見ると語っている(暇なのかなんなのか)我らも彼の忍耐にあやかろうではないか
原作はロレンス自身の自叙伝「智恵の七柱*3」
(*1)ジョセフ・コンラッド1857-1924 ロシア治下のポーランド生まれの小説家、五歳にして強烈なポーランド人としての民族意識をもっていたが、
小説は英文で書き続け、1886年にはイギリスに帰化し、「二重人間」(ホモ・ドゥ・プレックス)の烙印を押される。
しかし、その後もフランス文学を取り入れるなど、芸術において達成不可能な「完全」をあくまでプロメテウス的に追い求めた。
自己卑下を繰り返しながらも、英雄的野心を隠せなかった「絶望巨人」(The Cambridge Companion to Joseph Conradによる)
交流があった同世代にはH・Gウェルズ、ジョージ・バーナード・ショーなど(バーナード・ショーとロレンスは家族ぐるみの交友があり、智恵の七柱にも意見を寄せていた)
(*2)1904年コンラッド著の難解な前衛的モダニズム小説、架空の中米国コスタグアナ共和国を舞台に、帝国主義からの革命や独立運動が描かれているが
コスタグアナにある銀山利権により、革命の意義は主人公ノストローモを中心に人道主義革命→自由主義革命→民主主義革命→マルクス主義革命・・・と変容を続けていく
ノストローモは誤訳を含んでいるが、イタリア語で「我々の男」つまり資本主義が生み出した物質利権により汚れ、変わっていく我々を意味している。
デイヴィッド・リーンはこの映画化を企画中に83歳で死去した。
リドリー・スコットはこれから名前を取って、エイリアンで宇宙船を「ノストロモ号」と名付けている。さらにエイリアン2で登場するスラコ号はノストローモに登場する町名である。ジェームズ・キャメロンの粋な返しだ。
(*3)ジョジョの奇妙な冒険のジョセフ・ジョースター
(*4)「箴言」九章冒頭「知恵は自分の家を建て、その七つの柱を立て、獣をほふり、酒を混ぜ合わせて、ふるまいを備え、はしためをつかわして、町の高い所で呼ばわり言われた、『思慮のない者よ、ここに来れ』と・・・」
ロレンスはここでの七つの柱を「カイロ・スミュルナ・コンスタンティノープル・ベイルート・アレッポ・ダマスカス・メディーナ」としている
当時は歴史の教師であった ベトナムの英雄的軍人ヴォー・グエン・ザップが感銘を受けたことは有名。
この本もかなり見識深い書であり、内容まで詳しく紹介したいのだが、そこまでするとこれの書評なのか映画の評論なのか理解不能になるため、あくまで「重要な文献」に留めておく
なお当たり前だが、原作が自伝のため映画の内容及びストーリーは、リーンの色が強いものとなっている。
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