僕は一度、地獄に突き落とされている。
ピッチングという一本の細い蜘蛛の糸を、自分だけ助かりたいと、必死に登っていた。
自分だけ助かりたいと、いい思いをしたいと、それがいけなかったんだろな。
蜘蛛の糸は、ぷつりと切れた。
追い詰められて、気が狂った僕の心の中には、世界中のありとあらゆる罵詈雑言が、なだれ込んできた。
それから現在まで17,8年くらい、統合失調症と付き合ってきている。
統合失調症発症後は、何度も死にたいと思うくらい、未来に希望のない、地獄の日々だった。
年老いた母だけが、唯一、心の支えだった。
4年と9か月ほど前、白井奈津という女性が、僕の心の中に現れた。
そこから、僕の人生は変わった。
彼女は僕の、唯一の希望の光になった。
それから不思議な事がいくつもあった。
長くなるので割愛するが、彼女が僕の力の源となっていた。
まだ頼りないが、再び僕の目の前に、ピッチングという名の「蜘蛛の糸」が降りてきたようだ。
だが、ここでまた、悩ましい。
こんどは、周りも引き連れて、登らなくては。
でも、そもそも、僕自身が登れるかまだ、自信がない。
そして、周りは誰も、僕の事を信用してくれない。
引き連れなくてもいいのかな?
僕が登っていけば、自然と後からついてくるのかな?
僕は今日も、この頼りない糸を、登り続けている。