ばんえい競馬ではこれまで5頭が3歳三冠に輝いているが、2005年に大賞典→菊花賞→ダービーと施行順が変わり、現在の競走体系に近くなって以降で達成したのは2019年のメムロボブサップのみ。その前のヨコハマボーイからは18年の時を要したほどの難関だが、新たな三冠馬が誕生するかが最大の焦点。全般に軽かった昨季とは違う馬場に加え、なかなかデキが整わずに苦労した馬もいる今季の3歳だが、ここが最強を決める舞台。激戦必至の年末ダービー。
(定量:730キロ)

二冠馬マルホンリョウユウは、三開催空けて菊花賞からダイレクト。まず気配注目でも、名伯楽の選択なら仕上げに狂いはなかろう。昨季は重賞に手が届かなかったが、若さが抜けてフルに能力を発揮できるようになり、大賞典も菊花賞も着差以上の完勝。道中で折り合えば障害安定、ハンデ頭だった前走から定量に変わり、他馬も積むだけに軽馬場でもそう引っ張られることはなく、三冠へ。

大賞典と菊花賞でともに2着のホクセイタイヨウは、相手が強くなっていく中でも今季[6-5-1-2]と、成長度では一番。菊花賞後の三走の内容も良く、とりわけ前めからあっさり抜けて突き放した前走出色。マルホンに20キロもらいだった菊花賞から定量へと変わる今回、字面上は逆転の計算は成り立たないが、まだ伸びる余地がありながらもさらに上昇。三冠を知る阿部が阻止を目論む。

昨季のイレネー記念馬アシュラダイマオーは今季未勝利で、馬券圏内も相手が楽だった6月の平場で2着が一度あるだけ。菊花賞こそ障害で手間取ったものの、前走はトップ付けからトップ抜けと腰の入りは悪くないのだが、荷物と馬場の違いがあるにせよ、今季は下りてから速い脚を使えていない。デキ自体は良く映り、増量も問題ないが、決め手で劣る近況だけに消耗戦待ちか。

重賞2勝の実績があるキョウエイプラスも、今季は馬券圏内すらない大不振。それでもようやく底を脱し、前走では障害一腰から一旦は突き抜けるかの切れ味を見せた。終い緩んだとはいえ、ここへ向けて一応の形は作り、馬体も戻って上昇たしか。重賞で増量となる今回は、もっと近況の良い相手が揃っているし、まだ上積みが必要だが、勝負に出られるだけの態勢を整えつつある。

昨季にナナカマド賞勝ちのあるタカラキングダムだが、今季はムラな面が強く出て、なかなか波に乗り切れない。それでも6月の世代限定特別ではマルホン以下を完封するなど、能力はやはり高い。前走の平場も4着とはいえ下りてから良い脚を使っており、ともに一息入った後だった大賞典と菊花賞よりもデキは上。障害のカカリがカギとなるが、うまく噛み合えば決して引けを取らず。

牝馬スーパーチヨコはオークスでは差し届かずの2着だったが、猛追を見せての0秒1差と展開のアヤだけ。四走前の世代限定特別でハンデをもらっていたとはいえマルホンと2秒差2着、終い座り込んでしまった菊花賞でも残り10mまでは2着態勢。710でも障害は問題ないだけに、牡馬相手の厳しい流れで末まで我慢できるかがカギ。菊花賞を見るとやはり不安は残るが、力は小差。

キタノミネは早仕掛けに出た菊花賞では障害でわずかにヒザをついたとはいえ、世代随一の登坂力の持ち主。前二走は下りてからホクセイに引き離されているように、速い脚は使えずジリっぽいが、自身我慢して歩けてはいる。さすがに重賞では展開が窮屈となるし、決め手勝負では分が悪いが、増量を最も歓迎は本馬。前走同様に先に下ろす形を作れた際には、粘り込みの望みも。

回避馬があってジェイライフが追加出走。三走前こそ障害で大きく手間取ったが、カカリ良く、下りての切れ味も水準以上で終い歩ける好素材。今季崩れたのはその三走前くらいで、デキに関しても申し分ない。一気の増量に加えて相手強化、まだ馬体の迫力でも見劣るが、実が入れば今後の出世が見込める。ここで勝ち負けまでは望めまいが、良い経験となる。

ホウエイチャンも追加出走。下りてから長く脚を使ってよく歩き、8月以降で6勝を挙げデキも上々。これまで特別すら出走経験がなく、いきなりの730では障害で止まる可能性が高いが、なんとかまとめて後半につなげたい。母は重賞2勝の良血馬で今後も楽しみだが、重賞初挑戦のここで、どこまでの姿を示せるか。