バンド男 大地に立つ!(前編)
「あ、あのさ、君はどんな音楽聴いてるの?」
少年はドキドキしながら彼に聞きました。
すると、彼は・・・
「銀蝿とか…」
「は? な、なに?」
「横浜銀蝿とか・・・」
え?
い、今なんといいました?…
「ヨコハマギンバエ」とおっしゃいましたか?
その瞬間、少年はその場で硬直して固まってしまうのを
必死でこらえていました…
確かに、当時は横浜銀蝿なる和製ロックンロールバンドが
一世風靡していたことはたしかではあるのですが…
うん、おいらも中学の時は流行で聴いていたけどね(^_^;
『なんで、横浜銀蝿なの…
たのむ、レインボー、マイケルシェンカー、
いや、ツェッペリン、ディープパープルでもいい
そう言ってくれ、たのむ、そう言ってくれぇぇー
…ていうか、おまえビジュアル全然ちがうじゃん!』
言葉にならない少年の心の叫びは、本田ヤスアキ似の
イケメンの彼に向かって何度もそう叫んでいました。
あ、ちなみに彼の名前は武田(仮名)君といいます。
…と、その時、彼がこう言いました。
「でも、オレ、高校入ったらクイーンみたいなバンド組みたいと
思ってたんだよね」
は?
クイーンとおっしゃいましたか?
いま、クイーンとおっしゃいましたか?
少年は、彼の肩すかしともいえる言動に戸惑いながらも
その言葉を聞き逃しませんでした。
「どえー!マジで?君クイーン好きなの?」
「ああ、中学ん時は良く聴いてたんだよね。
ジョン・ディーゴンのベースってなにげにカッコイイしね
ロジャーのドラムもイカすじゃんか」
「いいじゃん、いいじゃんクイーンいいじゃん!
クイーンのベースってジョン・ディーゴンっていうんだぁ(笑)
ロジャー・テイラー、オレもすっげー好きだよ。曲もカッコイイ
しね、ボーカルは3オクターブの声域を持つフレディ、それに
独特のギターサウンドのブライアンもいいよねー」
「うんうん、ライブ版のウィー・ウイル・ロック・ユーは最高だよ!」
「そうそう、あのロックンロール調にアレンジされてるヤツでしょ!
あれ、ぜったいバンドでやりたいよねー」
少年は、クイーンつながりで、彼とはロックをやっていけそうだと
勝手に確信しました。
「あ、あのさ、さっそくだけど、今日放課後時間ある?」
「えー?ほんとにさっそくだなぁ、うーん、別に今日はなにも
予定ないけど、どうして?」
「いや、ちょっとさ、見せたい物があるんだけど…」
「なんだよー、いきなりだなぁ。まあでも時間はあるから
別にかまわないよ」
「よかったー!じゃあ放課後に迎えにくるからさ、またね!」
少年は込み上げる嬉しさをなんとか抑えながら教室に
戻りました。
そして、イケメン彼の友人であるクラスメイトに、
「すげー、おまえのお陰だよー、ベース見つかったよ!
一番難しいと思っていたベースが見つかったんだよー
ベースだぜ!ベース!しかもジョン・ディーゴンだってよー」
「そんなにベースってすごいのか?」
「すごいってもんじゃないよ!なんてったってベースだもん。
ある意味バンドの要だぜ、ベースの渋さをわかるヤツ
はなかなかのもんだよ、さっすが高校生は違うよー」
「ふーん、そうなんだぁ…
あ、そういえばアイツ、中学の時はドラムもやってたなぁ」
「マジで?ギターとドラムやってて、さらにベースかぁ
こりゃぁ、期待できそうだぜー、本田ヤスアキ君!」
すると、その友人が
「おまえ、そんなにバンドやりたいのかよ…
バンドってさぁ、そんなに面白いのか?
オレはゲーセンのほうが面白いけどな…」
「ほんっと、めっちゃ面白いって!みんなで曲を一緒に
合わせた時の一体感なんてさー、鳥肌もんだぜ!
ぜったいゲーセンより面白いよ!」
「ふーん、そうなのか…オレは楽器できないしな、
あ、知ってた?うちのクラスの岡本(仮名)いるだろ、
あいつもギターやってるっていってたぜ」
「な、なんですとー?
おい、おい、ちょっとまて、岡本っていったら、
あそこのおっさんズラのヤツだよな」
と、2人はクラスの前のほうの席に座っている岡本君を
まじまじと見ました。
「そうらしいよ、でもあいつ絶対そんな風に見えないよなぁ」
まさに、大正デモクラシー、
じゃなくて、灯台もと暗しー…
…すいません…(^_^;
「マジかよ、ほんとにアイツがぁ?」
どうみても、ギターをやっているようには見えない、
っていうか、高校生にもみえないおじさん顔の岡本君…
『できれば、ジェフ・ベックのような男の渋さを醸し出す
ヤツが良かったんだけどなぁ、まあ、ゲイリー・ムーアだって
かなりのおっさん顔だしな、っていうかおっさんだし…
うーん、その路線もアリかもなぁ…』
と、ムリヤリに納得した少年は、その後の授業も上の空。
さっそく休み時間、少年は恐る恐る、その岡本君に
声をかけました。
「岡本ー、あのさ、君ギターやってるんだって?」
すると、おっさん顔の岡本君は、
「え?なに?なに?なんで?なんで?」
と、少年以上のキョドりモードになった岡本君に
「いや、あのさ、ほら、オレ自己紹介の時にドラムやってるって
いってたでしょ。そんでバンドやりたいと思ってるんだけど、
いま、メンバー探してるんだよね。
なんか岡本がギターやってるって聞いたんだけど、
どんな音楽やってるのかなーと思ってさ」
「え?なに?なに?おれとバンドやるっての?
うーん、おれはハードロックしか聴かないよ。
というか、ツェッペリン大好き人間だし、知ってる?
ツェッペリン、知ってる?」
「えー、ツェッペリン好きなんだー、すげえ!
オレもジョン・ボーナムはすごいドラマーだと思ってるんだ」
「え?え?ボンゾ知ってるの?なかなかやるね、うん。
おれは彼が死んだ時にはね、一人でモビーディック聴きながら
しみじみ酒を飲んだもんだよ、うん…」
『へ?おい、おまえ、ほんとにおっさんか!』
と、少年はツッこみたくなりましたが、その後すかさず岡本君が
「おれさ、ハンパなヤツとはバンドやりたくないんだよね。
それなりにちゃんと出来るヤツじゃないとね、うん。
君さ、ドラムって上手いの?
あんまり初心者と一緒にやりたくはないんだよねぇ。
おれは小学生の時からずっとギター弾いてるからねぇ…」
『なにー?なんだその自信ありげな感じはー!
っていうか、なんかムカつくぞー、その態度!
なんだか、ほんとにおっさんの説教みたいだぞー』
そして、その時から少年は岡本君を密かに「おっさん」と
呼ぶようになります。
しかしながら、ベースとギターをようやく見つけた少年は、
なんとかこれで最低限のバンドはできるぞという希望が
みえてきました。
「あのさ、今度ぜひオレにギター聴かせてよ、
きっとジミー・ペイジみたいに弾けるんでしょ!
すっげー聴きたいなー君のギター」
すると、岡本君はまんざらでもない顔をして、
「うーん、まあ、機会があったらねぇ、そうだ、今度ギター
持ってきてもいいけどねぇ」
なんだよ、ほんとは聴かせたいんじゃないか(笑)
「おー、ぜひぜひ持ってきて聴かせてよ。
あ、そうだ、楽器持ってくる時は気をつけないと
この学校、没収されるかも知れないから気をつけてね
オレ、いっかいスネア取られそうになったから」
「じゃあ、今度おれのレスポールもってくるよ」
「マジで?レスポール持ってるの!
すげえ、ほんとにジミー・ペイジじゃん」
「ふっふっふ…わかってるね、君、うん。
最近入学祝いで買ってもらったんだけどね。
けっこう高かったけど」
「え?それって、もしかしてギブソンとか?」
「残念!フェンダーだけどね。さすがにギブソンは…」
2人はすっかりギター話で盛り上がっていました。
『おおー、なんだかいきなり流れがやってきたよー。
ギターはちょっと気難しそうなおっさんだけど、あれだけ
自信があるくらいだから、きっとかなりの使い手に違いない。
しかも、レスポール持ってるらしいし。
なんとか説得して、バンドに入れてみせるぞ。
よーし、先ずはベースの本田ヤスアキ(武田)君からだ』
そして放課後、少年は約束通り、ベースの武田君を迎えに
D組まで行きました。
「やあ、お待たせ、そんじゃ行きますか」
「へ?行くってどこへ?」
「まあ、ちょっとオレについてきてよ」
少年にはバンド結成のための、ある秘策があるのでした。
(つづく…)
バンド男への道…5
先日のショックから抜け出せないまま、少年は毎日
足取りの重さを感じながら、学校に通っていました。
教室では、すでにクラスでの友人ができてはいたものの、
彼らは楽器をやっているような様子はなく、少年のバンド
メンバー探しは振り出しにもどってしまいました。
友人もでき、クラスのみんなともうち解けて仲良くなり、
それなりに楽しい高校生活が過ぎていきました。
しかし、少年の心の中には、ポッカリと穴があいたようで
何とも言えない不足感と不完全燃焼感がありました。
「はぁー、バンドやりてぇなー。ドラムなんてさ、
一人でやっていたって何にも面白くないよ。
ドラムはバンドがあってはじめて、その存在が
生きるもんだからなぁ…」
そんなある日、校内の廊下を歩いていると、後ろから元気の
いい声で、
「おおー、神山!ちゃんと勉強がんばっとるかぁー」
と、先日の関西弁教師、戸塚(仮名)先生が現れました。
「ああ、どうも」
少年は元気なく応えました。
「おまえ、クラブ活動はどこに入ったんや?」
「いや、まだクラブには入ってないです…」
「なんや、おまえ。おまえみたいにエネルギーがありあまっとる
ヤツは、どっか運動部にでもはいればいいんや。
ワシが顧問しておる陸上部にでも来るか、どうや?
バンドみたいな不健康なもんに夢中になるんやったら、
若者らしく運動して汗をかいたらいいんや」
(くっそー、ドラムだってけっこうな運動量なんだぞー。
まったく、イメージだけで不健康とか言われても
困るんだよなぁ…)
と、少年は思いつつも、あまり波風を立てるといけないので、
「オレ、運動部に入る気はないんです。せっかくですけど…」
そう言って、その場をやり過ごしました。
その高校は、校則によって生徒は何らかのクラブに所属しなくては
いけない事になっていました。
所属クラブを決める期間は1ヶ月間あり、その間に自分の入る
クラブを決めなくてはなりませんでした。
「あーあ、なんだか窮屈なところだよなぁ、でもどうすんだよ、
なにかクラブに入らなきゃいけないなんて…
うーん、ドラムが叩けるようなクラブないのかなぁ…」
と、その時少年はふと思い出しました。
「そういえば、新入生歓迎会の時に、ブラスバンド部が演奏を
していたっけ、ドラムはあんまり上手くない先輩がやっていたな。
そうだ、ブラバンに入れば、堂々とドラムが叩けるし、放課後も
学校で練習ができるじゃんか!」
少年は、さっそくその日の放課後に、ブラスバンド部の見学に
向かいました。
何人かの見学生が来ているなか、少年はソワソワしながら
落ち着かない様子で、ブラバンの演奏を聴いていました。
その高校のブラスバンド部は出来てからの歴史も浅く、
少年から見ても全体的にあまり上手とは言えない状態でした。
ドラムをやっている先輩も、リズムキープがなかなかできず、
叩き方も撫でるような叩き方で、パワーが感じられません。
『おおっ、これはオレにもチャンスがあるかも知れないぞ』
少年は中学2年からはじめたドラムの腕にちょっとは自信が
あったので、ブラバンのドラムの先輩よりも自分の方が上手い
という確信がありました。
そこで、演奏中にもかかわらず、少年はブラバンの顧問の
先生のところに行き、
「すいません!ちょっとボクにドラムを叩かせてもらっても
いいですか?」
と、訪ねました。
すると、顧問の先生は、
「ん、なに?見学の1年生か?ドラム叩けるのか、君?」
「はい、叩けます!」
自信満々で少年は答えました。
しかし…
「うーん、今日は見学だけにしておいてくれ、新入生の楽器選別は
後々やっていくから、入部希望ならそこのノートに名前とクラスを
書いておいて!」
『なにー?』
すっかり拍子抜けした少年は、上級生に言われるまま入部希望者
ノートに記入を求められ、渡されたペンを握って、ノートに名前を
書こうとしました。
その時、突然少年の心に、ある疑問が湧いてきたのです。
『おい、本当にそれでいいのか?
おまえがやりたかったのは、ブラバンでドラムを叩くことか?
おまえはコージー・パウエルのようなロックドラマーに
なるんじゃなかったのか。
おまえはロックバンドを組むんじゃなかったのか?』
ペンを握ったまま、しばらくその場で考え込む少年…
「君、どうしたの?」
という、ブラバンの先輩の声に、少年はハッとします。
「あ、あの、いいです。オレやっぱりやめます、すいません!」
そう言うと、少年はその場を走るように立ち去りました。
「ううっ、くっそー、オレはなんて意志が弱いんだ…
自分が本当にやりたいことをやらないで、
もう少しで妥協するところだった。
そうだよ、オレが本当にやりたいのは、
ブラスバンドじゃなく、ロックバンドのドラムなんだ!」
少年は安易に流れようとした自分自身に対する怒りと、
しかしながら、どう考えてもロックバンドを組めるような
状況ではないこの厳しい現状に、だれもいない放課後
の廊下で、ひとり悔し涙を流すのでした…
自転車で高校へ通っていた少年は、春の暖かい夕暮れの
歩道で自転車を押しながら、なにやらブツブツと祈るような
言葉を唱えながら歩いていました。
『くぅぅー、神様!ロックの神様!
オレにロックバンドをやらせてください!
そして、そのバンドでステージへ上がらせて下さい!』
少年の悲痛な叫びは、周りの雑踏の中に埋もれて
通りを走る車のうるさい騒音にかき消されていきました…
その晩、少年は家に帰るなり、スティックと練習用のパット
を持ち出し、近くの公園で遅くなるまで練習をしました。
『きっと、いつかチャンスがくるさ。がんばっていれば、
きっと神様がオレにバンドをやらせてくれるさ。
それまでは腕を磨いておくんだ。
ぜったい周りのヤツには負けないほど、
ドラムを上手くなっておくんだ』
少年のひたむきな願いは、ロックの神様に通じるのでしょうか…
翌日、少年はお昼ご飯を学食で友人たちと食べた後、
しゃべりながら1年生の教室が並ぶ廊下を歩いていました。
ちょうどD組の前を通りかかった時、D組の教室から髪の長い
かなりイケメンの生徒が、こちらに近づいてきました。
「よう!」
彼が声をかけたのは、少年の隣にいるクラスメイトでした。
「今日、どうする?」
「いや、今日部活あるから、先帰っていいよ…」
どうやら、彼らは同じ中学出身の友達のようで、
帰りに一緒に帰る相談をしているようです。
『こいつ、けっこうカッコイイじゃん、
本田ヤスアキにそっくりじゃんかよー』
(本田ヤスアキ(字忘れた)を知ってる人っていないかも…
当時の金八先生シリーズの、2年B組仙八先生
という番組にシブガキ隊や三田寛子らと共演していた、
謎の美少年役の人です。
その後、原田知世主演のテレビドラマ「ねらわれた
学園」で、これまた京極少年という謎の超能力者
の役でした。ちなみに彼自身もミュージシャンだった。
ちなみにボクは原田知世ファンだった(笑) )
そんなことを思いながら、少年は隣で彼らの話を聞いていました。
すると突然、クラスメイトの友人が彼に向かって、
「あ、そうだそうだ、おまえに紹介するよ。
この人神山っていうんだけどさ、
なんでもドラムやってるらしいんだよ。
おまえバンドやりたいって言ってただろ?」
『は?』
おいおい、ちょっとまて、今なんて言った?
少年は、一瞬何が起きたのかわからなくなり、
その友人とイケメンの彼の顔を交互に見ながら
首を左右にプルプルと動かしました。
「ええっ?マジで!君ドラムやってんのー?」
本田ヤスアキ似の彼が少年に言いました。
少年は、湧き上がる興奮を必死に抑えながら
「き、き、君は?君は?あ、あ、あの…
が、楽器は?楽器はなにやってるの?」
少年はかなりドモリながら聞き返しました。
イケメンの彼は、
「ああ、オレ、最近ベース始めたんだよね。
そんでバンドやりたいなーって思ってたんだけど…」
き
き
き
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!! (お約束)
『おおぉぉぉー、ロックの神様ぁー、
あなたは私を見捨ててはいなかったのですねー!』
少年は、その場で飛び跳ねたい衝動を抑えながら、
「べ、ベースやってるの?いつから?」
「うーん、自分ずっとギターやってたんだけどさぁ、先輩が
ベース弾いてるのみて、かっこいいなって思って、
ちょっと前にベース買ったんだよね、まだ全然うまくないけど」
すんげぇ、すんげぇ、すんげぇ、すんげぇ…
まるで、あややの「めっちゃホリディ」のように、
少年の頭には「すんげぇ」の言葉がリピートしていました。
「君は、ドラム、いつからやってるの?」
「あ、はい。あのう、一応中2からですが…」
なぜか突然、少年は敬語で返事をしていました。
頭の中がパニックになっていたようです。
「自分ら、タメなんで、別に敬語使わなくていいよ」
と、彼に言われ、ハッとした少年は、少し落ち着きを
取り戻しながら、
「あ、あのさ、君はどんな音楽聴いてるの?」
少年はドキドキしながら彼に聞きました。
すると、その彼は・・・
「銀蝿とか…」
「は? な、なに?」
「横浜銀蝿とか・・・」
え?
い、今なんといいました?…
「ヨコハマギンバエ」とおっしゃいましたか?
その瞬間、少年はその場で硬直して固まってしまうのを
必死でこらえていました…
『なんで、横浜銀蝿なの…
たのむ、レインボー、マイケルシェンカー、
いや、ツェッペリン、ディープパープルでもいい
そう言ってくれ、たのむ、そう言ってくれぇぇー
…ていうか、おまえビジュアル全然ちがうじゃん!』
言葉にならない少年の心の叫びは、
イケメンの彼に向かって何度もそう叫んでいました。
少年のロックバンドへの道は、まだ遠い・・・
(次回へづづく…)
足取りの重さを感じながら、学校に通っていました。
教室では、すでにクラスでの友人ができてはいたものの、
彼らは楽器をやっているような様子はなく、少年のバンド
メンバー探しは振り出しにもどってしまいました。
友人もでき、クラスのみんなともうち解けて仲良くなり、
それなりに楽しい高校生活が過ぎていきました。
しかし、少年の心の中には、ポッカリと穴があいたようで
何とも言えない不足感と不完全燃焼感がありました。
「はぁー、バンドやりてぇなー。ドラムなんてさ、
一人でやっていたって何にも面白くないよ。
ドラムはバンドがあってはじめて、その存在が
生きるもんだからなぁ…」
そんなある日、校内の廊下を歩いていると、後ろから元気の
いい声で、
「おおー、神山!ちゃんと勉強がんばっとるかぁー」
と、先日の関西弁教師、戸塚(仮名)先生が現れました。
「ああ、どうも」
少年は元気なく応えました。
「おまえ、クラブ活動はどこに入ったんや?」
「いや、まだクラブには入ってないです…」
「なんや、おまえ。おまえみたいにエネルギーがありあまっとる
ヤツは、どっか運動部にでもはいればいいんや。
ワシが顧問しておる陸上部にでも来るか、どうや?
バンドみたいな不健康なもんに夢中になるんやったら、
若者らしく運動して汗をかいたらいいんや」
(くっそー、ドラムだってけっこうな運動量なんだぞー。
まったく、イメージだけで不健康とか言われても
困るんだよなぁ…)
と、少年は思いつつも、あまり波風を立てるといけないので、
「オレ、運動部に入る気はないんです。せっかくですけど…」
そう言って、その場をやり過ごしました。
その高校は、校則によって生徒は何らかのクラブに所属しなくては
いけない事になっていました。
所属クラブを決める期間は1ヶ月間あり、その間に自分の入る
クラブを決めなくてはなりませんでした。
「あーあ、なんだか窮屈なところだよなぁ、でもどうすんだよ、
なにかクラブに入らなきゃいけないなんて…
うーん、ドラムが叩けるようなクラブないのかなぁ…」
と、その時少年はふと思い出しました。
「そういえば、新入生歓迎会の時に、ブラスバンド部が演奏を
していたっけ、ドラムはあんまり上手くない先輩がやっていたな。
そうだ、ブラバンに入れば、堂々とドラムが叩けるし、放課後も
学校で練習ができるじゃんか!」
少年は、さっそくその日の放課後に、ブラスバンド部の見学に
向かいました。
何人かの見学生が来ているなか、少年はソワソワしながら
落ち着かない様子で、ブラバンの演奏を聴いていました。
その高校のブラスバンド部は出来てからの歴史も浅く、
少年から見ても全体的にあまり上手とは言えない状態でした。
ドラムをやっている先輩も、リズムキープがなかなかできず、
叩き方も撫でるような叩き方で、パワーが感じられません。
『おおっ、これはオレにもチャンスがあるかも知れないぞ』
少年は中学2年からはじめたドラムの腕にちょっとは自信が
あったので、ブラバンのドラムの先輩よりも自分の方が上手い
という確信がありました。
そこで、演奏中にもかかわらず、少年はブラバンの顧問の
先生のところに行き、
「すいません!ちょっとボクにドラムを叩かせてもらっても
いいですか?」
と、訪ねました。
すると、顧問の先生は、
「ん、なに?見学の1年生か?ドラム叩けるのか、君?」
「はい、叩けます!」
自信満々で少年は答えました。
しかし…
「うーん、今日は見学だけにしておいてくれ、新入生の楽器選別は
後々やっていくから、入部希望ならそこのノートに名前とクラスを
書いておいて!」
『なにー?』
すっかり拍子抜けした少年は、上級生に言われるまま入部希望者
ノートに記入を求められ、渡されたペンを握って、ノートに名前を
書こうとしました。
その時、突然少年の心に、ある疑問が湧いてきたのです。
『おい、本当にそれでいいのか?
おまえがやりたかったのは、ブラバンでドラムを叩くことか?
おまえはコージー・パウエルのようなロックドラマーに
なるんじゃなかったのか。
おまえはロックバンドを組むんじゃなかったのか?』
ペンを握ったまま、しばらくその場で考え込む少年…
「君、どうしたの?」
という、ブラバンの先輩の声に、少年はハッとします。
「あ、あの、いいです。オレやっぱりやめます、すいません!」
そう言うと、少年はその場を走るように立ち去りました。
「ううっ、くっそー、オレはなんて意志が弱いんだ…
自分が本当にやりたいことをやらないで、
もう少しで妥協するところだった。
そうだよ、オレが本当にやりたいのは、
ブラスバンドじゃなく、ロックバンドのドラムなんだ!」
少年は安易に流れようとした自分自身に対する怒りと、
しかしながら、どう考えてもロックバンドを組めるような
状況ではないこの厳しい現状に、だれもいない放課後
の廊下で、ひとり悔し涙を流すのでした…
自転車で高校へ通っていた少年は、春の暖かい夕暮れの
歩道で自転車を押しながら、なにやらブツブツと祈るような
言葉を唱えながら歩いていました。
『くぅぅー、神様!ロックの神様!
オレにロックバンドをやらせてください!
そして、そのバンドでステージへ上がらせて下さい!』
少年の悲痛な叫びは、周りの雑踏の中に埋もれて
通りを走る車のうるさい騒音にかき消されていきました…
その晩、少年は家に帰るなり、スティックと練習用のパット
を持ち出し、近くの公園で遅くなるまで練習をしました。
『きっと、いつかチャンスがくるさ。がんばっていれば、
きっと神様がオレにバンドをやらせてくれるさ。
それまでは腕を磨いておくんだ。
ぜったい周りのヤツには負けないほど、
ドラムを上手くなっておくんだ』
少年のひたむきな願いは、ロックの神様に通じるのでしょうか…
翌日、少年はお昼ご飯を学食で友人たちと食べた後、
しゃべりながら1年生の教室が並ぶ廊下を歩いていました。
ちょうどD組の前を通りかかった時、D組の教室から髪の長い
かなりイケメンの生徒が、こちらに近づいてきました。
「よう!」
彼が声をかけたのは、少年の隣にいるクラスメイトでした。
「今日、どうする?」
「いや、今日部活あるから、先帰っていいよ…」
どうやら、彼らは同じ中学出身の友達のようで、
帰りに一緒に帰る相談をしているようです。
『こいつ、けっこうカッコイイじゃん、
本田ヤスアキにそっくりじゃんかよー』
(本田ヤスアキ(字忘れた)を知ってる人っていないかも…
当時の金八先生シリーズの、2年B組仙八先生
という番組にシブガキ隊や三田寛子らと共演していた、
謎の美少年役の人です。
その後、原田知世主演のテレビドラマ「ねらわれた
学園」で、これまた京極少年という謎の超能力者
の役でした。ちなみに彼自身もミュージシャンだった。
ちなみにボクは原田知世ファンだった(笑) )
そんなことを思いながら、少年は隣で彼らの話を聞いていました。
すると突然、クラスメイトの友人が彼に向かって、
「あ、そうだそうだ、おまえに紹介するよ。
この人神山っていうんだけどさ、
なんでもドラムやってるらしいんだよ。
おまえバンドやりたいって言ってただろ?」
『は?』
おいおい、ちょっとまて、今なんて言った?
少年は、一瞬何が起きたのかわからなくなり、
その友人とイケメンの彼の顔を交互に見ながら
首を左右にプルプルと動かしました。
「ええっ?マジで!君ドラムやってんのー?」
本田ヤスアキ似の彼が少年に言いました。
少年は、湧き上がる興奮を必死に抑えながら
「き、き、君は?君は?あ、あ、あの…
が、楽器は?楽器はなにやってるの?」
少年はかなりドモリながら聞き返しました。
イケメンの彼は、
「ああ、オレ、最近ベース始めたんだよね。
そんでバンドやりたいなーって思ってたんだけど…」
き
き
き
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!! (お約束)
『おおぉぉぉー、ロックの神様ぁー、
あなたは私を見捨ててはいなかったのですねー!』
少年は、その場で飛び跳ねたい衝動を抑えながら、
「べ、ベースやってるの?いつから?」
「うーん、自分ずっとギターやってたんだけどさぁ、先輩が
ベース弾いてるのみて、かっこいいなって思って、
ちょっと前にベース買ったんだよね、まだ全然うまくないけど」
すんげぇ、すんげぇ、すんげぇ、すんげぇ…
まるで、あややの「めっちゃホリディ」のように、
少年の頭には「すんげぇ」の言葉がリピートしていました。
「君は、ドラム、いつからやってるの?」
「あ、はい。あのう、一応中2からですが…」
なぜか突然、少年は敬語で返事をしていました。
頭の中がパニックになっていたようです。
「自分ら、タメなんで、別に敬語使わなくていいよ」
と、彼に言われ、ハッとした少年は、少し落ち着きを
取り戻しながら、
「あ、あのさ、君はどんな音楽聴いてるの?」
少年はドキドキしながら彼に聞きました。
すると、その彼は・・・
「銀蝿とか…」
「は? な、なに?」
「横浜銀蝿とか・・・」
え?
い、今なんといいました?…
「ヨコハマギンバエ」とおっしゃいましたか?
その瞬間、少年はその場で硬直して固まってしまうのを
必死でこらえていました…
『なんで、横浜銀蝿なの…
たのむ、レインボー、マイケルシェンカー、
いや、ツェッペリン、ディープパープルでもいい
そう言ってくれ、たのむ、そう言ってくれぇぇー
…ていうか、おまえビジュアル全然ちがうじゃん!』
言葉にならない少年の心の叫びは、
イケメンの彼に向かって何度もそう叫んでいました。
少年のロックバンドへの道は、まだ遠い・・・
(次回へづづく…)
バンド男への道…4
「あーあ、オレ、これからどうなんだろー」
少年は、単純にバンドメンバー獲得のための作戦を
決行しただけだと思っていたのですが、突然の状況に
不安と戸惑いを隠せませんでした…
職員室につくと、さっきのおじさん(やっぱり先生でした)が、
迷惑そうな、かったるそうな顔をして待っていました。
「えーと、それじゃ、それ持ってこっちに来て」
と、職員室の奥にある「相談室」と書かれた部屋に
ボクに入るように言いました。
「げげ…、入学早々、相談室かよー
オレ、そんなヤバイことしたのかなぁ」
少年は、どうやら自分のやったことが、けっこう大変な
ことだったのだと、その時初めて気づきました。
相談室へ入ろうとした時、後ろの方から大きな声で、
「おおっ、こいつか?バンバンやってたヤツはー!」
と、また違った先生が少年のほうへやってきました。
「おまえ、一年か?」
「あ、はい…」
「どこのクラスや?」
「あ、B組です…」
「B組かー、あれ、担任だれやっけ?」
「青山(仮名)先生です…」
「はぁー、青山さんも大変やな、
丙午ってウワサには聞いてたけど、
こんなんが入ってきたんかー」
その先生は、威勢のいい口調で、なにやらわけの
わからないことを言っています。
後で気づいたことですが、どうやらボクの生まれた年が
60年に一回の丙午(ひのえうま)で、第2次ベビーブーム
成長期に極端に出生率が下がった年なのです。
その年の人口が低い分、生徒の「質」が落ちるだろうと
その高校の先生方は考えていたらしく、1年生の
担当教師は、選りすぐりの厳しい先生陣で占められて
いたのでした。
ああ、どうりでボクが高校入れたわけだ(笑)
相談室に入ると、先程の先生が座っていて、後から
担任の青山先生もやってきました。
その後、またあの関西弁の先生も入ってきたり、その他に
少し年配の女の先生も登場し、一気にボクの周りには
先生だらけになってしまいました。
「おいおい、なんなんだよ、この状況は…」
少年は、いまだに状況がよくわかりません。
そして、担任の青山先生が、
「おまえなー、いったい何やらかしたんだ」
と、言ってきたので、
「いや、その、ドラムの練習を…」
「ドラムだぁ?ドラムってあの太鼓のことか?」
「そうです…」
「どこでやってたんだ!」
「中庭で…」
「中庭ぁー、なんでまた?」
「はぁ…」
その時、最初にきたあの冷淡な先生が、
「いやね、中庭で太鼓叩いてうるさいのがいると
たまたま私のところに通報がはいったんですよ」
「え?通報?なにそれ…」
少年は、なにやら不思議な世界に迷い込んだような
錯覚にとらわれました。
すると青山先生は、
「はぁ、バカかおまえ。あんなところで叩いたらうるさいに
きまっとるじゃないかー」
「い、いや、昼休みだし、大丈夫かな、と思って…」
少年のかぼそい説明を押し切るように、
関西弁の先生がたたみかけます。
「おまえなぁ、ここは中学ちゃうんやで、高校生に
なったんやから、もっと自覚せなーあかんやんか」
「は、はあ…」
すると、それまで黙って聞いていた女の先生が、
「あなた、あんなところで太鼓叩いたら、他の生徒の
迷惑になるでしょう?それくらいのことわからない?」
と、少しやわらかく話してくれたので、
「あ、いや、ボクはバンドを…、えーと、高校来たら
あの、バンドをやろうと思っていたんで…」
少年の声には力がありません…
「バンド?…バンドってなんです?」
その年配の女の先生が他の先生に聞きました。
おいおい、バンドも知らないのかよ、と思った少年は、
「バンドは、あの、それぞれの楽器を使って、その…」
と、少年がこのおばさん先生に説明しようとしたその矢先!
「あー、バンドだぁ?、
そんなロクでもないことをしようとしてんのかおまえは!」
担任の青山先生がいきなり怒鳴りました。
話を聞いていた、他の先生方も一様に顔をしかめました。
今では考えられないことかも知れませんが、
「エレキをもったら不良だ!」(笑)
みたいな風習が、まだこの高校には残っていたようです。
そして、丙午組ということもあって、先生方は何か問題を
起こしそうな生徒はいないか、とピリピリしていたのです。
まあ、いわゆる初めが肝心だということだったのでしょう。
(ああ、飛んで火に入る夏の虫、とはこのことです)
ロクでもないこと…?
その先生の言葉に、少年の心は強く反応しました。
ちょっと、キレかかりながら…
「ロクでもないことじゃないですよ!!」
まだ、自制心を持たない純な少年は、バンドを貶された怒りで
担任の先生に食ってかかりました。
「なんだと、おまえ自分の状況わかってんのか!」
「バンドをやっちゃいけないんですか?」
「ばかやろう!今こうやって現に迷惑かけとるだろうが」
「なにが、迷惑なんですか!高校は昼休みに楽器の
練習もしちゃいけないんですか!
ボクは高校にバンドをやりにきたんです!
バンドを組んで、学園祭に出たいんですよ。
それで、そのメンバーをいま探しているんです」
少年は、開き直って、素直に自分がしていることの
真意を話そうとしました。
しかし…
「それが、アホたれいうとるんじゃ!高校は勉強しにくる
ところや、楽器の練習なんぞ、やらせるかーボケぇ」
と、関西弁の先生も混じり合って、しばらく少年と先生方の
口論が続きました。
ああ、この事がいずれ少年を苦境に立たせる原因となろうとは、
その時の少年は知るよしもありませんでした…
すると、しばらく静観していたあの冷淡な先生が…
「ふー、これはとんでもない勘違い坊やだな」
と、不気味に囁きました。そして続けて、
「あのね、君。この高校はバンド活動禁止なんだよ。
ちゃんと校則にも載ってるでしょう。
だから、そんなことをしても無駄だよ…
それに、学園祭には審査があってね、あんなガチャガチャ
うるさいバンドなんて、まず出ることはできないだろうね」
「え?」
「・・・・・」
しばらく絶句した少年は、
「え?…いまなんと?」
すると、あきれた顔で、その先生は、
「ここはね、バンドなんかやれるところじゃないんだよ。
学園祭でもいままでバンドなんか出たこともないんだから。
というより、先生方がみんなそんなことさせないよ」
「は、はぁ?…」
少年は、あまりのショックで、しばらく何も言えませんでした…
しばらくの沈黙のあと、
「どうしましょう?一応、この楽器は、しばらく私が
預かっておきましょうか」
と、担任の青山先生が、そんなことを言い出しました。
な、なにー!
少年は、それだけは勘弁してくれ!といわんばかりに
「いや、だめです、えー、あ、これ、あの、借り物なんです!
すいません、ちょっと、だから、だめです…」
と、かなりキョドりながら、みえみえのウソをついて楽器を
返してもらおうとしました。
すると、先程の年配の女先生が、
「まあ、もう5時限の授業も始まってますし、とりあえず
今回は初回ですし、本人もわからなかったということで
楽器の没収はしなくてもいいんじゃありませんか」
と、いってくれたので、間一髪、楽器没収は見送られました。
地獄に仏 パート2!
「そんじゃ、今回だけだぞ、今度持ってきたら即没収だからな」
とりあえず、最悪の楽器没収だけは避けられたので、
少年は少し安心し、なんとかこの場が穏便にいくように
願っていました。
「まあ、今日のところはもういいでしょう。彼も悪気は
ないようですし、あなた、今後は気をつけてね」
と、女の先生がうまくその場を取り繕ってくれ、
なんとか話は終わりました。
あの関西弁の先生が最後に、
「もうアホなことすんなよ、高校生らしくちゃんと勉強せぃー」
と、少年にいい放ちました。
「・・・・・」
相談室をあとにした少年は、楽器を抱えてトボトボと廊下を
歩きながら、先程の話を思い出していました…
「なんてこった!オレはなんていう高校に来てしまったんだぁ。
バンド禁止だとー、おまけに学園祭にも出れないだとー。
おいおい、高校にいったら、思いっきりバンドできるんじゃ
なかったのか?こんなんじゃ中学より悪いじゃないか!
そんなたいして頭のいい高校じゃないのに、なんでそんなに
厳しい校則つくってんだよー」
少年の入った高校は、バンド活動をはじめ、髪型や服装
その他の規則にとてもうるさい高校だったのです。
早くも、ロックバンド結成&コージー・パウエル計画が暗礁に
乗り上げてしまった少年は、深い絶望感に苛まれました。
「よーし、ロックバンドを組むぞ。
バンドを組むのに手っ取り早いのは、高校に行くんだ。
高校には、いろんなヤツがやってくるにちがいない!
もちろんオイラがドラムをやるのさ。
そう、コージー・パウエルのようなドラマーになるんだ!」
その念い一つで、苦手な勉強をして晴れて高校生になった
少年には、その状況はあまりにも厳しいものとなりました。
ましてや、思わぬところで前科を作ってしまった少年は
先生方の要注意ブラックリストに載ってしまったのです。
ああ、この先、失意の少年に光はあるのでしょうか…
(つづく…)
バンド男への道…3
目をつぶって、陶酔している少年の肩を、後ろから
「トン、トン」と誰かがたたきました。
「おおっ、きたのか? えぇー、もうきたのか?
早くもオレの作戦効果アリかぁー」
ほんの一瞬のうちでしたが、ボクの頭にはいろんなことが
駆け巡りました。
ギターか?(^v^)
ベースか?(^u^)
キーボードか?(´ー`)
ええー、もしかして一番難しいと思っていたボーカルかぁー?
o(^o^o)o(^o^)o(o^o^)o イエーイ ←少年の頭の中
少年は、期待と不安に胸をときめかせて目をあけ、
後ろを振り返りました。
さあ、バンドマン、いらっしゃ~~い!
(^(^(^(^(^(^^;)
その時、少年の前に立っていたのは…
(・.・;)あれ?
「ん?…だれ…このおっさん?」
少年の前には、見たことのないおじさんが立っていました。
???…(’_’、)
少年がキョトンとした目で見上げていると、
そのおじさんは、おもむろに少年にむかって、
「君、クラスと名前は?」
と、聞いてきました。
「げっ!」
少年は、そのおじさんが、きっとタダのおじさんではない
ということを、状況から察しました。
「えー、あ、あの、1年B組の神山です…」
「うーん、とりあえずそれ全部もって、
ちょっと職員室にきてくれる」
その人は、まるで氷のような冷たい表情で一言告げると、
ツカツカと先に行ってしましました。
一瞬の出来事で、その状況がいまいち理解できなかった
少年ですが、その人がおそらく「先生」であろうということは
なんとなくわかりました。
急いで、楽器をケースの中にしまい込んでいるその時…
ちょうど、教室の上の方から見ていた上級生の男子生徒が、
「うるせぇーんだよ、ばーか!」
と、少年に向かって罵声を浴びせてきました。
「ははは…、だっせぇ、怒られてやんのー」
他にいた上級生たちも、口々にいってきます。
その声に、少年はショックを受けました…
「うう…別に、オレはバンドのメンバーを
探したいだけだったんだよぉー。
くっそー、せっかくいい考えだと思ったのになぁ…」
かなりヘコんだ少年は、トボトボと楽器を持って
中庭を歩いていきました。
「やっべー、オレこれから怒られるのかなぁ、
まあ、たしかにかなりうるさかったからなぁ」
先ほどの勢いはどこへやら、一気に少年の気持ちは
不安で一杯になりました。
すると、罵声が聞こえていた隣の教室から女子生徒の声で
「おーい、きみー。がんばりなー」
という声が聞こえました。
え? と、少年が見上げると…
「なかなかうまかったよー、またきかせてねー」
と、手を振って何人かの女子生徒の集団が声をかけてくれました。
地獄に仏とはこのことです…
「おぉ、なんてやさしいんだぁー」
少年はその言葉に、少し救われた気持ちがしました。
一方では罵声、一方では応援…
少年はなんとも複雑な気持ちと、ひきつった笑顔で、ちょこっと
その人たちに頭をさげると、あの冷ややかな表情の先生が待つ
職員室へと向かっていきました。
「あーあ、オレ、これからどうなんだろー」
少年は、単純にバンドメンバー獲得のための作戦を
決行しただけだと思っていたのですが、突然の状況に
戸惑いを隠せませんでした。
果たしてこの先、少年の運命は?…
(つづく…)
「トン、トン」と誰かがたたきました。
「おおっ、きたのか? えぇー、もうきたのか?
早くもオレの作戦効果アリかぁー」
ほんの一瞬のうちでしたが、ボクの頭にはいろんなことが
駆け巡りました。
ギターか?(^v^)
ベースか?(^u^)
キーボードか?(´ー`)
ええー、もしかして一番難しいと思っていたボーカルかぁー?
o(^o^o)o(^o^)o(o^o^)o イエーイ ←少年の頭の中
少年は、期待と不安に胸をときめかせて目をあけ、
後ろを振り返りました。
さあ、バンドマン、いらっしゃ~~い!
(^(^(^(^(^(^^;)
その時、少年の前に立っていたのは…
(・.・;)あれ?
「ん?…だれ…このおっさん?」
少年の前には、見たことのないおじさんが立っていました。
???…(’_’、)
少年がキョトンとした目で見上げていると、
そのおじさんは、おもむろに少年にむかって、
「君、クラスと名前は?」
と、聞いてきました。
「げっ!」
少年は、そのおじさんが、きっとタダのおじさんではない
ということを、状況から察しました。
「えー、あ、あの、1年B組の神山です…」
「うーん、とりあえずそれ全部もって、
ちょっと職員室にきてくれる」
その人は、まるで氷のような冷たい表情で一言告げると、
ツカツカと先に行ってしましました。
一瞬の出来事で、その状況がいまいち理解できなかった
少年ですが、その人がおそらく「先生」であろうということは
なんとなくわかりました。
急いで、楽器をケースの中にしまい込んでいるその時…
ちょうど、教室の上の方から見ていた上級生の男子生徒が、
「うるせぇーんだよ、ばーか!」
と、少年に向かって罵声を浴びせてきました。
「ははは…、だっせぇ、怒られてやんのー」
他にいた上級生たちも、口々にいってきます。
その声に、少年はショックを受けました…
「うう…別に、オレはバンドのメンバーを
探したいだけだったんだよぉー。
くっそー、せっかくいい考えだと思ったのになぁ…」
かなりヘコんだ少年は、トボトボと楽器を持って
中庭を歩いていきました。
「やっべー、オレこれから怒られるのかなぁ、
まあ、たしかにかなりうるさかったからなぁ」
先ほどの勢いはどこへやら、一気に少年の気持ちは
不安で一杯になりました。
すると、罵声が聞こえていた隣の教室から女子生徒の声で
「おーい、きみー。がんばりなー」
という声が聞こえました。
え? と、少年が見上げると…
「なかなかうまかったよー、またきかせてねー」
と、手を振って何人かの女子生徒の集団が声をかけてくれました。
地獄に仏とはこのことです…
「おぉ、なんてやさしいんだぁー」
少年はその言葉に、少し救われた気持ちがしました。
一方では罵声、一方では応援…
少年はなんとも複雑な気持ちと、ひきつった笑顔で、ちょこっと
その人たちに頭をさげると、あの冷ややかな表情の先生が待つ
職員室へと向かっていきました。
「あーあ、オレ、これからどうなんだろー」
少年は、単純にバンドメンバー獲得のための作戦を
決行しただけだと思っていたのですが、突然の状況に
戸惑いを隠せませんでした。
果たしてこの先、少年の運命は?…
(つづく…)
バンド男への道…2
…前回からの続きです。
ようし、ほんなら明日はこの戦法で、必ずメンバーゲットしたるでぇ!
グズグズしているヒマはないんや、わいは高校にバンドやりに
いっとんねんで!
…と、なぜか関西弁の口調に変わった少年は、明日への決意と
情熱の激しさで、その晩はよく眠れませんでした。
さて、その翌日、少年の取った行動とは…
「やっぱ、あれだよ。オレがドラムやってるってことを、
みんなに知ってもらわないと始まらないよな。
同じクラスにはいないのかも知れないから、
他のクラスのヤツに知ってもらわないといけないもんな。」
一応、初日のクラスの自己紹介の時には、自分がドラムを
やっているということ、バンドを組みたいと思っていることを
クラスメイトには話してはいたのですが、これといって何も
反応がなかったのです。
その日、少年は朝早くからなにやら準備をし始めます。
「ちょっと、大がかりだけど、まあ、いいか…」
少年は、なんと学校にスネアドラムとスネアスタンドを持ち込む
ことにしたのです。
(注:スネアドラムとは太鼓の反対側にジャラジャラした
スナッピーと呼ばれる弦が張ってある、ドラムの中心的な
太鼓です、ドン、パン、ドン、パンの”パン”の方です)
「へっへっへ…我ながらいいアイデアだよ。これ叩きゃあさ、
みんなイヤでも注目するだろうしね。
名付けて、”バンドマンいらっしゃ~い”作戦!」
少年は、どうやら休み時間を利用して、自分をアピールするため
にスネアドラムを叩くデモンストレーションをする気のようです。
(ああ、今の私なら絶対止めますよー、若いって怖いっすねー)
ちょっと、大がかりな荷物をもって登校した少年は、周りの
人から特異な目で見られながらも、なんとか楽器を運ぶことに
成功しました。
楽器が大き過ぎて、ロッカーに入らないため、しかたなく教室の
掃除用具入れの中にしまっておくことにしました。
「おぉー、やっぱイザとなると緊張するよなぁ…」
少年は、今さらながら、自分の小心者さに気づき、
そのことが気になって、授業など当然うわの空です。
そして、いよいよ最初の休み時間がやってきました。
ところが、少年はここに来ていきなり弱気になります。
「そ、そうじゃ、やっぱ昼休みのほうがいいっしょ、10分じゃ
短かすぎるけん、みどもは育ちがよろしいきにのぉ、したっけ
そういうことで…」
少年は、緊張のあまり、北海道弁と九州弁と土佐弁が
混じり合ったわけのわからない言い訳をして、初めの休み
時間を素通りしました。
「うわっ、ダサっ!」
少年は、我ながら自分の勇気のなさに少し自己嫌悪に
陥りました。
「ううっ、やばい、なんか胃が痛くなってきた…」
そんなら、始めからやるなよーっと自分ツッコミをいれながらも、
時は、刻一刻と過ぎ去っていきます。
端から見たら、その時の少年の態度はかなりキョドっていたに
違いありません。
そして、いよいよ運命の昼休みがやってきました。
授業が終わって、しばらく机にうつ伏せになっていた少年は
迫り来る恐怖と戦いながら、自分にこう言い聞かせました。
「オレは、ロックバンドを組むんだ!
コージー・パウエルのようなドラマーになるんだ!」
うつ伏せになっていた少年は、意を決したようにスッと顔を
上げました。
「よーし、作戦決行だ!」
そして、そのままお昼も食べずに、掃除用具入れの中の楽器を
取り出すと、クラスのみんなの「なんだコイツ?」という視線を
横目に、スティックケースとスネアドラムを抱えて、教室を
出て行きました。
さすがに廊下で叩くのは、先生に一発で止められそうだったので、
いったん校庭に出て、ちょうど1年生のクラスが並んでいる
教室の目の前の中庭に回り込み、その場所にスネアドラムを
セットしました。
「よーし、ここまできたら、やってやる!
クールに決めないと、逆にめちゃめちゃカッコ悪いからな。」
すぅ~っと息を吸い込んで、まず一打目を”ダン”と叩きます。
そこからは、まるで堰を切ったように、少年は夢中になって
ドラムを叩き始めました。
時折ドラムロールを混ぜながら、その時の自分の精一杯の
テクニックを披露し始めました。
恥ずかしさもあったので、しばらくうつむき加減で必死に
叩いていく少年…
ようやく、手も温まってきて、かなりリズムに乗れてきました。
そこで、恐る恐る、1年生の教室のある3階付近に目を
やりました。
たのむ、バンドマン!だれか見ていてくれ!
その頃、いきなり中庭から聞こえてきたうるさい音に気づいた
人々が、教室の窓から怪訝そうな顔をしてこちらを見ています。
「げっ!2年や3年の人達まで、こっちみてるよぉー」
そりゃそうです、いくら外だとはいえかなりの音量が出ています。
昼飯時の憩いの時間をぶち壊す、ドラムの音…
「もしかして、オレって顰蹙かってる?」
勇気を持ってやり始めた少年でしたが、上級生がこわーい
顔をしてこちらを睨んでいるのを発見しました。
「げ、やっべー、1年生だけにアピールするつもりだったのに…
あの人が、こっち降りてきて、シメんぞこらぁーって言ってきたり
したらどうしよう。くう、やっぱりちょっとまずかったかなぁ…」
少年は、心の中の動揺を隠すのに精一杯でした。
「でも、ビクビクしてやってたら、それこそ超ダサイよな」
そして、少年はいったん、スダン!と決めを入れ、何事も
なかったかのように、ケースからウォークマンを取り出し、
おもむろにヘッドホンをかけると、大好きなコージー・パウエル
の「オーバー・ザ・トップ」をかけて、再びスネアドラムを
叩き始めました。
「こうなったら、ある意味逆ギレだ!
だれも文句を言えないくらい、こっちがイッテしまえばいいのさ」
少年は、ある種の開き直りともいえる心境に到達し、その後、
多くの人が「なんじゃアイツ?ばかじゃねえの?」と冷ややかな
視線を向ける中、ひたすら曲に合わせて陶酔していきました。
バカです…はっきりいって、バカです…(^_^;
でも、中途半端にしたら、もっとバカです。
やってしまったものは、もう止められません。
覚悟を決めた少年は、休み時間一杯ドラムを叩き続けました。
と…その時です。
目をつぶって、陶酔している少年の肩を、後ろから
「トン、トン」と誰かがたたきました。
「おおっ、きたのか? ええー、もうきたのか?」
少年は、期待と不安に胸をときめかせて目をあけ、
後ろを振り返りました。
その時、少年の前に立っていたのは、いったい…
(つづく…)
バンド男への道…1
(今回からバンドジェネレーションシリーズ突入です)
しかし、受験勉強をしなくてはいけない中3の少年は、
この先、いったいどうなっていくのでしょうか・・・
その時、少年はある決心をします。
「よーし、ロックバンドを組むぞ。
バンドを組むのに手っ取り早いのは、高校に行くんだ。
高校には、いろんなヤツがやってくるにちがいない!
もちろんオイラがドラムをやるのさ。
そのために練習を重ねてきた。自信はある。
そう、コージー・パウエルのようなドラマーになるんだ!」
当時、情報があまりなかった時代、少年の稚拙な頭には、
人が集まるところは「学校」だ、という単純な思考パターン
しか思い浮かばなかったのです。
「・・・あ?…え?
うげげっ!そのためには高校に入らなきゃだめじゃん!」
高校に行ってバンドをやる。
それまで勉強を全然やってこなかった少年は、それだけを
モチベーションにして、猛勉強に取り組み、なんとかその後、
めでたく地元の県立高校に入学できたのでした。
ロックバンドをやるんだ!そして学園祭の舞台に立つんだ!
そうすれば、女の子にもモテモテさっ!(そっちかよ)
それだけが目的で、高校へ進学した少年は、さっそく初日から、
同じクラスや他のクラスで、楽器ができる人材を捜し始めます。
とりあえずギター、ギターだよ。これがいなくちゃ話にならない。
リッチー・ブラックモアやジミー・ペイジ、マイケル・シェンカー、
エディ・ヴァンヘイレン、それにスティーブ・ルカサーのような
イカしたギターが弾けるヤツだ!(いるのかよ)
ベース?げっ、ベースって地味じゃん。だれもやってないかも。
いや、そんなことはない。中学生ならまだしも、高校生なんだ
から、バンドの本当の土台を支えるベースの渋さを知っている
ヤツが絶対いるはずだ。
それにキーボード、キーボードにはちょっとうるさいよ、オレ。
なんせシンセオタクだからね。(関係ない)
えーと、あと、ボーカル……えぇ?ボーカル?…
おいおい、ちょっとまて。外人のロック歌手なみの歌をうたえる
ヤツなんて、実際いるのかよぉ…
外人みんな声高いし、それに、高校生があんな風にシャウト
するのは、ちょっと恥ずかしいぞ…
そこまでなりきれるヤツがいるのか?
希望に胸を膨らませて、高校にやってきた少年の心には、
一抹の不安がよぎりました…
そこで、少年はまだ入学早々であるにもかかわらず、密かに
あることを始めるのです。
もし、ボーカルが見つからなかったら、最悪、自分で歌えるように
しておかないといけないよな。
でも、あんな高い声出るのか?…
そもそもドラム叩きながら歌えるのか?…
いやいや、そんなことをいっている場合じゃない。
高橋幸広だって、ドラムやりながら歌ってたじゃないか。
ナイトレンジャー(懐かしー)のボーカルもドラマーじゃん。
いや、スティングみたいにベースが歌うっていうのはどう?
それに、ドラムだってコーラスくらい出来ないとなー。
クイーンのロジャー・テイラーはめっちゃ高い声出すし。
クイーンのコピーするんなら、コーラスは絶対不可欠だ。
そうだ、もう決めたんだ、オレはロックバンドをやるんだ。
でも、自慢じゃないが、小中学生の頃は、音楽の先生に、
声は大きくていいが、その音痴を何とかしろ!といわれていた。
うーん…
よし、練習だ。
なにごとも、練習なしではうまくならない。
その日から、少年は歌の練習を始めました。
しかも、ヘヴィメタですよ、ヘヴィメタ。(笑)
少年の家は、当時マンションだったのですが、大音量のラジカセ
に合わせて部屋で歌っていると、両親は気でも狂ったのか!
といいはじめ。隣近所、というよりマンション全体に響き渡る
その歌声(シャウト)に、すっかりボクは近所の変わり者になって
しまいました。
それからです、近所の人の冷たい視線を感じるようになったのは…
そうこうしている内に、1週間くらい時が流れていきました。
でも、未だにバンドのメンバーは見つかりません…
焦りばかりが募ります…
その時、少年はあることを思いつきます。
おおっ、すっげーいいこと思いついた!
少年は、我ながら自分のアイデアに酔いしれました。
ようし、ほなら明日はこの戦法で、必ずメンバーゲットしたるでぇ!
グズグズしているヒマはないんや、わいは高校にバンドやりに
いっとんねんで!
…と、なぜか関西弁の口調に変わったボクは、明日への決意と
情熱の激しさで、その晩はよく眠れませんでした。
さて、その翌日、少年の取った行動とは…
(つづく…)
独立戦争前夜…(3)
シンセと格闘していたそんな時、ふと見ると、目の前に
従兄弟のドラムセットが置いてあるではありませんか…
その頃、バンドのドラムは、同じクラスの友達がやっていた
のですが、彼は板についてきた8ビートや、ぎこちない16
ビートを、その時、曲に合わせて練習していました。
それを見ていて、当然自分もやってみたくなりますよね…
それで、「ちょっとやらしてくれ!」という感じで、ドラムセット
に座ってみました。
おおー、なんかいい感じ…
得意の自己暗示をかけます。
「オレは高橋幸広だ…高橋幸広だ…」
まずは、形から入る!(これ、マイ基本)
YMOのドラマー、高橋幸広になりきったボクは、
見よう見まねでドラムを叩いてみました。
すると・・・
あれ?
おおっ!
なにぃー。
ええーっ。
で、できるじゃん!
なんと始めから、曲に合わせて叩けてしまったのです。
これには友達もさすがにビックリ。
「もしかして、オレって天才?」
もともと、なりきり系が上手だったボクは、たぶんその時は
顔の表情まで高橋幸広になりきっていたと思います。(笑)
しかも、いつの間にか叩きながら歌まで歌っている自分…
(まあ、YMOのドラムパターン自体はシンプルで、
テクニック的には、さほど難しくはなかったのですが)
うっ、やばいかも…マジやばい…
ドラムって、めっちゃ気持ちいい!
もちろん、後から考えればお粗末な叩き方だったのですが、
これが、ボクとドラムとの出会いとなりました。
その後、シンセそっちのけで、ドラムにのめり込んでいくボク…
それからというもの、毎日、毎日、練習をしてました。
すぐにマイスティックも手に入れて、練習、練習。
いつの間にか、友達よりもうまくなってしまい、
最後は、「もう、おまえがドラムやれよ!」といわれる始末。
それくらい、ドラムが大好きになってしまいました。
そんなこんなで、それなりに充実した日々が過ぎ去り、
ボクは中3になって、高校受験の真っ直中に突入していきます。
その頃、そんな自分に危険な誘惑が忍び寄ってきていることを、
ボクは知るよしもなかったのです。
そう、それまでYMO一辺通りだったボクに忍び寄っていたもの…
それは、「ハード・ロック」との出会い…(ああ、危険だ…)
ボクには音楽におけるメンターだった友人がいたのですが、
(彼はかなり早い時期からボクにYMOを教えてくれた)
受験戦争真っ直中の純朴な少年に、彼は、今度は、
なにやら外人のバンドをたくさん紹介してくれたのです。
「レッド・ツェッペリン」
「ディープ・パープル」
「クイーン」
「レインボー」
「TOTO」
「ヴァン・ヘイレン」
今思えば、ポイント押さえていますよねぇ。
みんな伝説のバンドばかりですもん。
ジョン・ボーナム
イアン・ペイス
ロジャー・テイラー
コージー・パウエル
ジェフ・ポーカロ…
ドラマーの名前だけでもすごい事がおわかりになるでしょう。
(すいません、ドラムの内輪ネタで…)
少し系統は違いますが「ポリス」なんかもYMOつながりで
聴き始めました。
ちょうど時代は、日本でもハードロック、ヘヴィ・メタルが
流行しはじめ、和製ヘヴィ・メタルバンドも出始めた時期。
それまで、シンセサイザーが最高!と思っていたボクですが、
ハードなディストーションでメロディアスなサウンドを奏でる
ギター、めっちゃハイトーンでシャウトするボーカル、ラウドで
重厚なドラムサウンド…特にツェッペリンのジョン・ボーナムの
ドラムは、感受性豊かな中学生には危険すぎました。
「うう、マジ、かっこいい。。。」
極めつけは、その友達に誘われて行ったコンサート…
(今考えると、かなり悪友?)
それは…「MSG(マイケルシェンカーグループ)」in武道館!
( ああ、これで世代がバレてしまう…(^_^; )
これは後に「飛翔伝説」として名盤レコードになりました。
その時、そこでドラムを叩いていたのが、知る人ぞ知る
今は亡き、カリスマドラマー、コージー・パウエル!
そういえば、伝説のドラマーって、なんで皆早死にするんだろう。
ジョン・ボーナム、ジェフ・ポーカロ、そしてコージー・パウエル…
ここに挙げただけでも3人もいる。
ボクはジェフ・ポーカロにはTOTOのライブやドラムクリニック
で何度も会っているし、たぶん、コージーが好きなドラマーは
たくさんいると思いますが、それを生で、間近で見られたのは、
今思えば本当に幸運なことだったんだと思う。
その時の興奮は、今でもありありと憶えている。
マーシャルアンプがいくつも壁のように高く積み上げられて、
まるでサーキットのレーシングカーのような轟音を立てて
マイケルのギターがうねりをあげる。
でも、決してうるさいとは思わなかった。
とてもメロディがキレイで繊細なプレイだったから。
初めて見る、重戦車のようなドラムセット、あんなところまで
手が届くのかよ!ってツッコミたくなるくらいたくさん並べられた
シンバル類、後ろにおかれたドでかい丸い物体(ドラ)
ボクシングシューズを履いたウルフカットの男が、まるで
リングにあがったボクサーのように、派手なアクションで
ドラムを叩きまくる。
特に、2つのバスドラムから叩き出されるドドドドド…と
地響きを立ててお腹にくる低音は、今まで見たことも
聴いたこともない世界でした。
さらに、チャイコフスキーの1812年に合わせてのドラムソロ、
最後には、ドドォーーンと花火が上がる!
あぁ、中学生には刺激が強すぎます。
今では、コンサートでは当たり前になったその光景も、
当時はものすごい衝撃を受けたのでした。
それを目の前で見てしまった純朴な少年…
時は思春期、感じやすい(影響されやすい)年頃…
このあと、テクノカットの少年が、長髪のウルフカットに
なっていくのは、火を見るよりも明らかでした…
しかし、受験勉強をしなくてはいけない中3の少年は、
この先いったいどうなっていくのでしょうか。
その時、少年はある決心をします。
(つづく…)
従兄弟のドラムセットが置いてあるではありませんか…
その頃、バンドのドラムは、同じクラスの友達がやっていた
のですが、彼は板についてきた8ビートや、ぎこちない16
ビートを、その時、曲に合わせて練習していました。
それを見ていて、当然自分もやってみたくなりますよね…
それで、「ちょっとやらしてくれ!」という感じで、ドラムセット
に座ってみました。
おおー、なんかいい感じ…
得意の自己暗示をかけます。
「オレは高橋幸広だ…高橋幸広だ…」
まずは、形から入る!(これ、マイ基本)
YMOのドラマー、高橋幸広になりきったボクは、
見よう見まねでドラムを叩いてみました。
すると・・・
あれ?
おおっ!
なにぃー。
ええーっ。
で、できるじゃん!
なんと始めから、曲に合わせて叩けてしまったのです。
これには友達もさすがにビックリ。
「もしかして、オレって天才?」
もともと、なりきり系が上手だったボクは、たぶんその時は
顔の表情まで高橋幸広になりきっていたと思います。(笑)
しかも、いつの間にか叩きながら歌まで歌っている自分…
(まあ、YMOのドラムパターン自体はシンプルで、
テクニック的には、さほど難しくはなかったのですが)
うっ、やばいかも…マジやばい…
ドラムって、めっちゃ気持ちいい!
もちろん、後から考えればお粗末な叩き方だったのですが、
これが、ボクとドラムとの出会いとなりました。
その後、シンセそっちのけで、ドラムにのめり込んでいくボク…
それからというもの、毎日、毎日、練習をしてました。
すぐにマイスティックも手に入れて、練習、練習。
いつの間にか、友達よりもうまくなってしまい、
最後は、「もう、おまえがドラムやれよ!」といわれる始末。
それくらい、ドラムが大好きになってしまいました。
そんなこんなで、それなりに充実した日々が過ぎ去り、
ボクは中3になって、高校受験の真っ直中に突入していきます。
その頃、そんな自分に危険な誘惑が忍び寄ってきていることを、
ボクは知るよしもなかったのです。
そう、それまでYMO一辺通りだったボクに忍び寄っていたもの…
それは、「ハード・ロック」との出会い…(ああ、危険だ…)
ボクには音楽におけるメンターだった友人がいたのですが、
(彼はかなり早い時期からボクにYMOを教えてくれた)
受験戦争真っ直中の純朴な少年に、彼は、今度は、
なにやら外人のバンドをたくさん紹介してくれたのです。
「レッド・ツェッペリン」
「ディープ・パープル」
「クイーン」
「レインボー」
「TOTO」
「ヴァン・ヘイレン」
今思えば、ポイント押さえていますよねぇ。
みんな伝説のバンドばかりですもん。
ジョン・ボーナム
イアン・ペイス
ロジャー・テイラー
コージー・パウエル
ジェフ・ポーカロ…
ドラマーの名前だけでもすごい事がおわかりになるでしょう。
(すいません、ドラムの内輪ネタで…)
少し系統は違いますが「ポリス」なんかもYMOつながりで
聴き始めました。
ちょうど時代は、日本でもハードロック、ヘヴィ・メタルが
流行しはじめ、和製ヘヴィ・メタルバンドも出始めた時期。
それまで、シンセサイザーが最高!と思っていたボクですが、
ハードなディストーションでメロディアスなサウンドを奏でる
ギター、めっちゃハイトーンでシャウトするボーカル、ラウドで
重厚なドラムサウンド…特にツェッペリンのジョン・ボーナムの
ドラムは、感受性豊かな中学生には危険すぎました。
「うう、マジ、かっこいい。。。」
極めつけは、その友達に誘われて行ったコンサート…
(今考えると、かなり悪友?)
それは…「MSG(マイケルシェンカーグループ)」in武道館!
( ああ、これで世代がバレてしまう…(^_^; )
これは後に「飛翔伝説」として名盤レコードになりました。
その時、そこでドラムを叩いていたのが、知る人ぞ知る
今は亡き、カリスマドラマー、コージー・パウエル!
そういえば、伝説のドラマーって、なんで皆早死にするんだろう。
ジョン・ボーナム、ジェフ・ポーカロ、そしてコージー・パウエル…
ここに挙げただけでも3人もいる。
ボクはジェフ・ポーカロにはTOTOのライブやドラムクリニック
で何度も会っているし、たぶん、コージーが好きなドラマーは
たくさんいると思いますが、それを生で、間近で見られたのは、
今思えば本当に幸運なことだったんだと思う。
その時の興奮は、今でもありありと憶えている。
マーシャルアンプがいくつも壁のように高く積み上げられて、
まるでサーキットのレーシングカーのような轟音を立てて
マイケルのギターがうねりをあげる。
でも、決してうるさいとは思わなかった。
とてもメロディがキレイで繊細なプレイだったから。
初めて見る、重戦車のようなドラムセット、あんなところまで
手が届くのかよ!ってツッコミたくなるくらいたくさん並べられた
シンバル類、後ろにおかれたドでかい丸い物体(ドラ)
ボクシングシューズを履いたウルフカットの男が、まるで
リングにあがったボクサーのように、派手なアクションで
ドラムを叩きまくる。
特に、2つのバスドラムから叩き出されるドドドドド…と
地響きを立ててお腹にくる低音は、今まで見たことも
聴いたこともない世界でした。
さらに、チャイコフスキーの1812年に合わせてのドラムソロ、
最後には、ドドォーーンと花火が上がる!
あぁ、中学生には刺激が強すぎます。
今では、コンサートでは当たり前になったその光景も、
当時はものすごい衝撃を受けたのでした。
それを目の前で見てしまった純朴な少年…
時は思春期、感じやすい(影響されやすい)年頃…
このあと、テクノカットの少年が、長髪のウルフカットに
なっていくのは、火を見るよりも明らかでした…
しかし、受験勉強をしなくてはいけない中3の少年は、
この先いったいどうなっていくのでしょうか。
その時、少年はある決心をします。
(つづく…)
独立戦争前夜…(2)
ボクは中学生の時にバンドを組んで以来、けっこう長いこと
音楽をやってきたんです。
一応、これでもプロのドラマーだったんですよぉ。
先日もお話しましたが、ボクの年代はちょうど70~80年代を
小、中、高校生として過ごした世代なので、中学生の時に
初めて冨田勲さんやYMOやクラフトワークを聴いて以来、
その当時としてはめちゃくちゃ高価で、大きくて、ゴッツかった
シンセサイザーなるものに、勉強そっちのけで夢中になって
しまったのです。
冨田さんやYMOのライブの写真に写っていた、壁のように
黒くて大きな物体に、コード線がまるでミミズのように這い回っ
ているその姿に、ボクは、なんだか無性にドキドキしたのです。
そんな中、当時中学生だったボクには、高価なシンセサイザー
を買うのはもちろん至難の業でした。でも、どうしてもシンセを
いじってみたくてしょうがない!そこで、学校が休みの日には、
ほぼ毎週秋葉原やお茶の水に行って、シンセが置いてある電気
店や楽器店をハジゴしながら何時間もいじくりまくっていました。
ボクは今でいう、アキバ電脳系のハシリだったのです(笑)
今でも、シーケンシャルサーキッツ社のプロフィット5や
ムーグ社のミニムーグなどは、プレミアが付くほどの伝説的
シンセですよね。(あの味、知ってる人はわかりますよね!)
プロフィット5などは、当時でも1,700,000円もしました。
中学生に買えるわけがありません…(涙)
っていうか、車買えちゃいますよ!
その後、なんとか小遣いを一年間貯めて、足らない分を正月の
お年玉と親に補填してもらい、その当時一番値段の安かった
KORG社のMS-10というガンダムのモビルスーツのような
名前の、ほんとに基本的な機能のみしか付いていないシンセ
サイザーを手に入れることに成功しました。(^_^)v
正月休み明けの秋葉原に買いに行って、そのまま抱えて
帰ってきた時は、何ともいえないくらいうれしかったなぁ…
↓そのKORG社のMS-10です。
ガンダムオタクだったボクはこのシンセに
「カミヤマ専用ゲルググ」という名前を付けていました(笑)
(モノフォニック・シンセといって、単音でしか音が出ない
ので、和音が弾けなかったのです… (涙) )
でも当時は、ボクの周りでは誰一人シンセを持っている
人はいなかったので、なんだかちょっと自慢げでした。
もちろん、YMOバンドを結成したのはいうまでもありません。
そしてもちろん、テクノカットにしたのもいうまでもありません。
(わかる人にはわかりますよね)
…しかしその後で、重大な事実に気がつきました…
なんとボクは、鍵盤楽器がほとんどできませんでした(爆)
それでも、なんとか猛特訓をして簡単なコードとメロディライン
くらいは弾けるようになったのですが、いかんせんピアノもエレク
トーンもやったことがなかったボクには限界がありました。
でも、そんな状態でも、物珍しさから学校の文化祭や謝恩会
などのイベントにはいつも参加させてもらいました。
今思うと、チョー恥ずかしいって感じですけどね。
演劇の時のように、舞台に出て、人前で演奏(しかもヘタクソ)
する事は、本当に楽しい経験でした。
舞台に立って誰かに見てもらうって、なんて気持ちいいんだろう。
そんな舞台の興奮が、しだいにクセになっていきました。
幸い、ボクの家には父親が使用していた資材置き場の倉庫が
あったので、その内部に簡単なプレハブ状の部屋を一つ作って
もらい、そこでバンドの練習をすることができたのです。
今思えば本当に恵まれた環境ですよね。
そこに、従兄弟から借りたドラム(パールのロックンローラー)を
セットして、親戚からもらった古いエレクトーンの上にシンセを
置き、自分の家から持ってきたオーディオ用のアンプと30W
しか出力がないスピーカーをセットして、ちょっとしたスタジオっ
ぽい雰囲気を作り出して悦に入っていました。
でも、ついつい大音量でシンセを鳴らしてしまい、
30Wのスピーカーを何度跳ばしてしまったことか…
シンセと格闘していたそんな時、ふと見ると、目の前に
従兄弟のドラムセットが置いてあるではありませんか…
バンドのメンバーには、クラスの友達がドラムとして一緒に
やっていたのですが、それを見ていて、当然自分もやって
みたくなりますよね。
それで、「ちょっとやってみっか!」という感じで、ドラムセット
に座り、見よう見まねで叩いてみました。
すると・・・
(次回につづく…)
独立戦争前夜…(1)
小学生の頃から、ちょっと変わった子供だったと思うんです。
自分はきっと、どこか宇宙の果ての星からやってきたんだ。
なにかのきっかけで、この地球に生まれてしまったんだ…
そんなことを真剣に考えていた子供でした。
なにをするにものんびりしていて、せっかちな母親にはいつも
「はやくしなさい!」って怒られていたような気がします。
それでもあいかわらずマイペース。
気がつけば、いつも想像の世界、空想の世界に遊んでいました。
ハタから見れば、ボーっとしていて、なにを考えているか
わからない子供だったと思います。
これといった才能もなく、なにをやっても長続きしない。
それでいて、
今の自分の姿は、実は仮の姿で、本当はものすごい力を
持っているんだけど、それはある事情で封印されているんだ。
などと、わけのわからないことを思っていました。(笑)
自分の想像する世界と、
現実の世界があまりにギャップがあって、
そんな自分がイヤになることもありました。
勉強もそこそこ、
ただ毎日、友達と日が暮れるまで遊んでいました。
そんな小学生でした。
中学に入った年の夏、担任の先生にいわれた一言が
少年の心に変化をもたらしました。
「おい、神山、おまえ、クラスの代表で演劇に出てみるか?」
「え?演劇…ですか?」
「そうだ、オレが見たところ、おまえには才能があると思うぞ」
それまで、学校の先生に才能があると言われたことなんて
一度もありませんでした。
すごく嬉しかったけど、やはり自信がなかったのです。
『いや、やっぱり、ボク無理ですよ…』
少年が先生に言おうとした瞬間、
「じゃあ、オレが推薦しておくからな、がんばってやってみろ」
と、先に言われてしまい、そのまま頷くしかありませんでした。
少年の名前は「神山 惺(かみやま さとる)」といいます。
その後、クラスの代表で演劇に参加しました。
劇の題名は「ソクラテス」
少年の役どころはアテネの街の「青年」でした。
街頭でソクラテスにばったりと会い、ソクラテスの質問に
答えていくと、どうしても答えられない質問に突き当たる。
そして「では、それを知るために私についてきなさい」
と言われ、ものすごく感動してそのまま弟子になったという
青年の役でした。
役名は「クセノフォン」といいました。
1ヶ月以上かけて演劇の稽古をしている時は、自分のセリフ
を憶えるのに必死でソクラテスの偉大さが今ひとつよくわかり
ませんでした。
それでも、舞台の上にあがって、観客の前で演技をするという
初めての体験は、少年にとってかなりインパクトのある出来事
でした。
本番前ものすごく緊張して、できればそこから逃げだしたかった
というのが正直なところ…
しかし、いざ本番舞台に上がると、自分は本当に
「アテネの街の青年」になりきっていました。
最後、ソクラテスが毒杯をあおって死刑になるシーンでは、本当に
自分の師が死んでしまったと思い、とめどなく涙が出てきました。
その自分を、もう1人の自分が見て驚いているのです。
『なんなんだ、この感覚…』
あの舞台上の異様なテンションの高さ、高揚感は、その後少年の
心を掴んで放しませんでした。
結局、中学の3年間、少年は演劇の舞台に立ち続けます。
そしてクラスでは、中心的に演劇の脚本、構成、演出、出演まで
をこなし、文化祭、発表会では必ず登場する名物人物となって
いました。
そんな中、少年が中学2年になった時、ある運命的な出会いを
するのです。
冨田勲、YMO、クラフトワークなどのテクノミュージックとの
出会いです。
それは同時に「シンセサイザー」との出会いでもありました。
冨田勲氏のアルバム「惑星」を聴いた時は本当に衝撃的でした。
そして、そこに写っていたシンセサイザーの写真…
当時は、まるで大物家具のような、天井まで届くくらいの機材が
ドーン、ドーンと何台も置いてあって、そこに無数のコード類が
ミミズのように這い回っている。
そんな機材をバックに、冨田さんがなにやら哲学者のように
考え込む姿の写真が、少年にはとても魅力的に見えたのです。
そして、そこから奏でられる聴いたこともないような不思議な音…
でも、それはなぜか自分にとってはとても懐かしい音…
ちょうどYMOなどが出てきて、テクノブームが起き始めた時期
だったので、子供心ながら、
「なにか新しい時代が始まったんだ!」
という気がして、とてもワクワクしたのを憶えています。
その大物家具のような機材を使って出していた音は、今や手の
ひらにのるくらいの小さなICチップひとつですべて出来るように
なってしまいました。なんとも、すごい時代になったものです。
しかし、あらゆるものがデジタル化されていく現代にあって、
小さなツマミを一つ一つ動かして、厳密には2度と同じ音を
作れなかった、当時のアナログシンセの音が、今聴くと逆に
新鮮な感じを受けます。
時は70年代後半から80年代
ちょうど、テレビではあの「機動戦士ガンダム」が放映された頃です。
伝説のファーストガンダムは放送当初はあまり人気がなく、予定より
も早めに終わってしまったようです。
ボクも、再放送からハマった口ですので、本放送はあまり憶えて
いませんが、やはりこれも夢中になりましたね。
それまでのアニメの主人公とは違い、なんとも繊細で頼りない
メカオタク少年が成長していくそのストーリーに、ちょうど年齢も
同じくらいだった少年は、自分を重ね合わせていたのでしょう。
小学生からは一変して、中学生の時はいろんなことに夢中になりました。
部活動ではサッカー部に入りましたが、サッカーの才能はイマイチ
だったと思います。
「演劇」「シンセサイザー」「ガンダム」「インベーダーゲーム」
これが、少年の中学時代の象徴だったと思います。
さて、そんな少年が次に夢中になったこと…
それが「バンド」だったのです。
(つづく)