文藝春秋に掲載された、村上春樹先生のエッセイ。



祖父の系譜から父の話題へ。子供時代の印象的な思い出や、学生時代に感じたお父様との悲喜交々が綴られています。
お父様は京都大学を27歳で卒業しています。これは、戦時を挟む学生時代を送り、三度の徴兵により学業に専念できる時代ではなかったために。そして、祖父の期待に応えられず自分の夢を諦め、結婚し春樹少年が生まれています。
戦時社会と平和社会、過ごした少年時代の対称が鮮明に書かれていました。

春樹少年は3度の引っ越しをしていて、猫を捨てた頃は夙川に住んでいたそう。私は土地勘があるので、風景は違ってもおぼろげながら雰囲気がわかりました。この土地が描かれた少女漫画があります。


絵は現代風。物語の最後のシーンに、夙川河川敷が登場します。この辺りは女子大生に人気のスポット。

春樹先生のエッセイには、表題とは別の、もう一匹の猫が登場します。庭木の高枝に登り、降りられなくなった猫。この部分は他と違い、小説を描くような書き方がされていて、先生の執筆スタイルを深々と感じます。
そして、降りられなくなった猫をみて、さまざまに思いを馳せ、登ることより降りることの難しさを知ったと書いてあります。

学者を目指し諦め、家族を養うために教職に就いた父の期待値に背く成績でしかなかったことで、さして勉強の出来る子供ではなかったと思われているそうですが、これは頭がいいでしょ。お父様の血を引き継がれていると思います。
ましてや、一高に通われて、勉強が出来ない子供はありません。謙遜です。あの辺りは、優秀な子が多いから。

最後の段に、
こういう私的な文章を読みたい人がいるのだろうかと思い
こう書いてあるのを読んだ私が、今、このブログを書いています(笑)

ステキな文と過去が記載されたエッセイでした。