8月11日(日)に行われた夏の祭典、第36回ばんえいグランプリ(BG2)は、前々で運んだメムロボブサップ(牡8、坂本)が第二障害を下りてから力強く抜け出し快勝、アサギリ(1991~94年)に並ぶグランプリ四連覇を達成しました。重賞は通算18勝目。
阿部武臣騎手、坂本東一調教師ともにグランプリ4勝目で、阿部騎手は重賞通算41勝目、坂本調教師は重賞通算29勝目。
馬場水分1.9%で勝ち時計は2分08秒9。第二障害をトップで抜けたコマサンエース(牡8、金田)がしぶとく粘っての2着、インビクタ(牡8、松井)が流れ込んでの3着と続いています。

雨が降る時間帯もあった日曜ですが、金曜に入れたロータリーハローの効果なのか、思いのほか馬場は軽くなりませんでした。
6月くらいだと雨があると一気に速くなるイメージでしたが、表面の黒ずんで見える部分よりも深くソリが沈むようになったようで、このグランプリも想定以上に全体時計はかかりました。

一線級古馬なら、馬場によってはペースも上がる800キロ級ですが、前半約77秒と落ち着いて終いの速い競馬。
ただ、メムロボブサップは馬場や流れにいちいち左右されず、やはり強い。それを改めて(何度目かね笑)示す一戦となりました。テンよし中よし終いよし、とは何度か書いていますが、スッと好位を取れて(時にはハナへ行き)、障害もじつにスムーズ、そして下りても以前に増して力強く歩き、まったく隙を見せません。本当に改めて言うことでもないですけど。
今回は単勝1.2倍の支持を集め、大多数の人が勝利を予想していたでしょうが、それで普通に勝つのが、当たり前のように見えて簡単なことじゃないですよ。ばんえいでは特に。

勝った時ほど語ることがなくなる馬なので次の話へ移りますが、この後は9月15日の岩見沢記念と、10月27日の北見記念へ向かうことになるでしょう。どちらもまだ勝っていない重賞です。
今季はオッズパーク杯を制した後、ここまで重賞に使いませんでしたが、それは先を見据えてのこと。つまりはハンデ面を考慮してのことですが、別定の基準変更も重なり、次の岩見沢記念は20キロ加増、北見記念は岩見沢記念の結果次第ですが20~30キロ加増と、昨季および一昨季と比べると、ハンデを抑えられた状況で臨むことになります。となると、王者の進撃は止まらないと見るのが自然でしょう。
ただ、あえて、あえて言いますが、メムロボブサップの良さが最も活きるのは、この800キロではないでしょうか。
1000キロのばんえい記念を勝ち、帯広記念で930を曳いて二年連続2着の馬に対して言うのは適切でないと承知はしておりますが、これ以上の荷物になると、少し気を使わなくてはならない面も出てきて、常に100%とはいかないのではないか、という気がしないでもない。とはいえ、せいぜい95%や90%になる程度で、ボブサップの90%は他馬の100%を上回るほど能力が違う、とも思っているのですが。
まあ、平地競馬風に言うならば、2400mと3200mのどちらがベストか、という程度の話だと解釈ください。

コマサンエースはテンに置かれることもなく積極策。
馬場が合い、そして近走で示していたデキの良さ。障害を早めに仕掛けても上がる登坂力と、下りてのしぶとさを存分に活かす好内容でした。
厩舎としては、またしても前にボブサップがいる悔しさがあったとはいえ、やはり積んで良い馬ですし、これから荷が張り、ボブサップとの重量差がさらに広がる場面ならあるいは、との手ごたえもつかんだのではないでしょうか。同厩アオノブラックが戦線復帰した際には手替わりとなるでしょうが、利貴騎手はこの手の馬を御すのが巧みです。

インビクタは旭川記念でヒザを折った障害を一腰。
即修正できるのが、この馬の本当に素晴らしいところですし、末まで我慢して歩く実力馬らしい内容で、地力は示しました。昨季にはさらに荷が増した際への対応も見せていますので、今後も期待できるでしょう。

クリスタルコルド(4着)は障害に前付けすると、下でじっくりじっくりタメ、これが10キロ積む立場になったことに対する謙ちゃん(完全な余談だが、私はサウスポーにスイッチする場面に萌える笑)のさじ加減だったと想像しますが、障害をスムーズにまとめると良い脚を見せ、インビクタに詰め寄りました。さらに条件が厳しくなる今後へ向けても期待が膨らむ内容でした。

サクラヒメ(5着)は一線級相手ではライトな競馬にならないと厳しいというのは戦前からわかっていたこと。馬券を買っていた方がどう思ったかはわかりませんが、心路が馬と呼吸を合わせ、きちんと上げてしっかり歩き、良い競馬はしたと私は思います。
ヤマカツエース(6着)は登坂力は示しましたが、地力の差も感じる内容。下りての踏ん張りなど、まだ課題は残るものの、良い経験とはなったでしょう。


金曜に確定した出馬表を見て、6頭立てはいかにも寂しい、と正直思いました。ましてや一頭抜けた馬がいる中で、ですから。
それでも、実際のレースは、淡泊なものとはならずに力が入る内容でしたし、馬券的にもガチガチとまではいかない結果となりました。

まず馬場が良く、そして各々ができることをきちんとやったうえで力を発揮した好レースで、そこでメムロボブサップがやっぱり強かったのですけど、非常に良いグランプリだったと思います。