3月9日のメイン、第2回とかちえぞまつ特別(オープン)は、好位からすんなりと障害を越えたオーシャンウイナー(牡6、中島)が快勝。今季も荷を積む重賞は避けるなど大事に使われているが、強敵相手に十分に経験を積み、良い5歳シーズンとなった。確実に地力が上がった印象だし、来季からいよいよ勝負の時。
2着ブラックサファイア(牡7、長部)は例によって障害で止まったが、下りてからはさすがの伸び脚。今後も障害ムラな面が解消される可能性は低いが、持ち前の切れ味が活きる場面はいつでもあるだろう。
3着ギンジ(牡7、久田)も障害で一旦止まったが、下りてからはよく伸びた。今季本格化、オープン昇級後は今季前半で稼いだぶんハンデを課せられることもあったが、一応の目処は立てたし、大きく成長。障害への課題は残るが、来季はさらに上も期待したい。
4着ナカゼンガキタ(牝10、松井)は、このレースを最後に引退。通算150戦33勝、2023年1月のヒロインズカップなど、重賞3勝を挙げた。古馬になってからは脚部不安を抱えながらで、長期休養を挟むこともあったが、それで衰えることもなく、復帰すればすぐに力を示し、牝馬戦線では常に上位に居続けた。
9着だったシンエイボブ(牝10、久田)も、これが引退レース。こちらはほぼ休みなく使い続け、通算217戦34勝。2021年5月のカーネーションカップで悲願の初重賞制覇を遂げたほか、準重賞のレディースカップを2勝、特別では一線級の牡馬相手にも善戦するなど、息の長い活躍を見せた。
2017年12月のばんえいオークスで、第二障害からゴールまでびっしりと長く競り合う大接戦(ナカゼンが0秒8差で勝利)を演じた二頭が同じレースで引退となったが、それがオープンの特別で実現したということが、両馬の素晴らしさを物語っている。

10日の12R(A1-2混合)は、キョウエイリュウ(牡7、村上)が好位から抜け出して今季2勝目。障害の腰の入り良く、下りても末までしっかりとした脚取りで歩いた。長らく不振が続いていたが、四走前に2年ぶりの勝利を挙げ、ようやく復調気配。クラス改編で来季は降級してのスタートとなりそうだが、ダービー&天馬賞馬、再浮上成るか。
2着ウンカイタイショウ(牡10、久田)は障害天板近くで一旦止まったが、すぐに二の腰が入り、下りてからもよく歩いた。連勝こそ成らなかったものの、デキの良さを示した。
3着カイセドクター(牡7、坂本)は本来の能力を考えればまだ物足りないが、障害はスムーズだったし、終いもそれなりに歩いてまずまず。今季は体調が整わない時期もあり未勝利に終わったが、来季の巻き返しに期待。
アアモンドグンシン(セン9、村上)がこのレースをもって引退。通算130戦41勝、2018年12月のばんえいダービーなど、重賞は4勝。古馬になってからは重賞に手が届かなかったが、特別では幾度も強豪を破るなど、常に期待感はあったし、看板馬の一頭としてファンの人気を集めた。最後のレースも記録上は時間失格となったが、ファンが見届ける中で拍手に送られてゴールまで曳き切った。

この日のレース開始前には、そのアアモンドグンシンとともに、ルイズ(牝4、槻舘)の引退式が行われた。通算38戦10勝、2023年12月のばんえいオークスを制した。折り合い面に難はあったが能力は高く、まだまだ活躍も見込めただけに、率直に言って早い印象はあるが、同馬主で二歳年上のイオン同様に、次への道を優先したのだろう。良い産駒を出してくれるはずだ。

11日の10R(B2-6混合)で、オーノチカラ(牡6、小北)が馬装不備(内よびだし切損)のため第二障害で競走中止するという事案が発生。管理する小北栄一調教師には開催四日間賞典停止の処分が下された。
「よびだし」とは、「ガラ」と「胴引き」の間にある馬具で、簡単に言えばその片方が切れて、(今回の場合は右側が)馬とソリが繋がっていない状態になったということだが、何度も書いているように、レース中の馬や騎手に起因するものではない競走中止というのは、本来は絶対にあってはならないこと。競走中止するのは勝手だが、最初から不良品を販売(馬券)していることになってしまう。仮に、未然に100%防ぐことが難しいのだとしても、コース上に係員がいて、その状況を見ているのだから、一旦審議ランプをつけたうえで、馬装不備が明らかに原因だったと認められた場合には、当該馬の馬券返還まで為されて良いのではないか。

メインの白樺賞(A2-2)は、果敢に先行したフレイムゴールド(牡9、金田)が障害で止まりながらも、立て直してからよく歩き圧勝。最近は一腰で切れることは少なく、ここも四腰を要したが、そこは島津新も織り込み済みで、最初から障害で止まることは想定していただろう。昨季も最終開催の特別を同じような内容で勝っている。
このレースで、マツノタイガー(牡9、小北)が胸じめロープ切損のため発走直後に競走中止。一レース前に続いての馬装不備で、小北栄一調教師はさらに開催四日間賞典停止に。
「胸じめロープ」とは、「わらび型」を固定するためのものと思われるが、そこが外れると「ガラ」(と手綱)だけが残る状態で、完全に馬体とソリが離れる(先の事例も含めて、興味がある方は馬具の名称等ご自分でお調べいただきたい)。ソリは動かずに馬だけが前へ進むこととなるが、騎手は手綱を握っているので、パトロールビデオを見ればわかるように、鈴木恵介は前方へ落橇。それだけでも危ないが、パニックに陥った馬が後躯で蹴るようなことがあれば、大怪我どころか命に関わっていた恐れすらある。何事もなく済んで本当に良かったが、何事もなかったことがむしろ奇跡的と言えよう。それにしても、偶然が重なっただけかもしれないが、二レース続けて同じ厩舎の馬が馬装不備で競走中止とは。今後キングフェスタもそうなる可能性があると考えてよろしいか。

後節の15日は10Rの前あたりから雪が降り出したが、メインのスターライト特別(5歳)はシンエイアロイ(牝5、久田)が番手から抜け出し。やや人気を落としていたが、トップ級が前節のポプラ賞に編成された中で軽馬場も味方、末までしっかり伸び切った。今季は追っての味を増して大きく成長、来季も牝馬限定戦では楽しみありそう。
2着ダイヤカツヒメ(牝5、久田)は同厩馬を捕らえ切れなかったが、内容的には納得できるもの。ピークだったヒロインズカップの時に比べると、いくらか仕上げも緩かった印象もあり、今後の牝馬戦線、あるいは牡馬相手でも期待大きい。

16日に行われたクリスタル特別(4歳)は、実質B1とB2の混合だったが、障害一腰から抜けたクリスタルゴースト(牡4、長部)が特別戦初勝利。残り30mを過ぎたあたりで一旦詰まったものの、立て直すと再度後続を引き離す快勝で、B2からの3連勝。現時点では上位数頭を除くとそれほどレベルの高くない世代で、やや手薄なメンバー構成だったが、近走の好調さと成長が感じられる勝ちっぷり。来季は初の重賞挑戦も視野に入る。
2着ジェイホース(牡4、松井)は下ってから良い脚を長く使って追い上げた。3着エムタカラ(牡4、金田)も合わせ、自力勝負はまだ利かないが、追って味がある。今後の成長次第だが、もう一歩前で競馬ができるようになれば面白い存在ともなり得る。

17日はばんえい記念の他にも特別戦が五鞍。5Rの福寿草特別(3歳牝馬)は、下りから切れ味を見せたオオネガイキンヒメ(牝3、岩本)が抜け出し。逃げ馬が折り合いを欠いて障害直行で上がって行く中でも、先団後ろで一呼吸タメを利かせた島津新も落ち着いていたが、末まで伸び切った。まだスタミナ面の課題はあるが、障害が巧みで切れる脚も使える好素質馬。
2着ヤマノヒメ(牝3、今井)は切れ味の差で勝ち馬に一気に交わされたが、追われて味がありよく食い下がった。黒ユリ賞こそ障害で止まったが、秋以降の良化が著しい。来季も順調に成長すればオークスが楽しみになる。

6Rの若草特別(3歳牡馬)は、先手を取ったグランドスターダム(牡3、長部)が障害をじつにスムーズに越えて鮮やかな逃げ切り。登坂力は世代でもトップクラス、下りてからかったるい面はあるが、ここは末まで我慢したし、多少とはいえ増量もプラスに作用したか。これまで切れ負けする場面も多いが、来季以降のほうが良さを活かせる可能性。末脚強化成れば出世も見込める。

10Rの北陸復興特別(B1-1)はタンジロウ(牡5、槻舘)が力強く伸びて差し切り。雪が降る中では前半置かれるかとも思えたが、金田利貴が気を抜かせなかったし、障害を5番手で下りれば間に合う。特別の経験および実績が乏しい馬も少なくない組み合わせだったが、自身は平場より特別のほうが向くかもしれない。来季は5歳シーズンで相手強化が見込まれるが、終いが掛かる流れになった際には出番。
2着ヤマノセイウン(牡8、西)は、今季1分24秒4で勝った星もあるように軽馬場だと動きが良くなる。特別変わりでの40キロ増に即対応してみせたが、荷物が軽くなるタイミング、すなわち年度変わりでも狙いが立つタイプ。来季の初戦注目。

11Rの大平原特別(A1-1)は、積極策から障害を一腰で切ったダイリンファイター(牡8、小林長)が押し切り。周りもジリっぽい馬が多い組み合わせも良かったが、一時期は一度止まるのが常だった障害をスムーズに越えられたことでしぶとさが活きた。勝ち味に遅いタイプのように見えても今季特別4勝、障害の腰の入り自体は良いので、今後も大崩れは少ないだろう。
2着リュウセイペガサス(牡7、久田)は詰めて行って障害も早めの仕掛け、渡来心路らしい積極策から粘り込み。軽いのは好むが切れ味に欠くというもどかしいタイプだが、軽馬場の特別は最も合う条件ではあった。
3着マルホンリョウダイ(牡6、金田)は軽馬場歓迎で、障害をまとめて良い脚で伸びてきたものの及ばず。今回は上位二頭にうまく運ばれた印象だが、今季前半は苦しみながらも秋以降たしかな地力強化を示し、来季はもう一歩上も期待できよう。

オーラス蛍の光賞(A2-1)は、下りからの切れ味で抜け出したクリスタルホーク(牡5、岩本)が快勝。軽馬場も相当にプラスだっただろうが、前付けから障害下でワンテンポ待った島津新の仕掛けが見事。馬の呼吸とレースの展開、双方に合わせるのがやはり抜群に巧みで、いよいよ新時代の到来を予感させるほど今季は冴えが目立った。もちろん馬のほうも、馬体は小さいながらも夏以降の成長が著しく、まだ伸びしろは大きい。
当レースで9着だったジェイファイターの出走をもって、小林勝二調教師(65歳)が勇退。1994年4月の初出走以来、通算11701戦1131勝。ニシキタカラで制した2004年11月のばんえい菊花賞など、重賞では3勝を挙げている。
重賞3勝はいずれも四市開催時代で、近年は上級馬の輩出も少なく、リーディングも中位以下と、正直言って大きく目立つ厩舎ではなかったが、引退前日にキタミライとホッカイイチバンで勝利を挙げるなど、大阪畜産グループのメインステーブルの一つだった。1982年から騎手を務めていたとのことで、良い時代も苦しい時代も知っているだろうが、今季も過去最高の売り上げを記録したばんえい競馬、礎を築いた先達の苦労を忘れてはならない。


というわけで、いつにも増して更新が遅くなり、ずいぶん前のことだな~と思いながら書いておりました(^^;
まあ、私の備忘録的な意味合いもあるので(たまに自分で自分のブログ内検索する笑)ご容赦くださいませ。
私が今ほどばんえい競馬に詳しくなかったころ、本場でたまたま聞こえてきた常連ファン同士の会話に驚いたことがあります。
あの馬は障害がどうとか、下りて歩けるとか、軽馬場だと前に行くとか、この前は○○(騎手)がヘグったとか、またブリンカー着けてきたとか、やたらと詳しい。しかも、それを共通認識として会話している。
でも、出走表を見るとB2だったりするわけですよ笑
ずいぶん馬のことを知ってるもんだな、と感心すると同時に、なるほど、そうやって馬を覚えて予想するのが楽しいわけか、と思ったものです。
実際はすべて記憶しているわけではなくて、競馬新聞から得られる情報も消化したうえでの会話なのでしょうが、たしかにガチのばんえいファンは、他の競馬のファンよりも個々の馬について知っているような気がします。
単純に、在籍頭数が少ないうえに、それぞれの出走回数が多いという、馬券を買っているうちに自然に覚えてしまう要素はあるのですが、そういう競馬こそが面白いものだと、今になってわかりましたね笑
だから、こういった記事でも一応の形にはなるわけで。来季も書くつもりではいます(^^;
それでは次年度もお楽しみにラブラブラブラブラブラブ