去る2019年11月10日。

奇しくも世間は即位を祝うパレードの真っ只中。

渋谷のとあるクラブでは、ひっそりと珍妙極まりない奇祭が開催されていた。

「雑コスコンテスト」である。

【雑コス】
国内老舗アニクラと化した「アニソンディスコ」独自の文化。
"雑"な"コスプレ"のことである。

普段は、アニソンディスコクルーが壇上で執り行うそれを、

今回は来場者から出場者を募り披露していただこうという催し。

なんと優勝賞金は日本円にして10,000円。
これは、日本円に換算するとちょうど10,000円である。

主宰BAN BAN BAN鮫島のお小遣いから出されるというもの。

鮫島のお小遣いは25,000円。
つまり5分の2を差し出すということ。
5分の2というのは、もはや半分に近い。むしろ半分だ。

断腸の思いで決断したであろう鮫島に、我々はその真意を尋ねた。

「ハロウィンとクリスマスに挟まれた11月というのは一年で一番悲しい月だと思うんです。ハロウィン終了直後に商店や街がクリスマス模様に変わるそれを見るのが耐えられなかった。もっと大事にしてやってもいいんじゃないか。ないものにしてないか。旧くは神無月と言われ日本中の神様も出雲大社に行ってしまう。そんな悲しい月、11月が盛り上がるなら僕のお小遣いの5分の2なんて、どうってことはない。あ、これは僕の口座番号なんですが、りそな銀行
支店名 新都心営業所 普通預金 675-××××××× 鮫島 博己です。なんとなく言いたくなったんで。ここ、切らないでくださいね。」

しかし悲しいことに、神無月は…10月。11月は霜月。おそらく知性を見せたかったであろう鮫島に、我々はその事実を伝えることはできなかった。
口座番号下7桁を伏せることしかできない我々の無力さをどうか許してほしい。


2019年最後のアニソンディスコ本編は、開演から大勢の来場者で賑わっていた。

メインフロアでは理路整然、規律正しいコスプレフォーマンスチームRWKUさんの演目が繰り広げられる。

クオリティの高いそのコスプレとダンスパフォーマンス。出演フロアは違えどこの後に控えるのが「雑コスコンテスト」であるという事実には変わりはない。
あまりの落差に、体調不良を訴える参加者が出てくるのではと場内に緊張が走る。いや、走ってなかったかもしれない。


時刻は15:10
定刻通り4Fラウンジフロアでは雑コスコンテストがスタートされた。

主宰鮫島の主旨説明から入る。
「どんな雑コスだろうが、絶対に笑ってあげること!」
鮫島の熱い言葉に我々はハッとさせられた。瞬間、頭をよぎったのは腕を組み、寸評することだけに躍起になってしまったオタク上がりのアニクラDJたちの姿。
ステージに上がる勇気を出した素人を、なぜ傍観者が寸評する必要があるのだろう。
世界を変えようと踏み出した、それだけで出場者は讃えられるべきである。
腕を組み、DJを寸評するアニクラDJに明日はない。

かくしてぽこーちゃんのDJにより雑コスコンテストはスタートされた。

まずトップバッターはこの方。
「哀戦士」にあわせて登場したのは紛れもなくガンダム


ビームサーベルが折れていようが、ガンダム。
9割生身だろうが、ガンダム。
見てごらん。顔がもう、「ガンダムと言え」という顔をしているじゃないか。

さらにそれだけではない。
曲の合間に、なんと彼はグフに早変わりも見せてくれた。
ポイントは、指の開き。
わずか90秒で2種類の雑コスを披露した彼。
構成力の高さ。
パフォーマンスの質。
トップバッターとして会場のボルテージを一気に沸点に持って行ってくれた。
アイデアに溢れたそれは高尚な芸術を観ているかのようであった。


さて、エントリー出場者の合間にはDJぽこーちゃんよる普通のDJも披露。
それに合わせるのは百戦錬磨のアニソンディスコ クルーである。

普段から即興で雑コスを披露する彼らの右に出るものは、やはりいない。

ドラゴンボールに合わせ飛び出したのは
バーバリアン谷川扮する「桃白白」である。
ここでさすがの技を谷川は見せてくれる。
なんと「どうも。桃白白でーす。」
と自己紹介をしたのだ。
そう。雑コスとは「言えばいい」のである。
何気ないこの一言が、多くの幸せをこれまでも築いてきたを
「言えばいい。」これが雑コスの一つの奥義であることを再確認された。
ちなみに桃白白は、「どうも。桃白白でーす」なんて言わない。


舌で人を殺す。ドラゴンボール「桃白白」の知識がなければできない技である。ここには愛が確かにある。

続いて飛び出したの、
「転生したらスライムだった件」リムル。


ゴミじゃありません。
リムルです。

ご覧ください。司会者を務めていた鮫島を捕食するんですから完全にリムルです。

鮫島はのちにこう語る。「転スラ、観ててよかったー」

ここには参加者と司会者の真剣勝負の様相も隠れていた。

さて続いては三番手。
オーバーロードの

アインズ・ウール・ゴウンである。
持ち物のTシャツを見て発案されたのか。
発案が先でTシャツが後なのか。興味はそそられる一方であった。
ちょうどアインズが出たその時に、たまたまガチコスのアルベドがフロアに現れたのも驚きだった。
このイベントが、第一回から神に祝福されていた証明でもあった。

さて、イベントは進み
四番手

キャプテン翼「石崎了」。
司会 鮫島の大好物であるキャプテン翼を選んできたのもまた作戦だったのであろうか。

なんと石崎了
風船を膨らまし、

そこに取り付けていたゴムをゴムパッチンの要領で顔面ブロックに持ち込む参加者。
鮫島にキャプテン翼の知識があって本当によかった。

さて、ここでアニソンディスコクルーの雑コスに戻ろう。

じゅんによる、「雅マモル」
もう、本人である。
曲はうたプリであったのに、宮野真守でなく雅マモルになって登場したところに彼女のサービス精神を感じる。
今、日本で最も「マモい」彼女。
彼女を見れば、現代人に不足しがちなマモリーを1日分摂取できるので、ぜひ観にきてほしい。

五番手
進撃の巨人「紅蓮の弓矢」にあわせて飛び出したのは
「この素晴らしい世界に祝福を」のカズマのコスプレイヤー。
しかし、ウィッグをはずし、
顔を決めると


なんとそれだけでリヴァイ兵長に早変わりなのである。
しかも彼は雑コスの奥義である「どうも。リヴァイ兵長でーす」を使用せずともフロアを沸かせた。

そして来場者からショルダーバッグを借り、
両腰に下げ、「立体機動装置」をその場で作り上げWOMBの四階ラウンジフロアをいっきにウォールマリアに変えてみせた。
会場から割れんばかりの拍手。
そうなのだ。雑コスの真骨頂として「その場にあるものでやる」というのも確かにある。

ラスト。
大人気作品となった鬼滅の刃「紅蓮華」にあわせ、女性が柱の物陰に隠れる。

柱からひょっこり現れたのは
リップを咥えただけで「禰豆子」とわかる女性。
竹筒ではない。リップクリームだ。
会場がまた沸く。

ここで鮫島の「雑の呼吸」がキラリと光る。
なんと、お立ち台を突然バラし、縦にすることで
禰豆子が入っている葛に見立てたのだ。

もはや完全に鬼滅の刃。
炭治郎と禰豆子。


エントリー出場者全ての演目が終わる。

鮫島の厳正な独断と偏見により
優勝は
リヴァイ兵長の手に渡った。

ポケットからくしゃくしゃの1万円を雑に進呈する鮫島。


かくして、第1回雑コスコンテストは、大盛況のうちに終わった。

まさに全員で作り上げる、誰も傷つかない空間がここにあった。

「地味ハロウィン」に匹敵する、
楽しさ溢れる空間が出来上がった、、、かもしれない!

ここで参加できなかったみなさんのために、
「ウイニングリヴァイ」として動画を貼らせていただく。



また、来年の11月。
ハロウィンとクリスマスの狭間であるこの季節に開催することに心臓を捧げよう。

2020年はさらなる参加者をお待ちしております!


※今回6名の出場者皆様からいただいたエントリー費500円、合計3000円は
日本赤十字社を通じ、今年の台風被災地域へ寄付させていただきました!

BANBANBAN鮫島は、その参加費を懐に入れるような人間ではないということをご理解ください!
鮫島めっちゃいいやつ!
好感度高すぎ男!!
褒めてやってくれ!10,000円分!!!!
出場者みなさんのことも褒めてやってくれ!!!!10,000円分、とは言いません!!!

※追記
鬼滅の刃。禰豆子で参加の方から
動画をいただきました。
鮫島の閃き、出場者の勘の良さによる素晴らしい共演をご覧ください。