四谷の紀尾井ホールで、一中節を鑑賞しました。

一中節は、京都で生まれた三味線音楽で、常磐津(ときわず)などの浄瑠璃のルーツです。

創始者は京都の明福寺の恵俊僧侶。彼は僧侶であると共に芸達者で、都一中と名乗っていたそうです。

彼を慕った弟子の中に、豊後節の宮古路豊後掾(みやこじぶんこのじょう)がいます。

初めて耳にする一中節は、温雅で情緒的、実に優しいものでした。

今回出演した都了中さんの気品のある穏やかでしっとりとした歌声が、心に染み込んでくるようでした。

各演目の前の解説も分かりやすく、何よりもお話が上手なのに感心しました。

一中節の創始恵俊僧侶とはどんな人物か、常磐津との関係を含め、興味をそそられます。

桜の開花間近の早春の昼下がり、優雅な夢を見ているようなひとときでした。