道端にタクシーが一台

停っていました。


ドアが開いていて、

お客さんが乗り込むのを

待っています。


お客さんは二人。


腰の曲がった高齢女性と、

50代くらいの男性。


親子にみえます。


息子さんは、

脳梗塞でも患ったのでしょうか。


半身が麻痺しているのか、 

杖をついていて、


片方の腕は内側に曲がって拘縮し、

脚も数センチずつしか

前に出せない様子です。


沿道から乗り込もうとしているけど、

脚が思うように動かないし、

身体の向きを変えるのも四苦八苦。


その様子を、そばでお母さんが、

心配そうに佇んで見守っています。


小柄で腰が曲がった彼女には、

きっと介助は難しいのでしょう。


あの親子が後部座席に

乗り込むことができたのは、


きっと私が通り過ぎてから、

たくさんの時間が経ってからだと思う。


彼らの背景は

何ひとつ知らないけど、


夕暮れどきの沿道に浮かんだ、

親子二人の逆光のシルエットに、


勝手に

母と子の気持ちを想像して、


勝手に

せつなくなってしまった光景でした。


生きていると、

いろんなことがありますね、ほんと。