クリエイティブ・リングでは、年数回文学者などの歴史ゆかりの地を廻る文学散歩をしてます。11回目は小説「人間失格」の筆者太宰治、未だに衰えぬ人気を誇る彼の足跡をたどって、所属の役者神居君と散策しました。

まず、駅前の彼の文学サロンへ。ここには晩年三鷹に暮らした彼の資料や著作物が置かれてます。かつては、山崎富栄の下宿があり、彼は仕事場にしていました。ここから二人は玉川上水へ入水したのです。

 

 
次に、玉川上水の入水場所へ。ここから5分ほど。駅からも10分足らずです。しかも、流れは小さな小川程度。こんなところで、と驚きです。(当日は大雨などで増水し流れも急になったそうです)向かいの歩道脇には、彼を忍んで、故郷の金木町の玉鹿石がひっそりと置かれてます。
 
 
近くには、やはり彼が仕事場としていた小料理屋の「千草」跡が。現在はただ表示があるのみです。
さらに先へ。住宅街の中に古い趣ある純和風数寄屋造りの建物が現れました。ここは「井心亭」という三鷹市の文化施設。生け垣に大きな百日紅の木がありますが、これは道を挟んで太宰治の住居があり、その玄関前にあったものを移植したもの。今彼の住居はなく、個人宅があるだけでした。
 
 
さらに先に進み、最後に彼が眠る禅林寺を参拝しました。聞くところによると、彼の死に際して、津軽の実家が彼を引き取らなかったそうで、同じくこの寺に葬られている、彼が尊敬していた森鴎外の墓の側に葬られたそうです。
 
 
今では当時の面影はほとんど見当たらない三鷹周辺。太宰治かここに暮らし、ここで自ら命を落としたことを思うと、何だか空しい気持ちになりました。
家に戻ってから、父の蔵書に並んでいる「人間失格」の古びた初版本を取り出して、彼を偲びました。