(元記事)
http://gizmodo.com/athlete-poop-wont-improve-your-athletic-performance-1796547348  by Ryan F. Mandelbaum Jun 30 2017

 

(内容)

 

 

人間の身体は細胞だけで出来ているのではなく、無数の細菌の棲み家となっている。そうした細菌の多くが重要な役割を果たしていて、そのバランスが崩れたり、多様性が失われると病気になることが分かっている。しかし、この分野の研究はまだ始まったばかりである。少なくとも正当な理由なく他人の腸内細菌を貴方の大超に移植できるほど研究は進んでいない。

 

コネチカット州にある「Jackson Laboratory for Genomic Medicine」ローレン・ピーターセンが、アスリートの腸内細菌を研究していると、最近「The Scientist」がレポートした。その記事の中で彼女は、便移植を受けた方法や、長期に渡る病気療養後に運動競技のパフォーマンスが上昇したことについても考察していた。彼女はこの方法によって、アスリートが将来的にパフォーマンスを上げることができるかもしれないと述べていたのである。雑誌「Bicycling」では、「私は自信を持って、細菌ドーピング(うんちドーピング)の時代が来ると私は思っています」とまで言っている。

 

確かに便移植には魅力がある。抗生物質がクロストリジウム・ディフィシレに効かない時、研究者は文字通り、便移植という治療法を取るかもしれない。腸内細菌サンプルを含む健康な人の便を患者の結腸に移植し、健康的な細菌を定着させるものだ。

 

これは便移植の中で現在唯一承認されている方法である。研究者は、体内で様々な細菌が共生する状態「マイクロバイオーム(微生物叢)」を研究し、結腸炎や自閉症などとの関連性について有望な結論を導き出そうとしているのである。しかし、まだ便移植をサプリとして利用できる状態ではなく、まして運動能力向上を見込めないのは言うまでもない。

 

「多くの優秀な競輪選手はこのようなマイクロバイオームを有しています」 ピーターセンの説明と同じように、便移植の専門家である「Massachusetts General Hospital」エリザベス・ホーマン教授はGizmodoに語った。「でも、だから何だと言うのでしょう。彼らが摂取した食べ物のせいじゃないでしょうか?」 結局のところ、マイクロバイオームを形作るのは各自のライフスタイルであって、マイクロバイオームがパフォーマンスを上げる訳ではないのかもしれない。「関連性はありますが、因果関係ではありません。メタノブレウィバクテル属smithiiやプレボテラ属のような微生物がパフォーマンスを向上させるという考えは馬鹿げています」

 

ピーターセンが公表した競輪選手が高度に有する細菌というのは、私が担当するHIV陽性患者(HIVそのものではなく、同性間性交渉に関連している)、関節リュウマチ、病的肥満患者、ある種の高ファイバー食を摂取する人など、驚くほど様々な集団においても上昇が見られるのです」と、デンバーにあるコロラド大学の微生物学者であるキャサリン・ロズポーンはGizmodoに答えた。さらに彼女は、競輪選手の研究は信頼性は高いが、プレボテラ属の細菌が腸内でどんな働きをしているかあまり分かっていないのが実態だと言っている。

 

便移植後に能力が向上したとピーターセンが感じた事実は、単純にプラシーボ効果の可能性もある。


うんちドーピングが身体に害を及ぼす可能性も常に存在する。「感染因子が移植されるリスクは確実に存在します」とホーマンは言っている。例えば、サルモネラ菌は成人の腸内に数週間居続けることができる。数週間前に酷い下痢をしたことを覚えていない人が便移植することによって病原体を他人に伝染させる可能性があるのである。

 

「査読前にうんちドーピングを薦めるのは無責任です」と、イリノイ大学の栄養科学部のマイクロバイオームプロジェクト部長であるブライアン・ホワイトは言っている。「アスリートはこれを実行するのでしょうか?それから何か得られると思えばするのでしょうが、それが無責任なのです」 

 

私達の腸内細菌についてはまだ発見されていないことがあまりに多すぎる。研究者は特定の細菌が有する機能をまだ全て把握していない。


科学は他人のうんちを貴方の腸に移植するよう薦めるほど準備は出来ていないのである。

 

 

 

 

 


(アスリートの腸内細菌)

 

 

(ウィキ:便微生物移植)