(元記事)
https://gizmodo.com/historians-may-have-been-wrong-about-this-ancient-roman-1819882154 by George Dvorsky  Oct 25 2017

 

(内容)

 

 

大英博物館で最も有名な古代工芸品「ポートランドの壺(the Portland Vase)」が、歴史家や考古学者が従来推定してきたものとは違う技術で製造されていたことが最新の研究で明らかになった。


他のローマン・カメオガラスとともに、このポートランドの壺は、古代ローマ人が吹きガラス技術を用いて作ったと、何世紀もの間、古文化財専門家は言ってきた。ANU(オーストラリア国立大学)の科学者でガラス製造職人でもある Richard Whiteley が、長年言われ続けて来た学説に現在異議を申し立て、多くのカメオガラス作品は、現在「パートドヴェール」として知られる冷却プロセス技術で作られたと主張している。


この壺に愛着のある人にとってこの説はショックだっただろう。この時代のローマン・カメオガラスは、非常に貴重(現存するカメオガラスの壺や飾り額は他に15個しかない)であると同時に、極めて大きな影響力を有している。このポートランドの壺(BC30~AD50作製)は、恐らく最もよく知られたローマン・カメオガラスであり、18世紀初頭から現在に至る多くのガラス職人にインスピレーションを与えている。こうした華美なガラス作品には、壺、大きな飾り額、小さなジュエリーなども含まれる。歴史家や考古学者は、カメオガラスは吹きガラスの工程を経て作られると推定していたが、この説が違うことを示す証拠を発見したと Whiteleyは言っている。

 

「間違いを証明したい訳じゃありません。歴史的文献を訂正し、2000年以上に渡って失われていた技術を復活したいのです」と彼は主張している。

 

Image: ANU

 

ANUCTを用いてローマン・カメオガラスを調査した上で、彼はこの結論に至った。CTによって、ローマンガラス青と白の層の間に閉じ込められた気泡の形、方向、組成を初めて見ることが出来たのである。


「これを見つけた時のことを今も覚えています。私は思わず言いました。『これは凄い。表面に吹きガラスの説と矛盾する冷却工程の跡がある』と。私は何十年も自分の手でガラス作品を作ってきました。私が見つけた痕跡は私の作業で見たものと一致しないのです」


特に、彼のチームが発見したのは、プレスや旋回運動で出来る泡状の構造物。冷たい粒状ガラスを鋳型に詰め、溶けた青いガラス塊が流し込み、白い粒状ガラスを溶融しながら鋳型をプレスしたと、彼は理論づけている。

 

吹きガラスの手法では、あのサイズで平たい形の気泡はできません。特筆すべきことは気泡のサイズや平坦性よりも、青いガラスが粒状の白いガラスと混ざった部分が見つかったことです」と彼は言っている。

 

Whiteleyは、この主張を最初にしたのは自分ではないと認めている。1990年代、ドイツの芸術家 Rosemarie Lierke が同様の結論に至ったが、彼女の論文はエビデンス欠如を理由に受け入れられなかった。Whiteleyは来週、大英博物館で開かれる歴史的ガラス工芸品会議で、この新たな説をプレゼンする予定。但し、彼の論文はまだ査読のある専門誌には掲載されていないので、それが済むまでは過度に期待すべきではないだろう。


Whiteleyは、この新たな学説が注目を集めることによって、「パートドヴェール」手法を用いたポートランドの壺を再現する研究チームの資金集めができることを期待している。彼は、これできっぱりと論争に終止符が打たれることになると考えている。

 

我々は何人かの専門家に、この研究についての意見を聞いている。それを元にこの記事をアップデートする予定。

 

 

 

 

 

(Richard Whiteley)
 

 

(ポートランドの壺)

 

 

(Portland Vase)