東郷和彦著の「北方領土交渉秘録」という本を読んだ。

バンダナ姿の作曲家
私は、以前から、北方領土返還交渉には少なからず関心を持っていた。しばらく何の進展もない年月があって、私も半ば忘れていたのだが、今年の夏に相次いで韓国や中国との国境問題が加熱したので、「北の方はどうなってるの?」と、何か情報に触れたくなったのだ。そして、関連した本を4冊ほど買い込んだ。その一つ目がこの本だ。著者の東郷氏は外務官僚として、また外交官として、永い間ロシアとの交渉に携わって来た人だ。交渉を進めるために、ロシアの官僚や外交官などとの緊密なパイプを作り、人間関係を育て、領土問題の解決=平和条約の締結へ向けて、慎重に誠意を持って手を打ち駒を進めて来た苦労が、読んでいてひしひしと伝わってくる。ソ連崩壊ーロシアの民主化などの時代が訪れ、領土交渉にも再び大きなチャンスがやって来た。橋本+エリツィン会談によって、ことは大きく前進するかに見えた、その矢先、エリツィン氏の健康問題で大きなブレーキがかかってしまう。挙げ句の果ては、国内の官僚の他の勢力からの切り崩しに会ったり、田中眞紀子外務大臣の不用意発言などが続き、それまで営々と築き上げて来たロシアとの信頼のパイプや、領土交渉の機運が、がらがらと崩れ去ってしまう。・・・・・・・

東郷氏に会ったら思わず抱きしめたくなりそうな、誠意にあふれた「秘録」であった。

この本を扱っているところが例えばこちら