連日、気の遠くなるような猛暑が続いている。この、絶望的な日常を払拭する創作ダンスを観てきた。

私が最も敬愛するダンサー、森山開次の「雨ニモマケズ」という創作舞だ。

会場のある渋谷駅の改札を出るのは、昨年以来のこと。すっかり様変わりした構内と、工場中の駅前の様子に、まるで初めてやって来たような錯覚に陥った。

早速会場へ。

なんと会場は、セルリアンタワー能楽堂。ここは、能狂言だけでなく、様々なジャンルの作品が公演される。私もかつて、ご一緒に仕事をした作演出家のオペレッタ公演で訪ねたことを思い出した。

一体ここで、どんな作品と出会える のだろうか。 


 

今回は宮沢賢治の詩を元に、創作されている。
「宮沢賢治の様々な作品群さらインスピレーションを得て、音楽と舞で紡いだ」という。
能舞台という異空間では、彼だけでなく、もう一人のダンサーに、シテ方の能楽師、チェリスト、太鼓、琴、横笛(能管)、さらに偶然にも私が制作したチャリティーガラ・コンサートに出演して下さったテノールの声楽家が勢揃い。
チャーミングなダンスに花を添えていた。
「それは、まるで賢治と旅をしているようだった」という。
まさに、開次ワールド全開の愉快な一時だった。

彼の舞台に触れたのは、今から十数年前のこと。すでに人気のダンサーとなっていたその舞台は、実に無邪気で素直な魅力に溢れていた。
何のわだかまりのない純心な心温まる世界にさ迷う楽しさ。
童心に帰ったような、優しい気持ちに包まれた、夢の舞台だった。
次に会えるのが、今から楽しみだ!