12月3日(日)に行われた3歳女王決定戦、第48回ばんえいオークス(BG1)は、道中から先頭で進めたルイズ(牝3、槻舘)が第二障害も一腰で越えると、後続の追撃をゴールまでわずかに凌いで逃げ切り勝ち。重賞初制覇を遂げました。
鈴木恵介騎手はオークス5勝目で重賞通算93勝目。槻舘重人調教師はオークスは二度目の制覇で重賞通算68勝目。
馬場水分1.7%で勝ち時計は1分54秒1。終い猛追を見せたスーパーチヨコ(牝3、長部)が0秒1差及ばずの2着、連れて追い込んだベニサクラ(牝3、槻舘)がそこから0秒6差の3着。

ルイズが先手を取るのは大方の予想通りでしたが、騎手が刻もうとして抑えても前に行きたがり、すぐに止まらず何歩か進んだところでようやく止まる、という場面が過去に何度もあったのもご存じのとおり。
それはたしかに課題なのですが、今季の最大目標であるこのG1、ここは改善を図る場ではなく、課題を抱えたうえでいかに勝つか、という点に重きを置いて臨んだことと思います。
恵介がソリに座るような格好をしながら懸命になだめて道中で三度刻み、目測で第二障害の6~7m手前。
そこからのリスタートで、「あ、ここから行くな」と見えた瞬間に、ハミを噛ませて叩いて上げていく恵介の御しっぷりにもしびれたのだけど、ルイズの抜群の登坂力があってこその勝負手でしょう。
実況の大滝アナは「直行」と表現していましたが、本馬の遠めからの仕掛けは過去にもあったこと。それにしても、さらに距離のある地点からの思い切った仕掛けでしたが、障害のすぐ手前で止め切れず中途半端なカカリになるよりも、こちらを選択したリーディングジョッキー。
すんなり一腰で障害を越え、あとは粘るだけですが、ここもよく歩きました。正直もっとジリっぽくなるイメージだったのですが、軽めの馬場が味方したにせよ、下りから思いのほか歩き、終い緩まず残した大きな大きな0秒1差。
長所を最大限に活かす手に出た騎手に対し、これまで示していた能力以上に応えたルイズ。どちらも見事なオークス制覇です。
これで一気にクラスが上がり、さすがに多少苦労するとは思いますが、稀有な登坂力の持ち主だけに、経験も力となるはずです。

スーパーチヨコはタメを利かせて障害スムーズ、下りからの切れ味で一気に差を詰めると、ゴール前で転倒した菊花賞のダメージなど感じさせずに終い急追。この着差ですから、勝ち馬が思った以上に動いたのと、わずかな勝負のアヤのぶんだけ。たまらなく悔しいでしょうが、力は十分に示しました。
ダービーも使うと思いますが、牡馬相手で40キロ増の710でも、道中の流れひとつでしょう。

ベニサクラは障害を綺麗に切ると、2着馬と併せる形でよく伸び、わずかに伸び負けしたとはいえ終いまで脚を使う好内容。ガサはなくても、障害が修正された今なら増量にも対応可能でしょうか。
ミュウ(4着)は道中で息が十分に入り、障害を一腰でまとめて歩きましたが、前も脚を使えて止まらない流れ。切れ味と地力の差が出ましたが、終い歩ける強みが活きる場面も今後あるでしょう。
タカラヴェルベーヌ(5着)は、ある程度の位置を取れましたし、障害も一腰。下りてからが現状の力差なのでしょうが、もう障害の修正は成り、自己条件から改めての期待です。
アバシリモミジ(7着)は、さすがに自己条件の平場とは勝手が違いましたが、障害はなんとか一腰でまとめ、終いも我慢して歩きました。こちらも自己条件に戻れば好勝負となります。


一週前に、二年前のオークス馬サクラヒメがドリームエイジカップを勝ちましたが、強い牝馬がいると、ばんえいは(さらに)面白くなる。
今回のメンバーから、そういった存在が現れることを期待しています。
各馬の奮戦をたたえつつ、さらなる成長を楽しみにしたいオークスでした。