3月16日(土)に行われた2歳シーズンの最高峰、第55回イレネー記念(BG1)は、道中好位で運んだライジンサン(牡3、大河原)が第二障害を一腰で越えると切れ味を見せて抜け出し快勝。ヤングチャンピオンシップ、翔雲賞に続いての重賞3連勝で、今季デビュー馬の頂点に立ちました。
鈴木恵介騎手はイレネー記念5勝目で重賞通算98勝目。大河原和雄調教師は重賞通算3勝目。
馬場水分2.0%で勝ち時計は2分00秒4。後方から追い込んだスマイルカナ(牝3、鈴木)が2着、先行から粘ったウルトラコタロウ(牡3、槻舘)が3着。

当初は上位混戦の印象があった世代ですが、ライジンサンが11月の釧路産駒特別からの5連勝、重賞も3連勝と、頭ひとつ以上抜け出した存在となりました。
最初の重賞のナナカマド賞は6番人気で6着、たしかに差のないところにはいても、正直言ってそこまで強烈なインパクトはありませんでした。それが、安定した登坂力に追っての鋭さが加わっての快進撃。その急成長ぶりには目を瞠るものがあります。
今回も前を見ながら進めて障害スムーズ、下りてスパッと抜けた後のゴール前で一旦詰まるシーンこそあったものの、そう危ない感じはしませんでしたし、完勝と言えるでしょう。
障害への不安が小さいのが何より良いですし、馬体もようやく大きくなり始めたくらいの段階。もちろん将来性十分で、他馬との成長力比べとなるこの先も大いに期待したいところです。

大河原調教師は、1985年から2017年まで騎手として活躍し、通算3373勝(引退当時歴代2位。現在でも4位)という、ものすごい数字を残していますが、特に若馬を見る目と育成には定評があり、このイレネー記念でも歴代最多となる6勝を挙げました。
そのカワが、調教師としての初重賞制覇を2歳のレースで遂げた勢いのままに世代王者を育て、来季以降の戦いに挑む、というのはオールドファンにとっても感情移入しやすい要素ではないかと思います。
服部厩舎所属時代の弟弟子にあたる恵介と、当然ながらコミュニケーションも取れており、古馬に交じって上位クラスに格付けされて使い方が難しくなる来季ですが、さらなる成長を示してくれることでしょう。

スマイルカナは後方待機から障害をまとめると、尻尾を振り振り良い脚を長く使って追い上げました。他の世代重賞以上に牝馬苦戦の傾向もあるレースですが、670キロを曳いてもよく動き、立派だと思います。
牡馬相手だと今後も前半じっくり構える形となるでしょうが、展開次第では来季もチャンスがあって良いでしょう。

ウルトラコタロウは前付けから障害スムーズ、下りてジリっぽく、勝ち馬には一気に交わされましたが、末までよく我慢して歩きました。
障害巧者ぶりとしぶとさを存分に示し、これはもう、積んで良いのは間違いないので、来季からその先まで、長く注目を要する一頭です。

フレイムファースト(4着)は障害天板が危なっかしかったものの、下りて良い脚を見せ、2番手をうかがう場面もありました。近走同様に末が甘くなり、残り10mで詰まりましたが、まだまだ細く映る馬体に実が入れば出世を期待できる素質馬です。
ショータイム(5着)は障害をまとめると、終いジワジワと伸びてはきました。切れるというよりは長く脚を使えるタイプと思えますが、よく歩きました。
アヤノダイマオー(6着)は終い歩いてはいますが、障害で後れを取りました。課題は残りますが、こちらも本格化は先で、これからの馬でしょう。
ホクセイハリアー(7着)は積極策からトップ抜け、終いアラアラになったのは現在の力でしょうが、その登坂力で見せ場は作りました。末脚強化が叶えば面白い存在となるかもしれません。
ミチシオ(8着)は好位の一角で進めたものの後半が案外で、最後は完全に失速。荷物もしくは馬場が堪えたのか、少し物足りない内容でした。
コトブキテンザン(9着)は翔雲賞同様に障害で苦戦し、後半につなげられず。良い切れ味を持っていますが、それを活かすためには障害良化が条件となります。
ホクセイポルシェ(10着)は後方からでも障害を上がれず、明らかにデキが伴っていません。期待は大きい馬だけに、休催期間を挟んでなんとか立て直してほしいところです。

と、全馬に触れてしまいましたが、ここには出られず翌日の特別に回ったグランドスターダムをはじめとする各馬、その下から上がってきそうなアアモンドテスラなど、この世代は粒が揃っており、全体レベルはなかなかに高いのではないでしょうか。
秋以降の成長がそれぞれ大きく、年度が変わって年長馬が相手になっても、さらに楽しめる世代だと思います。今後もぜひともご注目ください。