久しく耳にしていなかった常磐津を聴いてきた。

常磐津は江戸浄瑠璃の一つ。母がたの家は曾祖母の代から、常磐津を受け継いできた。母の叔母、さらにその娘、すなわち母の従姉が代々師匠をしてきたのだ。

私もその従姉に弟子入りして、30年常磐津の修行を続けてきた。

家元より由貴太夫というお名前もいただいた。

残念ながら、数年前師匠は他界。その後、常磐津を習うことはなかった。

が、今回、お世話いただいてきた光勢太夫さんからご招待いただいて、久しぶりに常磐津を堪能してきた。

今回は、重要無形文化財常磐津伝承事業成果発表会というもの。普段は殆どが聴けない希曲が披露された。

会場は 紀尾井ホール。

紅葉が目に染みる晴天の長閑な日曜日の午後のこと。

日常の些事におわれていた中で聴いた常磐津は、優雅で優しく、心にしっとりとした潤いを与えてくれた。ああ、常磐津をやっていてよかった、と、懐かしさに涙ぐんでしまうほどだ。




どんなに時代が変わっても、変わらぬ伝統の尊さ、それを大切に受け継ぐことの大切さを改めて思った。

家に戻って、かつて常磐津修行していた時の写真に目を通した。

師匠と過ごした日々、家元にご一緒していただいた国立劇場の会。

今、私のからだの中に、その時の体験が強く刻まれていることを、はっきりと強く感じている。

また、おさらいにいきたくなった。