12月29日(金)に行われた3歳最高峰の第52回ばんえいダービー(BG1)は、タカラキングダム(牡3、村上)が接戦を制し、昨年10月のナナカマド賞以来となる重賞2勝目を挙げました。
金田利貴騎手はダービー初制覇で重賞通算4勝目。村上慎一調教師はダービー2勝目で重賞通算30勝目。
馬場水分1.6%で勝ち時計は1分41秒7。終い脚を伸ばしたホクセイタイヨウ(牡3、今井)が0秒5差の2着、二冠馬マルホンリョウユウ(牡3、金田)は三冠成らずの3着。

タカラキングダムはハイペース先行から押し切った昨季ナナカマド賞の内容が出色で、その後の重賞ではわずかに及びませんでしたが、馬格もあってスケールでは世代一番、とは何度も書いてきました。
ただ、今季は二戦目に第一障害で旋回するなど、昨季以上に気の悪さとムラな面が目立っていました。
6月の世代限定特別とかちダービーではマルホンリョウユウ以下を一蹴するなど、時折り能力の高さは見せながらも、大賞典と菊花賞では障害で手間取りともに着外、三冠馬誕生に期待が集まるここでは単勝19倍の5番人気にとどまったのも致し方なかったかもしれません。
それでも前走でたしかな上向きを示しての今回、熱発明けだったとも伝わる菊花賞よりデキは良いのでは、との期待はありましたが、正直なところ半信半疑でした。

利貴騎手は初の手綱でしたが、二日前に出走表を見た時、ちょっと微妙と思いましたよ。
技量云々ではなくて、三冠が懸かるマルホンリョウユウは自厩舎、というか父親の管理馬です。特に手の掛かる馬だったとも聞いております。
それを他厩舎の馬で負かしにいくのか、との思いが一瞬よぎったのですが、そこは勝負の世界、この点に関しては親子でコミュニケーションを取ったのではないかと勝手ながら想像しますが、騎手の本分を貫く意志を受けてこその村上先生の依頼だったのでしょう。

障害がポイントと見ていましたが、カカリ良くスムーズに越えると、騎手の鼓舞に応えて末まで力強い脚で歩き切り、この大一番で見事な復活。今季は苦しみましたが、これが本来の姿です。
世代最初の重賞を制した馬に対して言うのは適切ではないかもしれませんが、もともと古馬になってさらに良くなるという評価だっただけに、来季からその先へと期待が広がります。
コンスタントに能力を発揮できるかとなると、まだ成長は必要でしょうが、大器の今後に楽しみしかありません。

ホクセイタイヨウは前付けから障害下できちんとタメを利かせて4番手で下ろすと、末まで長く脚を使い、自身の良さを存分に出すほぼ完璧な内容。大賞典と菊花賞で後塵を拝したマルホンリョウユウは捕らえましたが、今回は前に違う馬が一頭いました。
これで三冠すべて2着となりましたが、戦前にも触れたように、今季の成長度では間違いなく一番。定量でも二冠馬に先着できた自信と、味わった悔しさを胸に、悲願の重賞制覇へ今後も挑みます。

夢が破れたマルホンリョウユウですが、何が悪かったということはなく、障害をじつにすんなりとトップ抜け、残り30mではやはり三冠かと思えたほど。
結果論的に言えば、もう少し馬場は重いほうが良かったかもしれませんが、それよりも上位二頭が菊花賞より動いたということだと思います。
悔しい悔しい0秒6差でしたが、もちろん来季も世代の中心を担う存在となるでしょう。

スーパーチヨコ(4着)は下りてから突き放され詰まりましたが、そこはやはり牡馬との地力の差。自身は良い競馬をしました。
キタノミネ(5着)は今回も障害巧者ぶりは示しましたが、下りてから歩けず。力をつけて再挑戦の機会をうかがいます。
アシュラダイマオー(6着)は障害でストップ。今季は冴えませんが、ここから一段階上げられるのが松井厩舎。今後の巻き返しに期待です。
キョウエイプラス(7着)は障害をなんとかまとめ、終い詰まったものの、一番悪い時期よりはだいぶ上向いています。成長力で追いつかれ追い越された感じはありますが、次はこちらが復活を示す番です。

たしかに三冠への期待は大きかったのですが、達成されなかったことで、結果としては来季以降がさらに面白くなりました。
一つ上の4歳のレベルの高さは知れ渡っていますが、3歳も全体レベルは決して低くないと思います。
まだまだ長いお付き合い、今後の成長と奮起にご期待ください。


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12月30日(土)に行われた2歳二冠目の第25回ヤングチャンピオンシップ(BG2)は、中団から下りて鋭く伸びたライジンサン(牡2、大河原)が抜け出して快勝。3連勝で重賞初制覇を遂げました。
鈴木恵介騎手は当レース6勝目で重賞通算94勝目。大河原和雄調教師は開業6年目での重賞初勝利となりました。
馬場水分1.5%で勝ち時計は1分26秒2。こちらも中団から脚を伸ばしたフレイムファースト(牡2、金田)が2着、先行して粘ったウルトラコタロウ(牡2、槻舘)が3着に続いています。

“ばんえい甲子園” を制したのは、釧路地区代表、根室市生産のライジンサンでした。
最初の重賞ナナカマド賞では6着でしたが、産駒特別からの3連勝と急成長を示しての重賞制覇。
障害巧者で終いもしぶとい好素材、といったイメージでしたが、近走は追っての鋭さを見せており、ここも下りてから一気に鮮やかに突き抜けました。逃げ馬がオーバーペース気味に行く中でもタメを利かせて切れ味を引き出した恵介もさすがでしたが、何より馬の成長力が光ります。
この結果を受けてもなお、混戦模様といった世代ですが、主役の一角として堂々と名乗りを上げました。障害も上手ですし、今後も期待できるでしょう。

初重賞となったカワさんは、騎手時代から若馬の育成には定評があっただけに、2歳戦で決めるというのも、らしいと言えばらしい。
ライジンサンの父テルシゲは今季の新種雄馬ですが、競走馬時代は服部厩舎に所属し、大河原騎手とのコンビで44勝。後年は、勝ち星を挙げられなかったとはいえ、大河原厩舎にいました。
今は本馬生産の岩瀬正実さんの牧場にいるようですが、調べてみたら産駒で現役の競走馬は2頭のみ。もう一頭のハヤブサも大河原厩舎所属です。
そういった縁が続いていく競馬というのも、私には心地良く感じられます。

フレイムファーストはタメを利かせて後半につなげ、島津新がうまく御しました。相手強化でもこの内容、まだまだこれからの馬だけに、先がさらに楽しみになりました。
ウルトラコタロウは差し馬の切れ味が活きる流れの中でもほかの先行勢は抑えましたから、決して内容は悪くありません。やはり世代上位の存在でしょう。

ミチシオ(4着)も末まで伸び、内容的にはまずまず。もう少し成長して馬体が増えれば、荷物にもある程度対応できると思います。
トカチヒロ(5着)は障害をスパッと切って見せ場を十分に作り、成長は示しました。力をつけて終いの粘りを増せば、出世も期待できるでしょう。
コトブキテンザン(6着)は産駒特別の時同様に左ブリンカー。増量でも障害スムーズ、一旦は3着争いに加わり、デキの良さは示しました。
グランドスターダム(7着)は障害こそ良かったのですが、下りてから歩けずに馬群に飲み込まれました。末脚の強化が今後の課題となります。
クリスタルイプセ(8着)は後方からでしたが、障害スムーズで終いも上々の伸び脚。今回は流れが合わないと戦前から想定されましたが、牝馬限定の黒ユリ賞はもちろんのこと、時計がかかれば牡馬相手でも面白いところはあるでしょう。かなり期待しています。
アヤノダイマオー(9着)は障害天板でモタつきましたが、前に引っ張られて難しい流れになったぶんでしょう。もう少しタメを利かせたかったと思いますが、まだ馬体もできておらずこれからの馬ですし、素質上位の評価は変わりません。
ハイペースを演出したディーホワイト(10着)は、さすがに終いアラアラになりましたが、行っても上がる登坂力は今後も大きな武器となるはずです。

と、全馬に触れてしまいましたが、まだ荷物の軽い時期とはいえ障害がうまい馬が多く、さらに今回出走が叶わなかったホクセイポルシェやスマイルカナやユーフォリアもいるわけですから、なかなかにレベルが高い世代だと思います。
今後も面白いレースが続くでしょう。期待が高まります。