「お父さま、お言葉を返すようですが…
私も一介のサラリーマンです。今のご時世150万円を用意するのはとても大変なことです。ご理解ください。」

『せやけどな、そんなご時世にやで
ワシには残りの450万円払うてくれってお宅は言うとるんやろ?』

「左様でございます。N次郎さんと会社を守る為にも何とかお助けいただきたいと思い、心苦しくもお父さまへお願いさせていただいた次第です。」

『ん〜。そら払えん額ではないがのう〜』

「N次郎さんのお父さま、ありがとうございます!」

『いや、いや、ワシまだ払らうとは言うてないがな。』

『そもそもな、ここんとこ詐欺も多いさかい
ホンマの話なんかな、言うのはまだ疑問ですんや』

「お待ち下さい、N次郎さんに変わります」

「お父さん、ホンマの話なんや!ホンマにお金助けてもらわんと大変な事になってしまうんや!会社も辞めなあかんようになるし!」

『会社辞めなあかんゆうのは一大事やけどもな〜
ほんなら何で携帯番号が違うんや?N次郎と表示されんかったで?』

「そらお父さん、鞄失くしてしまったからや!
契約に必要なお金も財布もスマホも全部のうなってしまったんや!」

『そしたら父ちゃんがN次郎の携帯に電話したるわ』

「あかん!あの携帯は仕事にも使っとるんや。このままやと悪用されたり取引先ともトラブルになるかもわからん。せやからもう解約手続きしとるんや!何かあってからじゃ遅いんやから絶対かけたらあかんで!」

『ほうなんか…(ほんまかいや)』

トレーニングを積んだ演技力を駆使し
相手の表情や様子が見えない電話口でトラブル感を増幅させる

相手が不要な行動をしようものなら
入念に準備された返しをつかい

さも、それが大変な事態につながってしまうようにイメージさせ、勝手な行動を取れないように追い込んでいく

詐欺とは、恐ろしくて恐ろしくて
そしてとてもやるせなく悔しいものです。。