━─━ 線路 ━─━
人の 習慣 というやつは
窮地の時にも現れる
私の足は 図書館に向かっていた
時間を潰したり
サトコと待ち合わせをしたり
そんな馴染みの場所
…が 知り合いに出くわす確率を考えると
今は避けるべき場所かもしれない
兎に角 人の目が少ない所に
逃げ込みたかった
気にしすぎているのか
すれ違う人
誰もが 私を見ているような気がする
無意識に 襟に 手が行く
…どうしよう
ポケットの中
携帯と家の鍵 そして財布
私は 図書館への 道をそれ
人目を避ける様に
駅に向かった
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事務所直通の携帯が鳴り
夕方 交代要員が一人足りないから
来てくれないか と呼び出される
「 ブライアン 今どこ? 」
アソシエイトのモリー
彼女は常に完璧を好む
彼女との仕事は
嫌いじゃない
「 夕方って 何時に行けばいい? 」
本来なら 今日僕は休みだ
断ってもいいものの
一向に姿を見せない ショウを
待ち続けるのも やるせない
「 実は 事務所来る前に
資料取ってきて欲しいのよ 」
地図情報をメールしてもらい
チェックする
「 …じゃぁ 18時に 」
「 気を付けてね 待ってる 」
通話を終え
ショウの為に作った食事を
冷蔵庫に 詰める
…全く
他人を残し 帰る気配のない
この家の住人を思う
防犯意識の低さと
人を容易く 信用する
僕の感覚からは 有り得ない現状
…どこまで ピュアなんだ
そう…ショウは悪くない
今の状態を招いたのは 僕だ
僕から始めた事
室内を見回す
固定電話
もしかして…
登録を検索してみる
あった ショウの携帯NO
僕は迷わず
ショウに 掛けた
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