裁縫箱の中に、

3×4cmほどの小さな針山が入っています。

 

母の手作り。

私のために端切れで作ってくれたもの。

たぶん45年くらい前の作。

 

片面が目の荒いチェックの木綿生地、

裏面が赤いベロア生地の楕円形で、

周囲に5箇所、共布で小さな突起を縫い付けた、

亀を模した針山です。

 

触るとけっこう固くて、

中身がパンパンに詰まっているのですが、

 

この中身、髪の毛なのです。

母の髪の毛。

 

子供の頃、母の裁縫箱に入っていた

ピンクの正方形の針山も母の自作で、

やはり髪の毛が入っていました。

 

「髪の毛で作るといいのよ、

脂がついているから」


とかなんとか、

聞いた記憶があるような、ないような。

 

でも「髪の毛が入っている」と

知っているのだから、

聞いたのでしょうね。

 

先日、ふと亀の針山を眺めていて、

「あー、この中にお母さんの髪の毛が入ってるんだなぁ」と。

 

昔からずーーーっと当たり前にあったから、

中身を意識することもありませんでした。

 

モノへの執着が薄い私は、

生前の母からの手紙やメモなど、

形見のようなものはすべて捨ててしまい、

手元に何も残っていません。

 

母との関係が悪かったから、

いろいろな思いを断ち切るために捨てた側面もあります。

 

でも、

 

「そっか、このお母さん手作りの針山があったか。

しかもこの中にはお母さんの髪の毛が入っているんだ。

形見、ないと思ってたけど、ひとつあった」

 

と思ったのでした。