父が器用だったという印象はないが、

思い出されるのは、

暗い書斎に胡坐をかいて、

手元の明かりの下で、

肥後守で鉛筆を削っていた姿。

 

でも、よくよく考えれば、

自転車のパンクを直してくれたり、

兄のおさがりの自転車を

私好みの水色に塗ってくれたり、

本棚を作ってくれたり

したものだった。

 

ラッキョウの皮をむいたり、

リンゴを丸ごときれいに剥いたり、

桃の皮をプルンと剥いたり

そんな手だった。

 

今日、注文していた桃が届いて、

そんなことを思い出していた。

 

アルツハイマーと診断されてから、

13年ほどたったかと思う。

私が誰だかも分からなくなってしまったけれど、

父の手は、変わらない。

 

そんな父に桃を持っていく。