雑談を続けている態で
その実は
相手を見通す能力
発揮させ 示さねば…と
口にする単語
ひとつも漏らさず
拾う勢いで
飄々としてる
チョコ好きの男に集中して
そのくせ
まるで興味ない素振り
フェイクで演じる事数分
『…帰らないの?』
まだ
ここに居るのか?
…って事だよなぁ
と
男の質問に 上目使いで
面接後 ここで待機を言い渡された事
告げれば
何かを 察した様子で
『…じゃぁ ピアノを聞かせよう
こう見えて 得意なんだよピアノ』
いやいやいやいや…
控室で待機って 言われてるって
言ったよね?
と
返すも
『大丈夫 すぐそこのロビーだから』
誰かが呼びに来ても
すぐに分かるし
何より
この部屋に居るより
社内の様子がよく分かる
と
ひょっとして 他社のスパイか?
と 勘ぐりたくなるような
男の様子に
圧され
どうせ 何も無い部屋で
雑談するなら
何かネタになるような出来事
体験しといた方が
面白い
そう アピールしてくる
男の思考
それもそうかも
と 同調して
きょろきょろと
待合の扉の外を 見やると
大の大人が
多少の後ろめたさに
イソイソと ロビーのオブジェと化している
グランドピアノに
歩み寄る
そう
音がすれば
やってる事 バレバレなのに
まるで
見つかる訳がないとでも
タカを括った 悪戯
開始する前の様な 昂揚感と共に
鍵盤に向かった男の姿
然程 期待もせず
ピアノの横に立ち
見つめた
つづく